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デビルズパレス
中庭
主
美しく咲きほこるバラたちを眺めながら
ゆっくりと歩く
花を撫でていく甘い香りは
今朝ベリアンがいれてくれた紅茶を思わせた
主
主
なんとなくこぼれたつぶやきは
昼下がりの温かい風にさらわれていった
主
主
昨晩夢を見た
とても長い長い夢を
それははっきりと覚えている
主
夢の内容がぼんやりとした霧となって
頭の中を静かに覆っている
しかしどれだけ手を伸ばしても
指は空をきるばかり
主
主
不思議な夢をみて
目が覚めたのはいつもよりもだいぶ遅い時間
カーテンをめくった窓からはいつもよりも眩しい光が差し込んできた
ベリアンに頼んだ朝食代わりの紅茶は
珍しい花のフレーバーティー
いつもと違うことばかりで始まった今日
せっかくだからと
ひとりで庭の散歩に出かけた
主
主
主
主
独り言をつぶやいてみても
ただ風が頬を撫でるだけだった
主
一旦考えることはやめにして
私はまたバラを眺めながらゆっくりと歩みを進めた
主
深い赤が重なった花弁は
光を受けてきらめく水滴が無数についていた
主
ざあぁぁ…
ひときわ大きい風が吹く
主
風に撫でられて気持ちよさそうに揺れるその赤が
ラト
記憶の中のふわりとなびく髪の赤に重なった
主
グロバナー家に旅立ってからもう5日
主
ベリアンは報告を見てはいつも
大丈夫です、信じてお待ちください
そういっていつもの穏やかな顔で笑う
主
主
主
私はそっと
1輪の赤に触れる
主
主
男の子
主
突然の声にとっさに振り返る
男の子
男の子
そこには
白髪の小さな男の子が立っていた
主
主
男の子
男の子
男の子はただひたすらに
そう問いかけてくる
主
主
この子の質問に答えるべきか
逃げて誰かに助けを求めるか
主
わたしは拳をぎゅっと握った
主
主
主
わたしが少し距離をとったことに気づいたその男の子は
男の子
男の子
男の子
男の子
少し慌てた様子でそう言うと
主
男の子
男の子
男の子
小さな手がずっと私の方に差し出され
その手には
2輪の白い小さな花が握られていた
主
主
私は距離をとったまま問いかける
男の子
男の子
男の子
主
主
男の子
主
主
主
私はあくまで悪魔執事の力を解放するのが役目で
実際に戦っているのは悪魔執事のみんなだ
すると
男の子
男の子は大きく頭を横に振った
男の子
男の子
男の子
主
主
どういうこと?
さっきからこの子の話は分からないことだらけだ
主
男の子
主
前の
主
主
頭がズキズキと痛み
鼓動が早くなる
主
男の子
さっきよりもはっきりとした男の子の声が私の声をさえぎった
男の子
男の子
男の子
主
主
主
主
主
主
男の子
主
男の子
男の子は花をそっと地面に置いた
男の子
男の子
男の子
男の子
主
男の子
男の子
そう言った男の子は
幼く笑って走り去った
主
今にも泣き出してしまいそうな
儚い笑い方だった
追いかけようとしたそのとき
ざあぁぁぁ…
また少し強い風が吹いて
主
宙に浮いた白い花を
私はとっさに掴んでいた
主
視線の先には
もう誰の影もなく
ただただ
あたたかな風になでられて
嬉しそうに揺れる白と赤の花があるだけだった