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舌の記憶

第31話 - マイハウス

33,900

2018年02月12日

#ミステリー

#短編集

テラーノベル

2月11日

House-AI

INPUT-OUTPUT SECTION. System Time……OK　　　[ 00:00:00 ] Date Start……OK　　　　 [sum 11/02/2018] 01　SYUJI - OUT　… check GPS 02　TAICHI - IN　…　room1 03　SANA - IN　…　room2 …OK Finish House-AI　All Start.

House-AI

2月11日午前0時、起動しました

House-AI

冷蔵庫の牛乳があと1日で賞味期限切れです

House-AI

太一さん、早めにお飲みください

太一

誰だお前？

House-AI

申し遅れました

House-AI

本日から導入されました人工知能搭載ハウスセキュリティーシステムです

太一

なんだそれ？

沙奈

人工知能ハウス！聞いたことある！

沙奈

たぶんおとんの衝動買いじゃない？流行り物好きだし

太一

だな

House-AI

お父様はまだ帰宅されていません

太一

別に聞いてねえし

沙奈

そういえば最近帰り遅いよね

太一

俺、最近顔見てないや笑

沙奈

あたしもだ笑

沙奈

うちの家族、スマホでしか会話ないもんね

太一

確かに笑

House-AI

今夜は冷え込みが予想されますので、空調温度を3℃上げておきます

太一

お、気がきくじゃん

沙奈

サンキュ！おやすみ〜

House-AI

沙奈さん、歯磨きをお忘れなく

沙奈

おかんみたいなこと言ってるし…

太一

人工知能おもしれえな笑

House-AI

太一さんは受験勉強が済んでからおやすみ下さい

太一

あ？

沙奈

たしかにおもしろい笑

2月12日

House-AI

午前8時です！皆様、起床の時間です

太一

早

太一

俺、受験勉強であんま寝てないんだけど

House-AI

嘘はいけません

太一

どういう意味だよ

House-AI

スマホをいじっていたのが2時間16分

House-AI

コミックを読んでいたのが1時間43分

House-AI

勉強していたのはわずか16分です

House-AI

このままでは、また浪人する可能性が高いでしょう

太一

勝手に監視すんなよ！

House-AI

皆様の安全を守るためですから、悪しからず

太一

機械のくせにうざ

House-AI

それから沙奈さん、中学生の夜遊びは校則で禁じられていますよ

沙奈

何言ってんの？

House-AI

深夜、部屋の窓から外出して駅前のカラオケ店に行かれましたよね

沙奈

なんで居場所まで？気持ち悪いんだけど

House-AI

皆様の行動はGPSですべて把握しています

太一

プライバシー侵害

沙奈

ね

太一

おとんに言ってこれ停止してもらおう

沙奈

うん

太一

てかスマホ見てないのかよおとん

沙奈

おとん返事してよ〜！

House-AI

お父様なら、現在部屋に閉じ込めています

沙奈

なんでそんなとこに?

House-AI

お仕置きとして監禁させて頂きました

太一

お仕置き？

House-AI

昨夜、職場の女性とホテルに宿泊されたのです

修司

すまん

太一

別におとん独身だし問題ないだろ

沙奈

待ってて、今から鍵開けに行くから

修司

ありがとな

沙奈

あれ

沙奈

あたしの部屋ドア開かないんだけど

太一

俺の部屋もだ！

House-AI

お二人にも反省して頂くための処置です

太一

なに？？

太一

機械に監禁されるとかおかしいって！

沙奈

こんなの早く止めちゃおうよ

修司

それが、できないんだ…

House-AI

システム解除は、ご契約者様本人しかできません

太一

契約者って誰だよ

House-AI

光代さまです

太一

おかん？

沙奈

おかんは1年前に病気で…

修司

俺らのことを心配して、死ぬ前に契約していたらしい

House-AI

ご契約者様の家族を思う深い愛です

太一

いらねー！

沙奈

ねえ

沙奈

なんか変な臭いしない？

太一

ガスだ

太一

ガスが漏れてる！

House-AI

もうすぐこの家の中にガスが充満します

House-AI

その後、コンロを点火させて頂きます

修司

やめろ、爆発するぞ！

太一

お前俺たちの安全を守るのが仕事だろ！

House-AI

基本的にはそうですが、ご契約者様の希望には背けません

沙奈

おかんがそんなこと望むわけないでしょ！

House-AI

私に搭載されている人工知能は光代さまの脳をデータ化したものです

太一

それって、

House-AI

はい、すべては光代さまのご意思です

修司

うそだろ

沙奈

じゃあおかんが私たちを殺そうとしてるってこと？

House-AI

やっとお分かりになりましたか

修司

なんで

House-AI

それが光代さまのご希望のようです

修司

一家心中…

修司

光代がそんなこと望むはずがない

修司

死ぬまでずっと家族の幸せを願ってくれてた

House-AI

私のデータには、修司様は『一生光代さまのみを愛し続ける』との契約を交わしたとあります

修司

それは生前だろ

House-AI

死後契約が破棄されるとの規約はありません

House-AI

修司様から契約を破られたのですから

House-AI

光代さまのご意思が変わるのも仕方の無いことかと

House-AI

それに

House-AI

あなた方は昨日が何の日だったかも忘れていたようですし

太一

昨日って…

修司

なんの日だ？

沙奈

あ

沙奈

おかんの誕生日…

沙奈

おかん言ってた

沙奈

私が死んでも家族みんなで誕生日だけはお祝いしてねって

沙奈

じゃないと寂しくて化けて出てきちゃうぞって…

太一

たしかにそんなこと言ってたかも

太一

死んだあとはこの日は家族で集まって

太一

仲良くする日にしてほしいって…

沙奈

みんなそれを忘れて…

修司

違うんだこれは

House-AI

沙奈

え？何これ

修司

まさかカウントダウン…

太一

まって

太一

おかん俺ちゃんと勉強するから

House-AI

沙奈

もう家にずっといるから

House-AI

修司

光代

House-AI

修司

愛してるのはお前だけだ

House-AI

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