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岩泉くん選ぶ所神がかってる✨💕 どうしてそんなに語彙力があるのか...
岩お母ちゃんはスポドリって感じするわ〜😚 さーむら…羨ましいぞオイ!( シンプルに好き💕 語彙力の塊すぎる😖🫰
ある日の夏合宿も終わりに近づいたある夜のこと
ここ最近、ずっと抱えていた小さなモヤモヤが落ち着かず、私はひっそりと部屋から抜け出した
静かになれるところを探していると、自動販売機の横から外に続く階段があるのを見つけ、そこに座り込んだ
昼間は暑くて外に出るなんて以ての外だが、この時間は夜風が涼しくて気持ちいい
暗くなった夜空を見上げて、ぼーっとしていると、突然声をかけられた
肩を震わせてゆっくりと振り向くと、そこにいたのは岩泉さんだった
岩泉一.
岩泉さんは私の隣に座り、手に持っていた紙パックのジュースを差し出した
岩泉一.
カルピスとりんごジュース
わざわざ選んで買ってきてくれたのだろうか
岩泉さんとは不釣り合いな2つに思わず笑みが溢れる
私はりんごジュースを受け取って、隣の岩泉さんを盗み見た
岩泉さんとは合宿で顔を合わせることはあったが、話したことはあまりない
ましてや2人きりで話したことなんてあったのだろうか
岩泉さんがわざわざ声をかけてくれるなんて、副主将をしている責任感の強さと少し面倒くさそうな及川さんを手懐けている世話好きな性格からだろうか
岩泉一.
暫く何も言わずに隣でカルピスを飲んでいた岩泉さんだったが、突然密かに観察していた私の方を向いて首を傾げた
岩泉一.
岩泉さんに聞かれて私は俯く
大地くんとは幼馴染だった
小さい頃からずっと一緒にバレーをやってきた
ずっと一緒だと思っていた
"引退"その言葉を最近よく耳にするようになって、それは叶わないことだと気づかされた
いつか同じ道を歩いていくことは難しくなるとは分かっていた
だけど、それがこんなにも早く訪れるとは思わなかった
大地くんがバレーをやっていたからバレーを始めた
中学校に入学しても、高校に入学しても、大地くんがいたからバレー部に入った
私にとって大地くんは道標で、大地くんがいたから楽しく過ごせたし、いつも大地くんは隣にいてくれた
これまでも
これからも
そう思っていたのに、手を離さなければならない日がもう目の前に迫っている
大地くんが隣からいなくなったら、手を引っ張ってくれなくなったら、私はどうしたらいいのだろう
どうしてこんな言葉を零してしまったのか
他校生だからなのか、岩泉さんだからなのか
特別仲がいいわけでもない私から、いきなりこんなこと言われたら困るよなと、私は慌てて言葉を続ける
マネージャーなんですけどねと茶化すように笑って紛らわせたつもりだったけど、岩泉さんは真面目な顔のまま頷いた
岩泉一.
岩泉一.
岩泉さんが誰を思い浮かべているのかなんとなく分かった
おそらく及川さん
一見、及川さんが岩泉さんを頼っているように見えるが、実は頼っているのは岩泉さんの方なのではないかと私は思っている
岩泉一.
私がそう考えていると、いつの間にか岩泉さんは目の前にいた
岩泉一.
どうしてだろう
その言葉を聞いたら、胸でくすぶっていたモヤモヤはどこかへ消え、代わりにドキドキと胸が高鳴り始める
持っていた冷たいりんごジュースはいつの間にか温かくなっていた_______
fin.