一覧ページ

遠く離れた世界の君へ --

第4話 - 吸血と記憶

200

2023年07月17日

#srmf

#nmmn

#utit

かえで🍁✒️

〜彼方 side〜

真冬

……実はボク……吸血鬼、なんですよね

彼方

は……？

吸血鬼……って、まさか、人の血を吸う、あの……？

真冬

あっ、で、でも、血を吸った事は無いです！

真冬

こうやって関わった人も、貴方が初めてですし……！

慌てた様に弁明し出す相川さん

もしかして、俺が怖がると思った？

真冬

その……ほんのちょっとの間だけで、いいんですけど……。

真冬

……ボクを、拾ってくれませんか……？

拾う……って、俺がこの人を？

彼方

えっと……

突然の要求に困惑して、中々答えを出せない

まず、吸血鬼だっていう事とかもよく分からないし……

真冬

……あっ、す、すみません！　急にこんな変な話しちゃって……！

俺が答えずにいると、また突然相川さんが謝ってきた

真冬

吸血鬼とか、本当意味分かんないですよね。すみません、この話は忘れて下さい

……忘れろと言われても、一度助けを求められたら、そう簡単に無かったことにできないのが俺だ

彼方

帰る場所、無いんですか？

真冬

え……？　は、はい……

彼方

なら、その場所が見つかるまで、ここにいて良いですよ。

彼方

一人部屋だから、少し狭いかもしれないですけど

吸血鬼なんて突拍子もない話なのに、何故か、他人事のようには思えなかった

真冬

そ、そんな、でもっ……！

彼方

人の善意は無碍にするようなもんじゃないですよ

少し意地悪だけど、こうでも言わないと、謙虚なこの“ヒト”は断るだろうと思った

真冬

……ボク、何も出来ないですし、本当に居候になっちゃいます。

真冬

……それでも、良いですか？

もしかして、折れてくれてる？

彼方

良いですよ。最初に言ってきたのはそっちだし、それに……。

彼方

貴方が此処にいる事に意味があるから

……自分でも、どうしてこんな事を言ったのかは分からないけど

真冬

……！

真冬

じゃあ、その……よ、よろしく、お願いします……！

辿々しく、だけどしっかり俺の目を見て、そう言った相川さん

彼方

こちらこそ

それに応える様に、俺も相手の赤い眼を見て言った

ピンポーン……

彼方

……？　……あ、唐揚げだ

真冬

唐揚げ……？？

彼方

あ〜、さっき頼んだんです。ちょっと出てきますね

玄関で2人分の唐揚げ弁当を受け取って、リビングへと向かう

その途中、俺の部屋から不思議そうに廊下から覗いていた相川さんも呼んだ

真冬

えっと……？

彼方

あ、相川さんって食べられない物とかありますか？

真冬

食べれない物……にんにくと豚肉くらいです

本とかによく載ってるけど、やっぱり吸血鬼はにんにくが苦手なんだろうか

彼方

（けど、豚肉苦手は聞いた事ないな……）

真冬

あっ、でも、豚肉はブロックとか大きくなければ食べられますし、にんにくもそこまで量が多くなければ大丈夫ですよ

あれ、単に好き嫌いの話？

彼方

吸血鬼って、にんにくが苦手っていうの、聞くんですけど……

真冬

そうですか？　ボクは普通に餃子とか食べられますし、ラーメンは大好きですよ

彼方

へぇ〜……？

……ちょっとした好奇心が働いて、相川さんの目の前で、指を十字にして見せてみる

真冬

……？　何ですか？

彼方

あ〜、いや……。

彼方

……すみません、何でもないです……

にんにくも十字架も効かない……

意外と言うか、俺の中の吸血鬼のイメージが壊れたと言うか……

彼方

（……いや、ちょっと待て？）

かなり失礼だけど、この人には餃子だとかラーメンだとか、そう言う物を食べられる様な何かは無いはず

彼方

（なのに、何でこんなにすらすら食べ物の好き嫌いを話せるんだ……？）

真冬

……せさん。

真冬

…………一ノ瀬さん？

彼方

……あっ、はい？

相川さんに呼ばれていることに気づいて、咄嗟に返事をする

真冬

あ、いや、お弁当、冷めないうちに食べちゃいましょうって……

彼方

あ〜、そうですね。そろそろ食べますか

リビングのソファに並んで座って、ちゃんと手を合わせてから、それぞれ弁当を食べ始める

真冬

……っ！　美味しい……！

どれほどお腹が空いていたのか、美味しそうに唐揚げを頬張る彼

口元をよく見ると、確かに牙らしきものが生えているのが見えた

彼方

（吸血鬼なのは、間違いないと思うけど……）

こんなにすんなりと“吸血鬼”と言う存在を認めている俺も俺だけど、それにしては、相川さんはやけに人間味があるように感じる

彼方

（……あ、そういや、吸血鬼なら血吸うんだよな……？）

この人は血を飲んだことがないって言ってたけど、さっき倒れた原因が、もしそれだったなら……

彼方

あの……

真冬

はい？

彼方

やっぱり吸血鬼って、血飲んだ方が良いとかあるんですか？

彼方

ほら、さっき倒れてたし……

真冬

あ〜……。

真冬

……まぁ、一応そう……というか……

何故か歯切れが悪い

真冬

……吸血鬼は、不老不死で……でも空腹は、生き物の血じゃないと、満たされないんですよね……。

真冬

だから……このお弁当も……

彼方

（あ〜、なるほど……）

食べ物をもらった手前、言いにくかっただけなのか

彼方

全然気にしなくて良いですよ。じゃあ……あ、俺の血は？

真冬

えっ！？　い、いやでも……！！

彼方

でも？

真冬

でも……い、痛い、ですよ……？

彼方

こっちも永遠にお腹鳴らされてたら困りますから

真冬

うっ……そ、それは……

少し冗談っぽく言ったつもりだったけど、真に受けられてしまったらしい

真冬

……ほ、ほんとに良いんですか……？

彼方

はい。……あ、もしかして吸われたら同じ吸血鬼になるとかありますか？

真冬

えっ？　い、いや、人間の吸血鬼化は別に方法がありますけど……

彼方

じゃあ大丈夫ですよ。今までずっと飲めてなかったんですよね？

着ていたシャツのボタンを幾つか外して、飲めと言う風に首元を出す

真冬

え、ちょっ……！？

真冬

〜っ……じゃあ……そのっ……い、いただきます……！

〜真冬 side〜

初めてなのもあって、恐る恐る、一ノ瀬さんの首元に噛み付く

真冬

（出来るだけ、痛くない様にっ……）

ガリッ

彼方

……っ……！

一ノ瀬さんの肩がピクリと跳ねたのを感じて、慌てて離れる

真冬

す、すみませんっ！　大丈夫ですか……！？

彼方

っ平気ですよ、ちょっとびっくりしただけなんで

真冬

そ、そうですか……？

彼方

俺の事は気にしないで。ほら、血垂れてますよ

真冬

あ……し、失礼しますっ……

垂れていた血を、舌で舐める様に掬う

また肩が跳ねたけど、彼の言う通り、気にしないことにさせてもらった

真冬

っ……

真冬

（……美味しい……）

人間の血が一番美味しいって聞いてたけど、本当にその通りだ

まさか、自分の血を飲んで……？

そんなに不味いなら、僕の血を……！！

お願いだから、無理しないで──

真冬

──っ……！？

突然妙な感覚がして、咄嗟に離れる

彼方

……？　どうかしました？

真冬

あ、いや……えと、ご馳走様、でした

……気のせい、だよね

真冬

（……でも……。）

真冬

（さっきの、あの“記憶”は……？）

遠く離れた世界の君へ --

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

200

8件

ん〜想像してた吸血鬼とはこれは違いますね〜wニンニクも十字架も効かなくラーメンや餃子も食べれるw どんな吸血鬼なんだw あのまふくんの記憶は一体…？続き楽しみにしています！

おわぁあああ…き…吸血シーン… 吸血鬼(まふくん)はニンニクとか十字架とか効かない(？)吸血鬼なのか？そらるさんも言ってたけどまふくんは人間味のある吸血鬼だねwでも吸ってる途中のあの記憶は？？？まだまだ謎が多いな！続き楽しみにしています！

拾った相手が吸血鬼だと知っても尚、『ヒト』と表すところから、彼方さんの優しさが垣間見えますね… 吸血鬼は全員にんにくや十字架が苦手な訳じゃないんですね！彼方さんの言っていたように、好き嫌いがすらすら出てくるのは何故…？そして初の吸血…だけど、あの記憶は一体何なのだろうか…個人的に『自分の血』ってところが気になります🤔 素敵な作品ありがとうございます！続き楽しみにしております♪

かえで🍁✒️

プロフィール