キリンさん
とりあえず、
町のなかを歩いて
町のなかを歩いて
キリンさん
お兄さんを探しましょうか
真琴
うん!
死後の世界には
たくさんの人が 町を行き交っていた。
町は、地獄みたいなとこ なんかじゃなくて、
幻想的な、素敵なところだった。
真琴
やっぱ、イメージと
違うなぁ
違うなぁ
真琴
そういえば
真琴
キリンさんみたいに顔が
動物の人って
動物の人って
真琴
そんなにいないですよね
真琴
ほとんど人
真琴
あなたは、何で
動物の顔なんですか?
動物の顔なんですか?
キリンさんに、そう 問いかける。
真琴
あっ!
真琴
まさか生前きりんだった
なんて言いませんよね⁉︎
なんて言いませんよね⁉︎
キリンさん
はは、違いますよ
キリンさんは困ったように 笑った。
キリンさん
私は、自分を
忘れてしまったんです
忘れてしまったんです
キリンさん
誰にも名前を呼ばれず、
キリンさん
自分の顔を見ない日々を
過ごしていたから
過ごしていたから
キリンさん
ここは、朝も夜も
こないんです
こないんです
キリンさん
けれど、時間はとても
早く流れている
早く流れている
キリンさん
その時間の流れに
伴って、
伴って、
キリンさん
いつしか自分の
記憶を
記憶を
キリンさん
なくしてしまったんです
キリンさん
だから、名前も覚えて
いなかったんですよ
いなかったんですよ
真琴
………
真琴
そっか…
真琴
じゃあ、お兄ちゃんを
探すついでに
探すついでに
真琴
キリンさんの記憶を
探すのも
探すのも
真琴
手伝ってあげる!
キリンさん
!
キリンさん
……
キリンさん
ありがとうございます
真琴
うん!
その時、キリンさんは
私を見て、目を見張った。
キリンさん
ま、真琴さん!
真琴
え?どしたんですか
キリンさん
あなたの体は、
少し透けています
少し透けています
キリンさん
ということは、
キリンさん
あなたはまだ完全に
死んではいない
死んではいない
キリンさん
あなたはまだ、
生死の境をさまよっている
状態です
生死の境をさまよっている
状態です
キリンさん
今なら自分の世界に
戻ることができます
戻ることができます
キリンさん
それでも直、
キリンさん
お兄さんを探すと
いいますか?
いいますか?
真琴
…うん
私は笑ってそう言った。
キリンさん
…そうですか
真琴
さ、お兄ちゃんを
探しましょう
探しましょう
キリンさん
…はい
キリンさん
そうですね
人混みの町を、 また2人で歩き出す。