しかも、仕掛けられているストーリーは、1冊は4つ、そしてもう1冊が3つ。
一宮
(ここまで来ると逆に金太郎が気になるな。だが、金太郎の物語の中で、3つも4つもストーリーを設定できるだろうか)
一宮
(そう考えると、やはりドボンの可能性が高くて怖い)
一宮
(逆にバリエーションのある残り2冊については、どちらが4つ仕掛けられていてもおかしくない。もちろん、3つのストーリーだって簡単に仕掛けることができるだろう)
十日市
残り3冊か……そろそろドボンが怖くなってくるねー。
十日市はそう言うが、まだどこか余裕のようなものが見てとれた。
次に繋げるためには、地雷原となっている他の2冊のいずれかを選ぶしかない。
それとも、この段階で金太郎にも仕掛けられるストーリーが3つ以上あると考え、あえて選んでくるか。
一宮
(もし、ここで十日市が切り抜けてしまったら、次の俺のターンは単純に2分の1になる)
一宮
(ドボンを引いたら一発アウトな状態で、悩みの種となる金太郎は残らないで欲しいとは思うが――)
一宮
(いや、実際のところ、どれを選んだってドボンの可能性はあるわけだし、そこまでおそれることはないか)
一宮
(むしろ残ってくれたら残ってくれたで、いっそのこと踏ん切りがつくかもしれない)
一宮
(逆にここで金太郎が残らなかったら迷ってしまいそうだ)
一宮
(ジャックと豆の木――シンデレラ。どちらも仕掛けられるストーリーは豊富だし、バリエーションも多い。その状況で、どちらをドボンにするかなんて、簡単には選べない)
十日市
それじゃあ、私の2冊目は――。
十日市
金太郎で。
一宮
(――行った!)
一宮
(ここであえての危険牌に手を伸ばすか)
一宮
(まぁ、十日市は俺とは違って、次も順番が回ってくる。そして、彼女に順番が回るということは、残されている1冊がドボンということになるわけで、ここでの選択によっては、もう勝敗が決まってしまう)
一宮
(ドボン、ここで十日市がドボンで決着が理想的な勝ち方)
二ツ木
……セーフだね。
二ツ木
絵本の中で一番良く分からないストーリー構成なのに、よく金太郎を攻めることができたね。
十日市
いや、意外とこういう話だからこそ、ドボンにはしないかなぁ――と思って。
一宮
(その言葉は、二ツ木の性格を考えた上の言葉か。確かに、ありそうなところにドボンを仕掛けないのは、二ツ木らしいと言えば二ツ木らしいが)
一宮
(ただ、ドボンは回避できても、地雷原は回避できていない。ここを回避できなければ意味がない)
一宮
(バリエーションは確実に少ない金太郎。二ツ木の仕掛けたストーリーを切り抜けることができるか)
一宮
(なんせ、最低でもストーリーは3つ以上仕掛けられているんだから……)
一宮
(待てよ、今現在の十日市のポイントは2ポイント。ということは――)
一宮
(ここを切り抜けられてしまうと最低でも5ポイントに到達してしまう)
一宮
ちょ、ちょっと確認させてくれ。
二ツ木
……どうした?
二ツ木
まだ十日市のターンは終わってないよ。
一宮
それでも、ひとつだけ確認させてくれ。
一宮
もしここで十日市が5ポイント先取したら、その時点で十日市の勝ちになるのか?
二ツ木
あー、ポイント先取で勝ちって言ったけど、これはあくまでも先攻と後攻が終わった時点での話ね。
二ツ木
つまり、ここで十日市が5ポイントに達しても、後攻の一宮も5ポイントに達していればドローになる。
一宮
(つまり、次で俺も地雷原を駆け抜けることができれば、同じタイミングで5ポイント獲得ということになってドローになるのか)
一宮
(となると、ドボンを十日市のターンに残しての勝利は、現時点で無くなってしまったわけか)
一宮
(ここで十日市が切り抜けてしまえば、良くてドローにしかならない。人のミスを頼るというのは良くないが、ここでミスってくれ)
一宮
(頼む、ここでストーリーを踏んでくれ)
二ツ木
十日市の考えるストーリーを教えて。
十日市
えっとねぇ……。
一宮
(頼む、ここでストーリーを踏んでくれ!)