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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

三村龍三

まさか……孫がこんなことになっているなんて……

三村龍三

私は……息子が孫を追い出したことも知らずにいたんです……

三村龍三

知っていたら……

三村龍三

こっちに来いって……言ってやれたのに……

三村龍三

なんで連絡……寄越さなかったんだ……

沢田マリカ

三村さん……

龍三さんは親族の中で誰よりも

彼のことを心配している

こんな龍三さんの思いが届かないほど

彼は遠くに追いやられてしまっていた

まだ十五歳だった三村少年が味わった孤独は

ここにいる誰にも想像のできない

壮絶なものだったのだろう

新しい妻との生活のために

実の息子である彼をマンションに隔離した父親

少年は心の奥に空いてしまった穴を埋めるように

愛情を求めてさ迷っていたのかもしれない

そして彼女と出会い

虐待を受けていた彼女を救おうとした

彼女の傷を治療し

決して家族に見つからないように

マンションの部屋で彼女と……

きっかけは拉致と言う形だったかもしれない

けれど二人の間には

特別な感情があったのだろうと思えてくる

それからしばらく会話が続き

龍三さんは幼い頃の彼の話をしてくれた

三村真美

最後に会ったのは……

三村真美

義兄さんが離婚する前で……

三村龍三

優しい子だったんです……

三村龍三

優しくて……賢くて真面目だった優真が……

三村龍三

訳もなく悪事を働いたとは……どうしても……思えなくて……

三村龍三

先程のお話は事実なんでしょうか?

三村真美

優真君は……

真実かどうかはわからない

私が話していることは全て

彼が私に話してくれていることではあるが

それを裏付ける証拠が見つかっていない

今の私には

彼の言葉であると伝えることしかできない

少女を拉致した彼と

まるで自らの意思で彼の元に留まったように思える彼女

彼の言葉が本当ならば……

三村龍三

あの……

三村龍三

今日、優真に会うことはできますか?

沢田マリカ

警察署の面会時間が限られていて

沢田マリカ

今日はもうダメなんです

三村龍三

そうですか……

沢田マリカ

でも、明日の午前中なら!

三村龍三

でも、明日は……

沢田マリカ

もしかして、今日帰ってしまうんですか?

三村真美

大丈夫ですよ!

三村真美

龍二さんには連絡しておきますから!

龍三さんと真美さんは

明日の朝イチの電車で戻る予定だったらしい

でも明日の午後までここに残れるように

真美さんがご主人の龍二さんにお願いしてくれることになった

三村龍三

真美ちゃん……

三村真美

せめて一目だけでも会えるなら……

三村龍三

申し訳ない……

直ぐ真美さんがにご主人に連絡をいれると

龍二さんは快く了解してくれた

次男の龍二さんも

龍三さんや真美さんと同じように彼のことを気にかけていて

ここに来ることを迷っていた龍三さんに

会いに行くよう勧めたのも龍二さんだった

三村真美

義兄さんのことはあまり話したがらないんですけど

三村真美

優真君のことはよく話していたんです

三村真美

義兄さんが再婚してから、連絡が途絶えてしまっていたので

三村真美

私も主人も……優真君のことが気がかりで……

三村龍三

店の方は、龍二と孫の龍五が手伝ってやってくれてて……

三村真美

お義母さんもいるので、お店の方は心配ないんです

三村真美

一日二日抜けたところで、田舎ですから……

早く会わせてあげたい

彼もきっと喜ぶはず……

そう思った時

事務所の電話が鳴り響いた

高城寛貴(所長)

はい、高城寛貴心理相談室です

高城寛貴(所長)

え!?三村優真が釈放!?

沢田マリカ

え!?

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

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