この作品はいかがでしたか?
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死んだら私は何になるのだろうか
どこへいくのだろうか
昔から不思議に思っていた
人は死ぬと、アジアでは輪廻を繰り返し、ヨーロッパでは天国へ連れていかれて
19世紀には、虚無主義と呼ばれる死んだら無になるという意見まであった
人間は、死の先に
何を求めるのだろうか
19世紀
科学者
女性
女性
科学者
科学者
科学者は悔しそうに言った
彼はどんな時でも寄り添ってくれた最愛の人を失いたくないのだ
女性
女性
女性
そう言うと、女性は苦しそうに咳をした
科学者
科学者
科学者
女性
科学者
女性
女性はそう言って、力尽きた
科学者は虚無主義の人間だった
天国も輪廻も信じていない
無になる彼女を止められなかった事が悔しかった
科学者
科学者
23世紀
ある研究所は、ある偉業を果たした
人類の見果てた夢を、叶えたのだ
その企画のリーダーを務める男が、沢山のメディアの前に現れた
科学者
科学者
壇上に上がってそう話すのは、最愛の人を失った科学者だった
彼は、政府によって秘密裏に行われていた延命の実験の被験者になり
何世紀も生きてきたのである
科学者
科学者
大体の企画としてはこうだ
ユートピア地区というものを作り、そこで不老不死になる様にテロメアを凍結させた人を住ませる
肉体と、人の記憶を元に人間を蘇生出来るようにする
脳に負荷がかかるのを防ぐ為、嫌な記憶や不必要な記憶は忘れられる様にする
科学者
科学者
科学者
科学者
科学者
歴史上最悪のディストピアが、誕生した瞬間だった
死んだら何になるのか
それを知るのが怖いのなら、敢えて知る必要の無い環境にする
手段としては間違っていない
けれど、死があると言うことは
死にも意味があるんだと思う
無くしていい筈が無い
けれどきっと、彼はこの先何も知らずに生きていく
大事な親友を忘れさせられた人
蘇生した人間の正体に気付いてしまった人
自分の終焉に何を得るのかを知る為に生きていた人
彼らにとってこの世界はディストピアでしか無かったと思う
けれど、彼も大勢の人々も
世界の真実には気づかない
真っ暗な研究室
培養器の中で沢山のチューブに繋がれた人間がいた
科学者
科学者
科学者は培養器の下部にあるモニターを軽く操作する
プシューという空気の抜ける音と共に培養器の中が開き、チューブの拘束から解放された女性が出てきた
倒れてくる女性を、科学者は大事に受け止める
腰まで伸ばした黒髪にハッキリとした顔立ち
彼がかつて愛した女性によく似ていた
科学者
科学者
死後の世界には何も無い
だったら、この世界をどんな神話の記述よりも素晴らしい
楽園にしてしまえば良いのさ
コメント
9件
色んな作品とリンクしていて、面白かったです! 映画の始まりみたいで、ドキドキしました( *´︶`*)
んんんん、設定ガバガバなんてそんなことなかったですよ! 面白かった! なるほど、と納得出来てしまった自分が少し怖くなりますw 死にも意味がある、今回はここに触れる内容ではなかったけれど良い言葉ですね( ˇωˇ ) Twitterから読みに参りました!これからも応援してます!
すみません、軽くスランプになってしまったのと体調不良で……