携帯は真夜中に囁く(完結)

AM13:26 第1月曜日

ガタンガタン...

ガタンガタン...

俺、荒木田 蘇芳(あらきだ すおう) 21才、このご時世でテレワークになる前からだけど、惰性で乗り切る日々を過ごしていたりする。

毎月、第1月曜日の午前中は、俺らがいるA班の顔合わせがてら午前中出勤で、 午後はB班が出勤し、蜜を避けるべく時間をずらしてるんだとさ。

ワイヤレスイヤホンで受電する。 あ、いくら乗客少ないゆーても、ちゃんと小声で話してるからな!! ( - ̀ω -́ )ｷﾘｯ

マナーは大事だし、今のマイクは感度いいし、ノイズ少ないし。

この通話してきたのは、なんと!! 携帯のcyan(シアン) ある一件から自我を持つようになった のアシスタントAI機能。

本当は...鷹司 詩音(たかつかさ しおん) て、女の子。 cyan、詩音と偶然か？必然か似たような名前で...

生きてれいば、俺達と同じ21才。 体はもう土に還り、魂は天国か来世か 分からないけど、多分成仏して、

今は、残留思念っぽいもの？が、携帯のアシスタント機能として、蘇ったってわけ。 嘘みたいな本当の話ってやつよ。

黙って傍から聞いてたら、普通にワイヤレスイヤホンで話してるみたいだろ？

本当なんやかんや言っても、cyan様様なわけ。

車掌さん方、声絶対作ってますよね？ あの独特さ好きなんだけど、いつも気になる𐤔 そんな、ツッコミ入れたくなるアナウンスを聞きつつ、俺は列車を乗り換えた。

乗り継ぎに乗り継ぎ...ある場所に向かっている。 この月一の出勤を利用してね。 一応世間はまだ、不要不急だし。

しっかし、今日はいい天気だなぁ～ 会社で、長～い退屈な朝礼聞いてる時 寝そうになって、cyanのマナーモードに助かったっけ。

にしても、2時間強かけて電車、更に路線バスに乗り換えは中々しんどい。 今日は、たまたま時刻が合ったからいいけど。

あ、名前丁度出たし、触れとくな。

遠野 菖蒲(とおの あやめ)同い年。 お互いの両親が、そもそも親族みたいな付き合いしてるし、0才からの腐れ縁だ。 下に年子の長女、次男がいて見るからに、The長男を絵に書いたよーな奴。

文武両道、顔も中身も男前で...と褒めて語ると俺が凹むから辞めよう... てか曲者なんだよ、コイツは!! その仏頂面とたまにする笑顔でシレッと女性の心鷲掴みしやがるし、

ここ何ヶ月も、cyan絡みで不可思議現象体験してんだけど、 情報手に入れる為グレーな嘘も、サラりとしたしな。

菖蒲... 恐ろしい子!!

そそ、俺が住んでる市内から、今向かっている先はさ、 ほぼ県境に位置してる場所で、標高があるから今6月だけど、少し肌寒いんだわ。

バス停を降り、バキバキに固まった体を伸ばしながら、cyanに声をかける。

バス停から、ほぼ一本道だが高い木々に両端にそびえ立ってて、普段の喧騒から隔離されてる、不思議な場所だ。

cyanが珍しく歯切れが悪いだろ？ 俺も、まぁ...複雑な気分ではあるんだけど...

その... cyanの... いや、元詩音の墓がある協会だから。

cyanの為には、しばらく気持ち(機械に気持ちが有る無しを問うなよ？)が 落ち着いたらの方が...思ったんだけど

だけど...

だけど💦

＊1番来たくない 理由の 元凶が現れた❗❗

ついゲームの敵モンスターが現れた時のコメントみたいなの、しちまった。

さっきから、満面の笑みと子犬がシッポ千切れんばかりに、 両手を振るが如くアピっている、あの人物にも嫌だけど触れるわ.......。

この敵モン...もといこの方は 平木 団十郎(ひらき だんじゅうろう) 30才...歌舞伎役者みたいな、すげぇ名前だよな。 最初、俺、え？て、聞き返したもん。

そんな凄い名前負けする...童顔 で、果たして括っていいんだろうか？ 俺達より年下に、いや高校生でも通る気さえするし、こんなメガネが似合うのは、

児童書、賢者の本で実写化し大ブレイクした、スローリー·タッパー役の子か 平木さんかだわ!!

この人···前は、こんなんじゃなかったのよ？ 失礼ながら、もう1回大事だから書くけど前は、こんなんじゃなかった!!!!

実は、cyanの元本体が入院していた時の、担当医なんだ。 仕事への情熱と、その真っ直ぐな性格は本当、賞賛に値してね。

cyan一家を不幸に叩き込んだ親戚から、植物状態だったcyanを守れず葬儀にまでされてしまい、 そんな不甲斐ない、自分1番許せず、 cyanの墓守しながら、この協会で働けるよう頑張ったらしい。

医者から神父への転職は、まぁ珍しいし、中々出来る事じゃないけれども···。

更に、ご遺体になってしまっている cyanには、もう会えないと思っていたのに あのおかしい現象に巻き込まれて、地縛霊が浄化される様子を見て 俺の携帯に宿り、今も生きて？幽霊退治するcyanを目にし···

ダガが 外れちゃった みたい!!

礼拝堂は厳かで神秘的な雰囲気だが、平木さんが普段いる事務所は、簡易的で、普通の事務所て感じだ。

わりぃ。cyan。 いい加減、面倒くせぇ💦

それに、今日に限った話じゃなく、 あの一件から4ヶ月なるけど、今日入れて3回中3回自分で煎れてるし。

勝手知ったる他人の家～てね。 正直、平木さんの煎れる珈琲はヤバくて。 何をどーすればあんな泥水みたいな、代物が、出来るのか不思議だしな。

cyanの怒りが冷めるよーに祈りつつ 珈琲をゆっくり、飲む事にした。

実は、今までネットでお神酒を購入してたんだけど、平木さんから待った!!が入って···

アルコールが生前体質で合わない霊がいるかもしれないからって··· 聖水を分けてくれる事になったんだ。 てか、そんなデリケートな奴が彷徨うか？

まぁ、俺にぶっかけられた時、目にしみなくていいし、服が酒臭くないのは助かるけど。

遠路はるばるこの教会に来てるのは、この為でもあるわけ。 cyanを人柱、いや機械柱か？にしてね。