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あまみつつき

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あまみつつき

1 - あまみつつき 前編

♥

153

2020年10月07日

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アサミ

──うん。大丈夫から

アサミ

──心配しないで

アサミ

アサミ

──明日も早いし、そろそろ切るわ

アサミ

お土産、楽しみにしててね

通話を切った

ガラっ

突然襖が開き、同室の真理恵が入ってきた

真理恵

アサミさーん、聞いてくださいよ〜

アサミ

どうしたの? 真理恵ちゃん

真理恵

田口さんったら、ひどいんですよ!

アサミ

田口さんになんかされたの?

真理恵

わたしが怖がりなのを知ってて

真理恵

怖い話ばっかり聞かせてくるんです!

真理恵

パワハラで訴えてやろうかと……!

アサミ

まあまあ、落ち着いて

アサミ

お茶でも飲む?

アサミはお茶を2人分用意する

アサミ

はい、どうぞ

真理恵

──ありがとうございます

ごくり

アサミ

いったい、田口さんから

アサミ

どんな怖い話を聞かされたの?

真理恵

……いろいろですよ

真理恵

真理恵

餘魅慈寺とか

アサミ

よみじでら?

アサミ

たしか、旅館の近くにあるお寺だっけ?

真理恵

そうです、そのお寺です──

2年前、餘魅慈寺の住職が亡くなり後継ぎもいなかったため、廃寺になった

月が満ちる頃、関係者が餘魅慈寺へ赴くと、死んだ住職に会ったという──

それ以来、ある“噂“が立ちはじめた

『満月の夜、餘魅慈寺に行けば、死んだ人に会える──』

アサミ

田口さん、そういう系の話、好きだからね

真理恵

……うぅ、田口さんがあまりにも怖い顔で話すから

真理恵

眠れそうにありません…………

アサミ

あくまで噂なんだから、大丈夫よ

アサミは真理恵をなぐさめた

アサミ

明日も早いんだし、そろそろ寝ましょうか

アサミ

(真理恵ちゃんには、ああ言ったけど…………)

こっそり抜け出し、餘魅慈寺に来ていた

アサミ

アサミ

……確かめるだけだから

自分に言いきかせるように、中へと入る

アサミ

(あまり荒れてないわね)

アサミ

(まあ、廃寺になってから2年しか経ってないみたいだし)

アサミ

……うぅ、夜は気味が悪い…………

アサミ

(……本当に死んだ人に、会えるのかな?)

しばらくその場に立っていたが、変化はなかった

アサミ

やっぱり、ただの噂だったのかも

アサミ

アサミ

……え?

奥で人影らしきものが動いていた

アサミ

まさか…………

さらに進むと──

アサミ

…………え

背中に黒い羽根を生やし、山伏の格好した烏面の女が、なぜか縁側でお月見の準備をしていた

月見台の上にはススキをさした一輪挿し、月見団子をのせた三方、月見酒がおいてある

アサミはそれをぼう然と見つめた

??

??

こんばんは

烏面の女が不意に振り返った

アサミ

……!?

??

すみません

??

気配を感じたもので──

??

驚かせましたね

人懐っこそうに笑いかける

アサミ

……あの、いったい何を…………?

思わず声をかけてしまった

??

見ての通り、お月見ですよ

??

だって、今日は満月じゃないですか

アサミ

それは見れば、わかるけど……

??

まあ、立ち話もなんですし

??

ご一緒にお月見でもいかがですか?

??

絶好の月見日和ですな〜

アサミ

…………

アサミ

(なりゆきでお月見することに)

アサミ

(なっちゃったけど…………)

チラッ

アサミ

??

何か気になることでも?

アサミ

え、あの、その……

アサミ

どうして、餘魅慈寺に……? えーと──

??

鴉天狗と呼んでくださいな

鴉天狗

鴉天狗

私が餘魅慈寺にいるのは、見張るためですよ

アサミ

見張るため?

鴉天狗

──人が誤って、“黄泉の国“に行かないように、ね

アサミ

…………

鴉天狗

本来は鬼が

鴉天狗

見張り番をする予定だったんですけれど

鴉天狗

なんか急用で来れなくなったらしくて

鴉天狗

私に回ってきたんですよね〜

アサミ

…………

鴉天狗

それはさておき

鴉天狗

お月見を楽しみましょう♪

鴉天狗

この地方へは旅行か何かで?

アサミ

まあ、そんなところ……かな

鴉天狗

自然とか豊かですからね

鴉天狗

タヌキが道路を横断してるところを、見かけたことがありますよ

10分後

アサミにさかずきを渡し、月見酒を注いだ

アサミ

…………

鴉天狗

大丈夫です。うつし世産の甘酒なんで

鴉天狗

それにアルコールは入ってないです

鴉天狗

安心してお飲みになれますよ

恐る恐る口を付けた。ほどよい甘さが口の中で広がる

アサミ

──おいしい

鴉天狗

よかったです

鴉天狗

カラスの面を少しずらし、月見酒──甘酒──をごくりと飲む

鴉天狗

あーおいしい♪

鴉天狗

さて、月見団子をいただきましょうか

七輪を足下に置き、砂糖と醤油を並べた

アサミ

(……いつの間に)

月見団子を平らに押しつぶし、軽く焼き目をつける

鴉天狗

いい匂い……♪

砂糖醤油をつけて、アサミに渡す

鴉天狗

遠慮なく、召し上がってくださいね♪

アサミ

(そういえば、去年のお月見もみんなでこうして…………)

アサミ

アサミ

(……今年も、やりたかったな)

ぽろり

アサミ

あれ、なんで…………

涙が流れる

アサミ

……ぅ…………

鴉天狗

どうぞ

手ぬぐいを渡される

それを受け取り、目頭をぬぐった

アサミ

──ありがとう

アサミは月見団子を一口、食んだ

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー
ユーザー

すてゅくすに出てきたお姉さん! すてゅくすに出てきたお姉さんじゃないですか! 黄泉路の番人のような方なんでしょうか 同一世界観の作品はこういうのを探せるのも楽しいですよね! 続きに逝ってきます!

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