俺はやっとの事で家に辿り着くと、もう死にそうになっていた
体も、心も
そんな俺を見て気を遣ったのか、母親は「おかえり」とだけ手短に言うと、それ以上何かを俺に問いただしたりはしなかった
奈緒の事が、大好きだった
どうしようもないくらいに
奈緒の死に顔が、今も脳裏を離れない
あの時、僕は奈緒と手を繋いでいたのに
何もできなかった
ただただ、後悔の念に押しつぶされそうだった
そんな時、“現実”とは空気を読まないもので、家のチャイムが高らかに鳴った
母親が出てくれるだろうと、俺は鳴り止まないチャイムを聞いていたが
母親が出る気配は一向にしなかった
どうやら、僕に気を遣って家を空けてようだ
どんだけ気を遣ってんだ、全く
僕は嫌々ドアを開けると、そこには見慣れた人物とそうでない人物にが立っていた
春人
春人
春人
なんだ、春人くん
会いたかった、なんて、少し気持ちが悪いぞ
僕は、そんな気持ちを押し殺しながら言った
正輝
正輝
正輝
正輝
春人くんは兄ちゃんと同じ部活の人で、大分2人は仲が良い
春人くんが来る時は、必ず兄ちゃんも一緒にいた
春人
春人
春人
正輝
正輝
正輝
春人
春人
春人
正輝
正輝
正輝
春人
春人
そう言って、春人くんはスマホを僕に見せた
スマホには確かに奈緒と兄ちゃんの名前が書いてあり、同時に死んだとも書かれてあった
信じられなかった
正輝
正輝
正輝
僕は膝から崩れ落ちると、涙が大量に流れてきた
どうして、僕の大切な人が同時に死ななきゃならはいんだ
どうなっているんだ、この世界は
正輝
正輝
正輝
正輝
正輝
もう無理だ
正輝
正輝
春人
春人
春人
春人
春人くんの言葉は、僕の心に深く突き刺さった
そして、抜けることはなかった
春人くんと、明人という少年は、僕に全てを語ってくれた
『カゲロウデイズ』のこと
みんなを助け出す方法に
もう2人子供たちを集める必要があるということ
選ばれし5人の中に、僕が入っていたこと
...この世界は、最低だ
神様は味方してくれないし、奈緒にも会えない
だったら、こんな世界変えてやる
僕らの手で
正輝
ここから、長い長い夏の日は始まった
つづく