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まに
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#ホラー
名瀬口にぼし
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#タグ?それならついさっきサイモンと一緒にたべたよ?
白嵐
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コメント
4件
うわあ…第38話、読み応えがありました。那柚さんの「子どもを産んではならない」という直感の描写がすごく胸に刺さりました。医師に「難しい」と言われた時からずっと、自分の体と折り合いをつけてきたんだなって。そこに冬樹さんの「一緒に解決しよう」という優しさが重なって、でも那柚さんは「怖い」って正直に言える関係が尊い…。バイオテクノロジーで子どもを授かる決断、倫理的な葛藤も含めてすごく生々しくて、現実の医療の進歩ともリンクするテーマだなと思いました。夏樹くん、どんな子に育つんだろう。続きがすごく気になります!
2014年5月
彼はパジャマのボタンをとめながら
わたしに話しかけた
冬樹
那柚
冬樹
冬樹
冬樹
那柚
わたしは子どもなんてほしくなかった
それがどんな便利な技術を利用して
行われるものであったとしても
ロキタンスキー症候群
それは5000人に1人の確率で見つかる 稀な病気である
高校3年生になっても
わたしには初潮が来なかった
まるで人が突然死ぬように
突然来るものだと思っていた
しかしいつになっても
その時期が訪れることはなかった
18歳になってまもなく
わたしは産婦人科に出向き
身体を調べてもらった
そこでこの「ロキタンスキー症候群」であることを知った
わたしには膣の一部と
子宮が欠損していたのだ
医者はすぐにこう言った
「ご自身の妊娠は難しいかもしれませんが
膣を造形することはできます」
わたしの答えは「ノー」だった
子どもを宿せない身体の主であることは
病院を訪れる前から予感していたし
とてつもなく嫌な感じがするのだ
女性器の入り口から金具が挿入されるのを 想像したからだけではない
わたしは無宗教だが
その時直感的にこう判断を下した
「なぜわたしの子宮と膣がない?
答えはシンプルだ
生まれてきた時そうなるようにあらかじめ 決まっていたから
ではなぜそのような取り決めがなされたのか?
これも単純だ
わたしに簡単に子どもを産ませるわけにはいかない
つまりお前は産んではならない
未来からそう宣告されたのだ」
わたしは重い足取りで病院をあとにするのではなく
むしろすっきりとした心持ちで歩きだした
それから数年が経って
愛すべき人を見つけた
それでも子どもを持とうとは思わなかった
わたしには
彼の愛だけでよかった
それだけで問題ない
それに
一緒になってからまだ数年
まだふたりの時間を大切にしたかった
だが今目の前にいる彼は
子どもを作ろうと提案している
わたしは応じるべきなのだろうか?
医師の顔が記憶の中で形成される
もし無理に膣や子宮を作ろうものなら
ふたたび罰が降りかかってくるに違いない
わたしは彼と目を合わせる
そのまま数秒おいて
彼にこう告げた
那柚
那柚
冬樹
彼は訝しむような 悲しいような表情を見せたが
また優しく微笑みかけて
冬樹
冬樹
そう語りかけた
わたしは彼の顔から視線を外し
ベッドの一点を見つめた
那柚
那柚
那柚
冬樹
冬樹
冬樹
彼は真摯な顔を
わたしの顔の前にぐっと突き出した
わたしの親も数年前に亡くなってしまったから
わたしの理解者は彼だけだった
無論
子宮がないことも知っている
那柚
那柚
那柚
那柚
視線を腹部に向ける
それは
外見だけでは正常な体と変わりがない
臀部だった
冬樹
那柚
那柚
那柚
那柚
那柚
那柚
冬樹
彼はあくまでも
きりっとした笑顔を崩さない
那柚
いつまでも悲観的なわたしを慰めるように
彼は手のひらを優しくわたしの頭の上に乗せた
冬樹
冬樹
冬樹
彼は平然とした表情でそう言った
バイオテクノロジーは
遺伝子操作などの科学に基づき
それを治療 あるいは農業に活かす
最先端の技術だった
加えて
今 公にはされていないが
クローン生物の研究
培養も実験段階として行われているらしい
わたしはそれを利用して
彼との間に子どもを設けることを 決断した
慎重を期したカンファレンスの元に
計画はしかし着実に進んでいった
ただ デメリットは存在する
「胚」の技術を用いて細胞を形成するため
成長の速度をコントロールできるものの
「劣性遺伝」が発生する可能性が高い
何らかの障害をもって生まれたり
寿命が短くなったりする可能性もある
ただし任意の年齢から育児を始めることができるという 特権もあった
もちろん 普通の子どもとの知能のキャリアの差は
「抹消」された年数分だけかけ離れる
しかし 教育の進度を速くしてやれば
それだけで普通の人間に追いつくことができるという
これは従来の「培養」では考えられないことだが
高機能の脳を生成し
それを生まれる子どもの頭蓋に埋めることによって
様々な知識を効率よく習得できる
学習のサポートは 脳の状態がどうであれ完全に保証する
そんなことを 研究員たちは頷きながら熱弁していた
わたしは迷わず
バイオテクノロジーと手を打った
「倫理に背いた」という罪の意識がないわけではない
ただ わたし自身の存在が倫理に背いているという
歪曲した感情を持ち合わせていたのだ
生まれてくる子どもを5歳にしてもらうようお願いした
ある程度成長していて
早い成長も望める子がいい
今にして思えば身勝手な希望だったが そう伝えた
性別は男の子
そして 「彼に似た子どもを」と伝えた
名前は——
夏樹