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三村優真

僕の愛を受け止めて

男性のその言葉に

あすみさんは戸惑いながらも頷いた

会って間もない名前も知らぬ男性と

それもいきなり連れ込まれたマンションの一室で

普通に考えればおかしいことだが

家族からの虐待によって疲弊していた彼女にとって

男性の言葉はある種の救いの言葉はのように感じていた

男性はあすみさんの服を脱がせると

三村優真

これは消毒だよ……

そんな言葉を囁きながら

あすみさんの全身に刻まれた痣や

細かい傷の一つ一つにそっと口づけをした

時には激しく

狂おしいほどにあすみさんを求め

そして優しく包み込むように

男性はあすみさんを抱いた

三村優真

僕を信じて……

三村優真

僕の愛を受け止めて……

男性は幾度となくそんな言葉を投げ掛けてきた

あすみさんはそれに頷いたが

家族から虐待を受け続けていたあすみさんには

男性の言う"愛"が何なのかよくわからなかった

それでも全身を震わせながら

男性に全てをさらけ出した

男性の包み込むような行為は

いつも兄にされていた"猛攻"とは全く違い

とても優しい温もりを全身に感じた

井川あすみ

(どうして……)

井川あすみ

(こんなに優しくしてくれるの?)

幼い頃から祖母や父に疎まれ

その頃は庇ってくれていた母と兄からも

身体的、性的な虐待を受けるようになった

どんなに泣き叫んでも

兄が攻撃の手を緩めることはない苦しいだけの毎日

でもこの男性は

あすみさんが少しでも苦しそうな顔をすると手を止め

三村優真

大丈夫?

そう言って優しく抱き締めてくれた

徐々に全身の震えはなくなり

これまで感じたことのない不思議な感覚と共に

二人の長い長い夜は更けていった

翌日

あすみさんがゆっくりと目を開けると

あすみさんの手には手錠が掛けられていた

あすみさんの左手と男性の右手が

離れないように繋がっている

そんな状況でも不思議と恐怖を感じることはなく

隣で目覚めた男性にトイレに行きたいと訴えると

優しく抱き上げてトイレまで連れていってくれた

その後

優真と名乗る男性から再び紙とペンを手渡され

「あすみ」

自分の名前を紙に書いて伝えた

とても穏やかな朝

連日の猛攻で毎朝感じていた強い痛みもなく

一昨日の夜の傷が微かに痛む程度だった

三村優真

きちんと消毒しないと……

三村優真

こんなことなら救急箱を常備しておけばよかったな……

優真さんは何度もあすみさんの頭を優しく撫でてくれた

井川あすみ

(こんな朝を迎えることができるなんて……)

優真さんは自分を拉致した犯人

でもあすみさんにとっては唯一の救い

そんな感情が芽生え

あすみさんが優真さんにしがみつくと

優真さんはあすみさんを優しく抱き締め

そっと唇を……

井川あすみ

優しくされたことなかったから……

井川あすみ

嬉しかった……

井川あすみ

あの時、本気で……

井川あすみ

ずっとそばにいたいって思ったの……

その後、優真さんは

ドラッグストアで湿布薬を大量に購入し

あすみさんの傷の手当てをした

磁気式の筆談ボードも用意して会話もできるようにした

警察に見つかるまでの三ヶ月間は

彼女にとってとても穏やかで幸せな時間だったはず

だから余計に辛く感じる

確実に迫っている二人の別れに

何もできない自分が嫌になりそうだった

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