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ガチャリ
夏音
暗い廊下が目に入る
物音一つしない異様な空間に、気味の悪さを覚える
夏音
ふと視線を落とした時、私はこの異様な雰囲気の中でも一際目立つあることに気がついた
そして、同時に震え上がった
夏音
夏音
夏音
廊下の隅に、母親が倒れていた
夏音
生気が感じられない
肌に触れると、母親はビクともしなかった
そのかわりに、人間とは思えないほどの冷たさを感じ取る
これらが示しているものに、私は気づくことができない
夏音
夏音
そして、私はもう一つのことに気がついてしまう
夏音
夏音
まさか、父親が
そう思った時、その考えは一瞬で粉々に砕け散った
部屋の奥に、血だらけの父親が倒れていた
さらによく見ると、母親の頭部にも赤く血が滲んでいる部分がある
私は一瞬で凍りつく
足がガタガタと震え、思うように動かせない
その時
留衣
留衣
夏音
夏音
夏音
兄さんの服には、ベッタリと赤い“何か”が付いていた
私は言葉を失う
今まで感じたことのないような恐怖に震え、それこそ話せなくなる
夏音
夏音
留衣
留衣
留衣
夏音
夏音
夏音
あまりの恐怖に、涙がボロボロと落ちる
いつも優しかった兄さんが、なんで
留衣
留衣
留衣
留衣
留衣
夏音
留衣
留衣
留衣
兄さんは、人間の言葉とは思えないほど非情なことをなんでもないようにスラスラと話す
もうそこに、兄さんの面影は残っていなかった
夏音
絶望で足に力が入らなくなり、その場で崩れ落ちる
留衣
留衣
兄さんの手には、ライターとガソリンらしきものが入った赤いタンクが握られていた
夏音
私は、瞬時に自分に迫る死を予感する
夏音
夏音
夏音
半ば叫び声のように私は喚く
留衣
留衣
留衣
留衣
留衣
留衣
夏音
夏音
夏音
留衣
夏音
留衣
夏音
夏音
留衣
留衣
留衣
留衣
夏音
夏音
留衣
バシャッ
瞬間、兄さんの手に握られていた赤いタンクの中の液体をかけられる
留衣
留衣
留衣
兄さんは、手に持っていたライターに火をつける
足下に蒔いたガソリンにその火を近づけると、一瞬で彼の周りは火に包まれる
瞬間、火は私の体にも乗り移る
夏音
夏音
夏音
まだ、伝えていない
何も、何も
全身が熱い
しかしそれ以上に、息をするのが辛かった
留衣
留衣
夏音
家の中は、見渡す限り火に染まっていた
段々と、意識が遠ざかる
本当に、こうゆう時だけ
こうゆう時だけ
『現実は、小説のようにはいかないんだよ』
どうして今に限って
こんな小説のような死に方なの
やっぱり、神様は私にだけ意地悪をする
私にだけ、取り返しのつかない悪戯をする
完全に視界が真っ暗になった時
私は、彼のことだけを思い出していた
つづく