「おーい!!」
茶髪の頭をした男が
こちらに向かって、手を振りながら 走ってきていた。
真琴
え、え!誰!?
真琴
怖っ!
キリンさん
知らない方ですね…
男はどんどん近づいてきた。
真琴
これ、逃げた方が
いいんじゃ…
いいんじゃ…
そう言った直後
茶髪の男
よお!無視すんなよー
真琴
……
男に、ついに話しかけられた。
茶髪の男
さっき会ったじゃんー
キリンさん
…覚えが無いですが
茶髪の男
ひっでーなぁ!
茶髪の男
俺だよ俺!
真琴
だから誰!
茶髪の男
ま、分かんなくて当然かぁ
男はニヤリと笑った。
茶髪の男
さっき会った、
茶髪の男
あのぶた頭だよ
真琴
え?
キリンさん
は?
2人の間抜けな声が、同時に重なった
茶髪の男
いやー、俺、記憶を
取り戻したんだよね
取り戻したんだよね
茶髪の男
俺さ、何故か母親の
名前だけ覚えてて
名前だけ覚えてて
茶髪の男
生者の世界が見れる部屋で
茶髪の男
母親の名前を調べて、
今母親が何やってんのか
見たんだよ
今母親が何やってんのか
見たんだよ
真琴
……
真琴
生者の世界が
見れる部屋って?
見れる部屋って?
コソっと、キリンさんに聞いた。
キリンさん
前に行った、「小さなこと
ならなんでも願いが叶う
部屋」があるところと
ならなんでも願いが叶う
部屋」があるところと
キリンさん
同じ建物の中に
ある部屋ですよ
ある部屋ですよ
確かに、あの建物にはまだ部屋が いくつかあった。
キリンさん
その部屋には、パソコンが
置いてあるんです
置いてあるんです
キリンさん
それに、今何をして
いるか見たい人の名前を
入力すると
いるか見たい人の名前を
入力すると
キリンさん
その人のやっていることを
映像で見れるんですよ
映像で見れるんですよ
真琴
へぇー…
真琴
凄いところですね
茶髪の男
で、映像を見たら、
だんだん記憶を
取り戻してきて
だんだん記憶を
取り戻してきて
茶髪の男
俺の性格も、名前も全部
茶髪の男
思い出したんだ
真琴
……
真琴
そうだったんですね…
真琴
なんか、まだ信じ
られません
られません
キリンさん
そういえば
キリンさん
あなた、前に会ったときに
キリンさん
生前嫌なことがあって
記憶を忘れたかったのかも
と言っていましたよね?
記憶を忘れたかったのかも
と言っていましたよね?
キリンさん
それは、大丈夫だったん
ですか?
ですか?
茶髪の男
あー、そんなこと
言ってたな
言ってたな
茶髪の男
全然、嫌なことなんて
無かったよ
無かったよ
茶髪の男
ふつーの家庭だし、
みんな仲良いし
みんな仲良いし
茶髪の男
俺、豚だったとき、
なんだか変に
考えすぎてたな
なんだか変に
考えすぎてたな
キリンさん
…そうですか
キリンさん
記憶が戻って、
良かったですね
良かったですね
真琴
うん!良かった
ですね!
ですね!
茶髪の男
ありがとーございます!
茶髪の男
キリン頭の方も、
茶髪の男
家族の名前覚えてたら
調べてみるといいっすよ!
調べてみるといいっすよ!
茶髪の男
それじゃ!
男がこちらに背を向ける。
真琴
さようならー!
キリンさん
さようなら!
姿が見えなくなるまで、手を振って 見送った。
キリンさん
驚きましたねー…
真琴
本当にびっくりしました!
真琴
てか、あの方性格変わり
すぎじゃないですか!?
すぎじゃないですか!?
真琴
ぶた頭の時は、めっちゃ頭
良さそうな感じでしたけど
良さそうな感じでしたけど
真琴
さっきは凄いチャラチャラ
してましたよ!
してましたよ!
キリンさん
…これは、私の仮説ですが
キリンさん
さっき、あの男性は
〝性格も思い出した〟と
言っていましたよね
〝性格も思い出した〟と
言っていましたよね
真琴
はい
キリンさん
記憶をなくした人は、
性格も忘れているんです
性格も忘れているんです
キリンさん
でも、その人の仮の
性格と顔が無ければ
不便ですよね?
性格と顔が無ければ
不便ですよね?
真琴
そうですね…
〝その人〟が形作れない
〝その人〟が形作れない
キリンさん
だから、ランダムで
動物の顔を振り分けて
動物の顔を振り分けて
キリンさん
その振り分けられた動物の
性格を、その人の性格にす
るんじゃないかと思います
性格を、その人の性格にす
るんじゃないかと思います
真琴
成る程…!
キリンさん
あの男性の思い出に、
キリンさん
豚が関連していたとは
思いませんでしたし
思いませんでしたし
キリンさん
豚は、頭が良いんです
真琴
え、凄い意外です
キリンさん
だから、あの男性は
ぶた頭のとき
ぶた頭のとき
キリンさん
頭が良さそうだった
のではないでしょうか
のではないでしょうか
キリンさん
まぁ、合っているか
どうかは分かりませんが
どうかは分かりませんが
キリンさん
真実は、神のみぞ
知ることでしょう
知ることでしょう
真琴
凄い推理力です!!
真琴
キリンさん頭良いん
ですね!
ですね!
キリンさん
ありがとうございます
キリンさん
本当の私が、頭が
良かったのかは
分かりませんがね…
良かったのかは
分かりませんがね…
真琴
ちなみに、キリンの
性格はどんなのか
分かりますか?
性格はどんなのか
分かりますか?
キリンさん
キリンの性格は、
穏やかだったと思います
穏やかだったと思います
真琴
まんまキリンさんの
性格じゃないですか!
性格じゃないですか!
真琴
キリンさんの仮説、
絶対合ってますよ!
絶対合ってますよ!
キリンさん
そうでしょうか
キリンさん
本当の私は、どんな
性格なんでしょうかね…
性格なんでしょうかね…
キリンさんは、遠くを見つめるような 顔つきをしていた。
真琴
記憶を取り戻して
みせますって!
みせますって!
真琴
ぜっ、たい…
真琴
あれ…?
急に視界が眩んだ。
真っ青な空が目に映る。
真琴
(あれ…?これって私)
真琴
(後ろに倒れて
いってる?)
いってる?)
キリンさん
真琴さん!!
キリンさんの叫び声を最後に、
私は目を閉じた。







