美愛
えっ……
美愛
岩永……!?
沙樹
夜桜…!?
美愛
夜桜…?
美愛
……私は夜桜の家の人じゃないよ
沙樹
はっ?
沙樹
じゃあ…お前は……
美愛
……
口にするべきか、躊躇った
そもそも、話すより前に攻撃を仕掛けるべきだ
でも、仲間意識が、抜けない
だから、もう言ってしまおうかな
私の苗字
妖魔の国の、身分証
もう使わなくなった名前を
……君へ
美愛
氷桜(ひょうおう)
美愛
氷桜美愛
沙樹
ひょうおう……?
沙樹
……氷桜?
沙樹
お前、じゃあ……
美愛
やっぱ知ってるんだ
美愛
うん、妖魔の国の最後の天皇だよ
沙樹
……っ
沙樹
展開術・蛇炎(だえん)!
美愛
うおっ!?
……炎で囲まれた
避けても、これ
美愛
やるね、岩永
美愛
長男だけが強いわけじゃないね
沙樹
そこから動くな
沙樹
……生憎、僕にお前は殺せない
沙樹
兄様が来るまでなら時間稼ぎくらい出来る
美愛
へぇ……
美愛
長男、近くにいるの?
沙樹
さぁ?お前に教える筋合いは無い
沙樹
とにかく、そこから出れると思うな
美愛
……はいはい
美愛
分かりましたよ
美愛
(流石沙樹だな……)
美愛
(昔の私じゃ確実に詰んでる)
美愛
(でも……)
美愛
(こっちにもこっちの策がある)
沙樹
……
沙樹
(……酷い、違和感)
美愛
……展開術・這う湧き水!!
一瞬だけ周りの炎を消しその内に沙樹へ近づく
頼むからこれで気絶してくれと願いを込めて
美愛
……展開術・這う湧き水!!
術が発動され一瞬だけ消える炎
そしてすぐに近づいてくる氷桜
沙樹
(あの炎を消せるとは……)
沙樹
(だけど……)
氷桜にとても強く蹴られた
蹴られるのは想定しておらず軽くすっ飛んでしまった
美愛
……はぁ
美愛
疲れた……
美愛
……探さなきゃ
沙樹
……何をだ?
美愛
!?
美愛
なんで……
美愛
確かに加減はしたけど……
沙樹
生憎、身体は丈夫でね
そして、無詠唱で発動させた術で作った炎の縄で氷桜を縛る
沙樹
さて、ここまで来れば大丈夫
沙樹
逃げられると思うな
手のひらに炎を出現させ近づける
確実にここで殺すという意図を込めて
美愛
……そっか
美愛
弱いなぁ……私
美愛
ね、沙樹
沙樹
……っ?
酷い頭痛がする
後はこいつに火をつけるだけ
なのに、なのに、なのに!!!
なんだ、なんだこの
「酷い違和感とやるせない後悔は」