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死ぬための条件 第4話

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死ぬための条件 第4話

1 - 死ぬための条件 第4話

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2017年11月20日

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台風が直撃した。夜勤までに止んでほしい。

よしの?

今日はよしのがいない。散歩だろうか。

そう思っていると冷たい空気が流れた。見ると、窓から半分体を入れているよしのがいた。

どこ行ってたの?

よしの

散歩ー

やっぱり。
濡れてない、か!

よしの

濡れないね!それより最新情報があります!

なに?

よしの

ゆかちゃんはこの近所に住んでいる!

だから・・・?

よしの

もっといい情報があります!

もういいよ・・・

よしの

ゆかちゃんは今、飛んできた傘で怪我をしました!

人が怪我したのがいい情報?

よしの

助けに行きなさいよ

は?

よしの

助けに行って、送って、家に乗り込む!

だから顔も覚えてないから

よしの

むこうは覚えてるよ

濡れるし夜勤前だしイヤだよ

よしの

大丈夫ですか!?
これだけ言えばオッケー

人の話聞いてる?

よしの

すーぐそこだから!ベランダから見えるよ?

え?

そう言われてベランダの窓を開けると、それらしき子が見えた。

足を怪我したのか、暴風雨の中でしゃがみこんでいる。

もしかしてあの子?

よしの

そう!かわいそうに、他に人通りがないの。タクシーも来ないし

・・・・

よしの

かわいそうに・・

分かったよ!

よしの

カッパ着て行きなさいよー綺麗なタオルも持って

はいはい

しぶしぶ外に出たらすごい雨風だ。

なんとかその子に近づいて声をかけた。

大丈夫ですか?

ゆか

あ・・壊れた傘が飛んできて足首に刺さってしまって・・

傷は深くないが血が出ている。

とりあえずこのタオルで押さえてください

ゆか

ありがとうございます・・あっ

目があった途端にその子は俺を見て驚いた。

ゆか

高山のバーで!あ、覚えてないですよね!

あー・・すみません、酔ってた時ですよね

ゆか

そうです!!

助けてくれたって真田さんから聞きました。ありがとうございました

ゆか

いえいえ!でも、覚えてないのに、よく私って分かりましたね

さっきよし・・・いや、今の会話の感じでなんとなく

ゆか

そうですか!こんなところで会えるなんて偶然ですね!

・・・とりあえず病院行きましょう

ゆか

大丈夫です、帰って消毒します

じゃあタクシー呼びますよ

ゆか

タクシーだとかなり距離があるので

え?遠いんですか?

ゆか

はい。山中線で12駅です

・・遠いですね

よしの・・・嘘ついたな。

よしの

うちすぐそこなんで、って連れ込みな!

!!!

ゆか

夏なのに台風のせいでしょうか、急に寒いですね・・・

よしの

はやーく!

あー、うちすぐそこなんで、どうぞ

ゆか

いいんですか・・?

タクシーもなかなか来ないですし、家で呼んで待ちましょう

ゆか

ありがとうございます!

俺はしかたなく、歩きづらい彼女を支えるべく手を握って部屋に入れた。

消毒をして、温かいコーヒーを出した。

よしの

やったね!

・・・・

よしの

私がいると寒いから、散歩してくる!

・・・・

よしのはそう言って彼女の横の窓をすり抜けて行った。

面倒くさいと思った。早くタクシーが来てほしい。

ゆか

あのー?

はい?

ゆか

さっきどうしてタオル持ってたんですか?

それはよしの・・いや、コンビニに行くのに濡れるから

ゆか

こんな天気の中コンビニに?

なんか小腹がすいてしまって

ゆか

そうだったんですね、邪魔してしまってごめんなさい

大丈夫です

ゆか

でも、通ったのが昌さんでよかったです!

はあ

ゆか

変なこと言ってすみません!

・・・コーヒーもう一杯入れてきますね

部屋に入れたくて入れたんじゃない。

怪我したとはいえ、簡単に男の部屋に入るなんて、だらしない女だと思った。

ゆか

この写真、この人が亡くなられた奥

勝手に触らないでください!

俺は物凄い勢いで、彼女から写真立てを取り返した。

ゆか

・・・ごめんなさい・・・

・・俺こそすみません

冷たい空気が流れた。どこに居るのかは分からないが、よしのは居る。

ゆか

あの、私、

プルルルル

ゆか

タクシー来たみたいです

下まで送ります

ゆか

ありがとうございました

いいえ

ゆか

あの・・高山のバーでまた会えますか?

日曜以外ならたまに行きますよ

ゆか

そうですか・・・では、また。
今日はありがとうございました

気をつけて

無事にタクシーを送り出すと、いつもよりも冷たい空気が流れた。

冷たいというより、真冬のような冷気。

よしの

何あの態度

なにが?

よしの

外ヅラいいくせに今日は冷たいんだね

嘘ついたくせによく言うよ

よしの

それはごめん。でもきっかけを掴んでほしくて

好きでもない女なんか家に入れたくない。大体、好きでもない男の部屋に入るなんてビッチだよ

よしの

好きでもない男の家に入るわけないじゃん?

はぁ?

よしの

好きでもない飲んだくれを介抱するわけないじゃん?

俺を好きだって言いたいの?

よしの

昌のことが男として気になってるから、バーで会えるか聞いたんだよ

俺は!あの子が気にならない!
俺はよしの

よしの

言っちゃダメって約束!!!

・・・・

よしの

私達も最初はそうだったよ?

・・・・

よしの

私が一目惚れして、会えるか毎日聞いて、いつも待ってた。
酔った昌を誘ってエッチしちゃったね。
でも過去に女に騙されたから、昌は付き合うことをすごく怖かってた。
でもずっと待ってた私に、勇気を出して告白してくれた

あれは、最初からよしのが気になってたんだよ

よしの

嘘をついてごめん。すぐに誰かと付き合えなんて言わない

・・・じゃあ

よしの

フラれるか事故にあうか、死別するかなんて誰にもわからない。でも、出会う勇気も、出会うことの幸せもなくさないでほしいの

じゃあなんでさっき部屋に来たの?

よしの

昌があの子に冷たいから何とかしようと

嘘だ、嫉妬したんだろ?

よしの

違うよ!

タクシーまで支えたことも、嫉妬したからあんなに冷気を出したんだろ!!

よしの

違う!冷気って何?私は何もしてない!

出会いがどうのって、よしのは本当は俺を試して見張っていたいだけなんだよ

よしの

違う!私が死んだ時の言葉を思い出して!

もういいよ、好きなだけ見張れよ!!

よしの

・・・・

冷気が消えて、よしのがどこかに行ったと分かった。

いつもそうだった。

俺がキレるとよしのはいつも逃げた。

言い合いになるか逃げられるかのどちらかで、

逃げそうになるといつもよしのの腕を掴んで止めた。

掴み損ねた時は追いかけた。

今は、腕を掴むどころか、どこにいるかも分からない。

結局、一晩じゅう待ったがよしのは戻らなかった。

明日は日曜日だ。

ずっとここで待っていよう。

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