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俺は"無能"やから
もうこの軍には必要あらへん存在やから
だからせめて
皆に嫌われても、俺の命を費やしてでも、皆を守らせて
ヂリリリリッ!!
けたたましいアラーム音がする。 脳にガンガンと響くそれは、酷く鬱陶しい。
薄らと目を開けた濃紺のボサついた髪の青年は、鳴り続けるそれを認識すると同時に荒々しく叩いて止めた。
音が鳴り止んだのを確認して、再び目を閉じた彼はもぞもぞと寝返りを打ち、二度寝を始めた。
鬱
彼が目を覚ましたのは、アラームから三十分後のことだった。
のそのそと亀にも負けない程ゆっくり体を起こしては、一つため息をつく。
鬱
鬱
そう呟いた彼の体は痣だらけだった。
時刻は9時半。登校完了時刻の8時を優に過ぎている。
彼は立派な遅刻だったが、しかし彼を咎める者は誰もいなかった。
靴箱を開けると、上履きに大量の画鋲が詰められていた。他にも、靴箱を埋めるほどのゴミ、紙くず。少し腐乱臭がする。
上履きを履く際に全部取り除いたと思ったが、どうやらまだ残っていたようで足に痛みが走る。
鬱
鬱
鬱
なんとかそれを抜いては、手当もせずに上履きを履き直し、ブラブラと校舎を彷徨い始めた。
1時限目終了のチャイムが、校舎に響き渡った。
彼こと鬱は、我々高等学園の2年部生徒であった。
高偏差値なことで知られる我々学園は入試の難易度は大学受験並と言われ、毎年何百人と受験するも受かるのはほんの数十名という超難関校だった。
しかし、その代わりに我々学園は校則がとても緩い。染髪可、私服登校可、スマホ、ゲーム類の持ち込み可、バイト可、など一般の高校ではありえないほどに校則が緩かった。 私立というのもあるが、一番は昨年生徒会長になったグルッペンの力が大きいだろう。
彼は演説にて、
グルッペン
そう高らかに宣言した彼は、圧倒的な票を勝ち取り見事生徒会長へと登りつめた。
彼の宣言通りすぐに殆どの校則が見直され、我々学園は個人の自由を尊重したフリーダムな高校としても人気を集めた。
そんな中で唯一、髪も染めず、制服を着崩し、さほど成績も良くなく、誰とも接さず、授業もろくに受けない没個性的な生徒が一人いた。
それが鬱だった。
彼はすぐに孤立した。 流れるようにいじめへと発展し、暴言、暴力は当たり前になった。
不登校に加え、授業態度も最悪だった為教師陣も手助けをすることは無かった。真面目に授業を受けないからこうなるのだぞと、教師陣も鬱を暴言で嬲った。
我々学園に、鬱の居場所は無かった。
鬱
とりあえずブラブラうろつくのも良いが、如何せん飽きる。
鬱
ふらりと、鬱は少し覚束無い足取りで屋上へ向かった。
本来は立ち入り禁止の屋上。厳重な鍵が掛けられているはずだが、鬱には関係ない。
鬱は何故か鍵開けが出来る。何となく、勘というか体に染み付いたような感じがして、するりと解錠出来てしまうのだ。
何故出来るのかなんて考えたらことはないけれど。
鬱
吹き付ける風が心地良い。夏場、特に日を遮るものは無く暑いことに変わりないのだが、どこか居心地が良い。
なんとなくフェンスのそばに腰掛ける。
この校舎は5階建て。飛び降りたら、間違いなく死ぬ。
鬱
なんてぽそりと呟いて、ちょっとフェンスから身を乗り出した時。
グルッペン
鬱
生徒会長であるグルッペンが、彼にしては珍しい大声を上げて屋上に駆け込んできた。
らむ
らむ
らむ
らむ
らむ
らむ
らむ
らむ
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