よい子のみなさん
17時になったらお家に帰りましょう
杏子
千真希(ちまき)ー!まってよっ
千真希
なにちんたら歩いてんの?あと3分!!
千真希
17時まで間に合わない...!
杏子
ちょっとくらい遅れてもよくない?
千真希
ダメ!駆け足!
杏子
いみわかんないし...もうっ
この町では高校生まで下校時刻が決まっている。
杏子
17時とかはやすぎ!なんも出来ないじゃん!
杏子
(下校時刻を守るなんて小学生までじゃないの??)
千真希
杏子(きょうこ)のせいでしょっ
千真希
トイレ長すぎるから...
杏子
あたしは必死で闘ってたの!!
千真希
だから消費期限切れたものは食べるなって言ってるでしょ!
杏子
今日はたまたま運が悪かったの!
千真希
もうそんなことどうでもいいからはやく走りなさい!!
千真希
千真希
...もうだめ!間に合わない!!
千真希
杏子、今日は私の家泊まって
杏子
え〜、ゲームできないじゃん...
千真希
間に合わない方がヤバいでしょ!
杏子
だからぁ、ちょっとくらい平気だって
杏子
どうせ怒られるくらいなんだか...
杏子
杏子
どぅわっ!!!
千真希
着いた!はやく入って!!
杏子
もー急にひっぱんないでよ
千真希
はぁっ...はぁ、危なかった
千真希
いま17時になった...
千鶴
あら、おかえり
千鶴
遅かったわね。
千真希
ただいま
千真希
ママ、きょう杏子泊まってくから
千鶴
なーに、また間に合わなかったの?
千真希
杏子が腹いたと闘ってたから
杏子
ちょっと...!そんなこといわないでよ!
千真希
ほんとのことだもーん
千鶴
はいはい、わかったから
千鶴
杏子ちゃん、お母さんに連絡入れとくね
杏子
...ありがとうございます
千真希
杏子ー、つぎお風呂いーよ
杏子
はーい
千真希
あ、そーだ
千真希
はやいうちにあの課題やんないと
千真希
明日までだし
杏子
え、まじ...やらないとじゃん
杏子
あたし次出し忘れたら成績1になっちゃう
千真希
は??どんだけ出さなかったらそうなるのよ...
杏子
だって、めんどくさくて...
千真希
進級できない方がやばいでしょ
杏子
とにかくやらないと!あたしの進級がかかってる...!
千真希
ばかだ...。
杏子
杏子
あ、れ?
千真希
...なに
杏子
ないかも...
千真希
な、なにが...
杏子
え、ヤバい
千真希
ちょっと、まさか
杏子
...課題持って帰ってくるの忘れた
千真希
なにやってんのー!!!?
千真希
ちゃんと探した??
杏子
探してるー!!
杏子
ないー!!!
千真希
......
千真希
杏子、学年が別でも会いに行くから...
杏子
ちょっとっ勝手に留年にすんなよー!
千真希
さすがに朝早く行っても終わらないと思う
千真希
レポートだしねえ...
杏子
ち、千真希ぃ
杏子
写させて...?
千真希
レポート写したらバレるでしょーが!
杏子
どどどどうしよう
千真希
うーん...
杏子
留年...あたし、留年...?
杏子
まってそれはやばすぎる
杏子
杏子
あれ...
杏子
あっ、そうか
杏子
普通に考えて
杏子
学校に取りに行けばいーじゃん
千真希
...は?
杏子
今ならまだ開いてると思うし
杏子
ちょっと行ってくるわ
千真希
いやいやいや
千真希
何いってんの?
杏子
...ちょっと、手はなしてよ
千真希
ダメに決まってるでしょ
千真希
17時以降に外に出るなんて
杏子
いや、だって緊急事態だし...
杏子
死ぬわけじゃないんだからさあ
千真希
死ぬよ?
杏子
冗談やめてよ〜
千真希
杏子、本気で言ってるの?
千真希
まさか怒られて済むと思ってるの?
杏子
え...違うの?
千真希
...
千真希
本当に言ってるの......?
千鶴
千真希ー、杏子ちゃんご飯よ
千鶴
千鶴
あら?どうかしたの?
千真希
...ママ
千真希
杏子が外に出ようとしてる
千鶴
あらまあ
千鶴
...杏子ちゃん
千鶴
17時を過ぎたら家を出れないの知ってるでしょ?
杏子
いや、でもあの
杏子
課題を学校に置いてきてしまって...
千鶴
それなら明日の朝早く行ってやるしかないわね
杏子
それじゃ間に合わないんです...!
千鶴
ねーえ杏子ちゃん、外に出ることより課題の方が大事なの?
杏子
だって、進級できなくなっちゃう...
千鶴
いけません!!!
杏子
えっ
千鶴
杏子ちゃんあなた自分が何を言ってるのか分かってるの?
千鶴
命に関わることなのよ?
杏子
どうして...命に関わるんですか...
千鶴
...え
千鶴
千鶴
千真希...?
千真希
...ママ、杏子たぶん本気
千真希
本当に知らないんだと思う。
千鶴
あら...
杏子
えっと...
千真希
だから杏子はいつも余裕そうだったんだ...
千真希
今日だって...ヘタしたら間に合わないところだったし。
千真希
...知らないのたぶん杏子だけだと思うよ。
千真希
この町の人はみーんな知ってる。
杏子
ど、どういうこと...
杏子
説明してよ
千真希
...説明はできない
杏子
なんで...
千真希
これは暗黙の了解みたいなものだし
千鶴
杏子ちゃん、5歳のときお手紙もらわなかった?
杏子
手紙ですか...?
千真希
ママ、もうやめよう
千真希
これ以上この話をしたら勘づかれる...
千鶴
...
千鶴
そうね...
杏子
(一体何がどうなって...)
千鶴
急に怒鳴ってしまってごめんなさいね。
千鶴
杏子ちゃん、とにかく外に出てはダメ。
千鶴
残念だけど課題のほうは諦めてちょうだい。
杏子
そんな...!
千真希
...杏子
杏子
...はい
千鶴
千鶴
さ!ご飯にしましょ!冷めちゃうわ
千真希はあれ以上そのことについて話してはくれなかった。
千真希
...おやすみ
杏子
おやすみ
杏子
(課題...)
杏子
(留年かあ)
杏子
(なんで...)
杏子
(確かに忘れたあたしが悪いけど)
杏子
(学校に取りに行けなかっただけでできなかったとか...)
杏子
(それで留年...ださ。)
杏子
(...だいたいどうゆうことなの?)
杏子
(17時以降に外に出たら命に関わる...?暗黙の了解...?)
杏子
(手紙...??)
杏子
(これは千真希たちの嘘?)
杏子
(命に関わることって一体...)
杏子
(茶化しているようにしか感じられない...。)
杏子
(お母さんもお父さんからもそんなこと聞いたことない。)
杏子
(だいたい高校生にもなって下校時刻があることが変だとは思ったけど)
杏子
(しかも時間厳守だし。)
杏子
(千真希は真面目だから少しも遅れることを許さないんだと思ってた。)
杏子
(17時まで間に合わなかったら千真希の家に泊めてもらうのもよく考えたら変だよね)
杏子
(当たり前のようになってきてるから何も変に感じなかった...。)
杏子
(時間以外は普通なのに...)
杏子
(この町はおかしい?...それとも私がおかしいの?)
杏子
......
杏子
...千真希
杏子
杏子
寝ちゃったか...
杏子
...
杏子
よし
杏子
...確かめてやる
杏子
(外に出ただけで命に関わるなんて)
杏子
(本当なわけないよね...?)
杏子
(あんな話急にされて信じられるわけがないよね、やっぱ。)
杏子
(自分で行って確かめないと...!)
杏子
......
杏子
なにも...ない
杏子
(特に怪しいものは見あたらない。)
杏子
(命に関わりそうな感じもしない。)
杏子
(おばけでも出るのかと思ったけど)
杏子
(普通の夜の住宅街じゃん。)
杏子
...
杏子
(どうせならこのまま学校に課題取りに行っちゃお!)
杉の町の子どもたちは
17時までお家に帰ってないといけません。
また、17時以降に外へ出てはいけません。
守れない悪い子は...
✕✕✕✕にされちゃうよ。