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戦線の魔法使い

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戦線の魔法使い

1 - 落ちこぼれと鳥籠の婚約者

♥

36

2023年08月26日

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2158年 未来化が進みに進んで、今では近代的なシステムが色々と導入された

そして、新型の人間が誕生した 新しい人間「魔力」を持った人間

それにより、争いが増えた 魔力を持った人間は呪いであると唱える国 魔力を持った人間は神に祝福された人間と唱える国 どちらとも言わない中立国

片や魔力を無効化する対魔道具武器を開発し 片や強力な魔道具武器を使いそれすらも破壊しようとする

敵軍人

墜ちろ!!!悪魔共がぁ!!!!

ドレイク

主よ…

ドレイク

我に信仰無き彼らに正義の鉄槌を下す力を

空中に浮かぶ漆黒の髪を靡かせた男性が魔銃を構え祈りを呟くと銃口の先に魔法陣が広がった

ドレイク

与えたまえ

引き金を引いて弾が魔法陣を通ると赤色の光が弾を包んで敵へと向かって着弾した瞬間その場一帯が消し去った

ドレイク

…………

ピピッと耳につけていた通信機が鳴る

ドレイク

……了解、今すぐ帰還する

こうして、第二次魔法大戦が幕を閉じた

2188年

グランツ

これにて、本日の訓練を終了する

グランツ

解散!!

隊長の号令と共に部隊は散り散りになった

サーシャ

……ふぅ…

その中でも、男性と劣らないぐらいの背丈の毛先が白い赤髪、左眼は赤く縦に傷跡が残る褐色の少女が居た

グランツ

サーシャ、どうだ?魔力は

サーシャ

あ…だ…大丈夫だよ…

グランツ

そうか…それなら良かった

グランツ

無理はするなよ

サーシャ

うん…お父さん…

半年前、彼女は訓練中の事故により左眼を損傷、そして魔力暴走を起こして命の危機に迫っていた

目の前に立っている隊長と呼ばれる教官は彼女の義理の父親

物心が着く前に両親が亡くなり、グランツ・ジルベールが彼女を引き取った

グランツ

……

グランツ

……サーシャ

サーシャ

……?

名前を呼ばれ顔を上げると頭に温もりを感じた。父が私の頭を撫でているのだ。

サーシャ

!お父さん…

グランツ

本当にお前はいい子だ

グランツ

頑張って、ちゃんと、父さんの言う事を聞いてくれている

サーシャ

うん…

サーシャ

お父さん…が言うなら私…

サーシャ

頑張る…全部…全部

グランツ

ああ

グランツ

…素直なサーシャに

グランツ

神のご加護があらんことを

サーシャ

……うん、お父さん

訓練が終わって学園へと向かっているととある男子が前に立ち塞がった

グラハ

もう魔力暴走はいいのか?

グラハ

田舎者

ロン

……

サーシャ

!…グラハ…さん…

翠色の髪色、自分よりも背の高い男の子と後ろには薄紫色の髪色で、グラハよりは少しだけ背の低い男の子が立っていた

グラハ

ははっ!魔力もまともに制御出来ない奴がなーんで魔道士科に来たんだよ!

サーシャ

っ…

グラハ

まぁ?父親のコネで入っただろうけどなぁ?

ロン

……

サーシャ

!そんな訳…!!

「至急、魔道士科の諸君、ただちにホールに集合しなさい、繰り返す」

サーシャ

グラハ

ふん、行くぞ

ロン

うん、兄さん

ロン

………

ロンはチラッと私を見てから背を向けた

サーシャ

……?

「5分以内に集合してください」

サーシャ

!わ…私も行かない…と…

急いでホールへと走り出した

ホールに行くととある人物が1番前に立っていた

ドレイク

……

生徒

な…なぁ、あれ…

生徒

だよな…?

生徒

30年前の英雄…ドレイク・アルデンヌ…!

サーシャ

ドレイク・アルデンヌ 30年前の第二次魔法大戦でその終戦を担った魔法学の天才

今は優秀な人材を育てる為に学園を設立し、様々な魔法武器の製作をしているグループのトップをしている

ドレイク

これで全員か

低く、思い声が空気を一気に締め付けた

サーシャ

っ…

ドレイク

ここに集まって貰ったのは将来、国を守るであろう未来

ドレイク

魔道士科の諸君

ドレイク

魔道士科は魔力、身体能力全てにおいて他よりも優れている者が集まっている科

ドレイク

そんな君達は今ポイント制の決闘をしている

ドレイク

その決闘について、今日は諸君に集まってもらった

生徒

!決闘…

生徒

決闘って言ったか?今…

決闘 勝てば格上なら格上のポイントを全て 同等、格下なら1ポイント (ポイントが自分より上なら格上)

ポイントが上の者は下の者に常識の範囲内の命令ならなんでも聞かせることが出来る

ドレイク

単刀直入に言う、俺の娘が卒業するまでに

ドレイク

1位だった者を婚約者として我がアルデンヌ家に迎え入れる

サーシャ

え…?

ザワザワと辺りが騒ぎ始めた

それはそうだ、あのアルデンヌ家に入ることが出来れば将来は安泰だから

…それに、アルデンヌ家の娘… つまり、ミケイラ・アルデンヌは容姿端麗、成績優秀な才女である 一つだけ欠点があるとすれば、魔力が微々たるものである事

魔力主義のこの国ではその欠点は大きなものになる

ドレイク

現在のTOPは誰だ

グラハ

この俺だ

ドレイク

…ほう

自信満々に手を挙げるグラハをドレイクは品定めするように見つめた

ドレイク

グラハ・ヴォルワー…

ドレイク

ヴォルワー家の長男か

グラハ

ええ、そうです

ヴォルワー家と言えばアルデンヌグループの中でも1.2を争う程の成績を上げている名家だ

ドレイク

そうか

ドレイク

では

ドレイクは手元のタブレットを操作するとグラハの制服の左腕に金色の腕章が浮かび上がった

グラハ

サーシャ

!!

ドレイク

これは現在、俺の娘の婚約者である証、トップの証

ドレイク

卒業の日、この証を持っている者が俺の娘と結婚する

生徒

まじかっ!!

生徒

うーわぁ!!やる気出てきたぁ!!

ロン

生徒

俺ちょっと決闘申し込んでくるわ…!

生徒

俺も俺も!!

サーシャ

……

皆がザワザワと盛り上がっている中、私はなんとも言えない気持ちで立っていた

そんな…そんなの まるで、景品みたいじゃないですか

ホールがザワザワと盛り上がっている裏で1人の少女は拳を握りこんで壁を殴りつけた

ミケイラ

…っ…さいってー…!!

ミケイラ

私…は…物じゃない…!!

魔力がほとんどなくて、でも、それでも、勉強をして、少しでも周りに認められようとしていたのに、結局、全部無駄だった

私の人生は全部、父親の手の平でしかない

ミケイラ

………

ミケイラ

絶対…そんなの…させない…!!

ミケイラ

それに…

ホールを覗いて自信満々に腕を組んで顎を上げているグラハを見て虫唾が走った

ミケイラ

あんな奴と結婚するのは嫌…!!!

グラハ

俺様に勝てる奴はいんのかぁ?あぁ?

生徒

っ…

ロン

兄さん、そろそろ行こう

グラハ

ん、なんでだ

ロン

食堂、そろそろ人が集まってくる

グラハ

お、それはダメだな

グラハ

行くか

2人が去っていく後ろ姿を見送る

ミケイラ

はぁ…

ミケイラ

いないの…?私に興味無い人…

サーシャ

………

ミケイラ

?あれは…

目立つ背丈、毛先が少し白い赤髪で褐色肌の女の子

誰よりも目立つ彼女に私は目を離せなくなっていた

サーシャ

………?

視線に気づいたのか私の方に顔が向いた瞬間に覗いていた顔を引っ込めた

ミケイラ

っ…あぶな…

ミケイラ

……あの子は…

タブレットを起動して学生一覧表をタップする

ミケイラ

赤髪…赤髪…

魔道士科をスクロールしていくと赤髪が目に入ってタップする

ミケイラ

サーシャ・ジルベール…

ミケイラ

グランツ・ジルベールの娘…?

ミケイラ

だとしたら…!

グランツ・ジルベールとは私の父と同じく30年前の第二次魔法大戦で陰ながら皆を引っ張った1人だ

彼の娘なら、魔力も、身体能力も、他の魔道士科の男よりもあるはずだ

現に、数少ない女子生徒だ

ミケイラ

いやでも待って…?

ミケイラ

髪色も、目の色も、肌の色も…全然違う…

ミケイラ

それに…グランツ・ジルベールの奥さんは20年前に病死したって…

ミケイラ

だとしたら時系列が…

ミケイラ

…!

ミケイラ

そういえば、彼の弟は15年前に事故で…

ミケイラ

トーマ・ジルベール…

ミケイラ

彼は赤髪だったはず…

ミケイラ

彼の奥さんが褐色なら納得出来る…

頭の回転が良い彼女は直ぐに答えへと辿り着いた

ミケイラ

でも…ポイントは…

彼女が持っているポイントは下から数えた方が早い

少女はガックリと項垂れた 折角希望を見つけたと思ったら、彼女はあまりにも「弱い」

ミケイラ

……はぁ…

ミケイラ

…だったら…卒業までに…

ミケイラ

この国から脱出すれば…いい…

歯を食いしばって少女はその場を立ち去った

学園の庭にあるベンチでオムライスを頬張る

パックに入ったオムライスは半熟の卵に少し果肉が入ったトマトケチャップが掛かっていて程よい酸味と塩気が訓練後の身体に染みる

サーシャ

はむ…っ…

人見知りが激しい彼女には友達と言える人間が少ない

それに、この学園は自分で授業を組んで単位を取っていくシステムだから、中々時間が合わなくて1人でご飯を食べる事が多い

サーシャ

…モグモグ…

1人でご飯を食べていると時々絡まれる事がある

生徒

よう、田舎者

生徒

またぼっち飯か?

サーシャ

…!……

生徒

やーめとけって!可哀想だろ?

生徒

はははっ!それもそうだ!

魔力もまともに制御出来なくて、その上田舎からわざわざこの都会まで来たからよく「田舎者」と言われる

もう1年も言われているから流石に慣れてきた

生徒

お前は決闘とかすんのか?

サーシャ

へ…

生徒

無理無理!いっつも魔力制御が出来なくてぼろ負けしてるんだからさ!

生徒

あーそうだった!!

生徒

お前じゃああのミケイラ・アルデンヌの婚約者とか絶対無理だわ

生徒

当たり前だろっ

生徒

グラハ・ヴォルワーしか今んとこ可能性無いもんな

生徒

でもまぁ、あのミケイラ・アルデンヌをGET出来たら将来は約束されたも当然だなっ

サーシャ

……

サーシャ

………彼女を…景品の様な扱いするなんて…

生徒

あ?

生徒

今なんか言ったか?

サーシャ

…か…彼女…は……

サーシャ

そんなの…望んで…ない、と思い…ます…

吃りながらも言うと胸元のシャツを掴まれた

生徒

この…田舎者が…っ…!

サーシャ

っ……

生徒

まともに魔力制御出来ないから首輪を着けてる雑魚が!!

サーシャ

首に着けてる首輪をグイっと指で引っ張られ息が詰まる

この首輪は魔力暴走を抑える為の魔力制御プログラムが備えられている

グラハ

だったら

グラハ

俺に決闘を申し込みもしないお前も雑魚当然だろ

生徒

!ぐ…グラハ・ヴォルワー…!

ぶっきらぼうに怒りを込めた声が男子生徒の背後から聞こえ、男子生徒は驚いて手を離して、私は息を思い切り吸い込んだ

サーシャ

けほっ…ごほっ…

グラハ

俺に勝てない雑魚がくだらない事してんじゃねぇ

グラハ

失せろ

生徒

ひ…っ…

生徒

お、…おい行くぞ!!

生徒

っ…あ…ああ…

バタバタと2人の男子生徒が走っていった

サーシャ

…はぁ……はぁ…

グラハ

……ふん…

ロン

……

グラハ

全く…

サーシャ

あ…ありがとう…ございました…

グラハ

……ふん…

グラハ

目障りだっただけだ

グラハ

勘違いするな

サーシャ

は…はい…

彼は曲がった事が嫌いだ、口は悪いし言葉も強いけど、それは彼が真っ向に勝負してちゃんと結果を残しているからだ

グラハ

行くぞ

ロン

うん、兄さん

ロン

……またね

サーシャ

あ…は…はい…

2人の背中を見送ってタブレットを起動して明日の予定を確認した

サーシャ

明日は…

サーシャ

経営学科と魔道具専攻科との合同演習…か…

経営学科は将来会社の経営を担うであろう者が所属している学科 経営戦略を主に学ぶ

魔道具専攻科は新作の魔道具や魔道具に付属するプログラムを学べる科

時々その2つの科と合同で演習をする事がある

内容は主に協力して密室状態の部屋からの脱出や、数時間閉じ込められた時の生き延び方、怪我をした場合の処置訓練

魔力があるからと言っても、他者を回復させる、等は出来ないから基本的な処置方法、生存方法を訓練する

噂のミケイラ・アルデンヌさんは経営学科の成績トップ者

多分彼女は演習も良い評価を貰うだろうな

サーシャ

……はぁ…誰誘おうかな…

チチ

にゃ〜

サーシャ

頭を抱えていると背中にトンっと重みを感じて隣にカタッと降りた

サーシャ

チチ!

私の相棒のチチ 小さい頃からずっと一緒で私を見守ってくれてる猫だ

サーシャ

どこ行ってたの?

チチ

……

チチ

散歩、してた

サーシャ

ん、そっか

お察しの通りこの子は魔獣

だから私とだけ会話が出来る

魔獣と小さい頃に契約していたらしく、私とチチは会話ができるようになった

チチ

それよりサーシャ

サーシャ

ん?

チチ

明日の演習大丈夫なの?

サーシャ

う…

サーシャ

だ…大丈夫…だよ…多分

チチ

ちゃんとパートナー見つけないと

サーシャ

う…うん…

チチ

とりあえず私のご飯ちょーだい

サーシャ

あ、そうだね

チチは私の首にぐるっと巻きついた

サーシャ

お魚がいい?お肉?

チチ

サーシャ

はは、分かったよ

サーシャ

食いしん坊だなぁ

チチ

飼い主に似るのよ

サーシャ

え?

それから半年 私は当たり障りの無いように生活を送っていた

今日もいつも通りタブレットで決闘を見つめる

今回の勝者もあの彼のようだ 半年間ずっと無敗の最強のトップ 私とは違う世界の人

チチ

サーシャは決闘しないの?

サーシャ

へっ…わ…私が…?!

サーシャ

む…無理だよ……

チチ

ふーん…折角器を育てたのに

サーシャ

……

器…つまりそれは私の身体 チチに「魔力に対して器がまだ未熟だから魔力暴走が起きる」と言われてから私は身体を今まで以上に鍛え始めた

チチ

今なら魔力、操作出来るかもよ?

サーシャ

…で…でも…

サーシャ

もし…また…魔力暴走が起きたら…

1年前の魔力暴走がトラウマになって私は魔力を使う事が怖くなっていた

グチャグチャっと頭の中を掻き乱されて、ただ息苦しさが続くあの感覚はもう味わいたくない…

チチ

その時は私が止めてあげる

サーシャ

え?

チチは前足をペロッと舐めながら続けた

チチ

可愛い妹だもん、それくらいやってあげる

サーシャ

!……ありが…とう…

サーシャ

でもやっぱり決闘は…

チチ

まぁ、やる事になったらやればいいさ

サーシャ

……うん…

どうせ、そんな日は来ない

そう、この時は思っていた

サーシャ

今日は下半身トレーニング…

私はいつものようにトレーニング室に向かっていた

ミケイラ

…っ…私はアンタと結婚はしないって言ってるでしょ!!

サーシャ

!!

階段の上から叫び声が聞こえて思わずタブレットを落としそうになった

サーシャ

び…びっくりした…

グラハ

我儘が通ると思うな

グラハ

これはお前の父親が決めた事だろう

サーシャ

…グラハさんと…あれは…

彼女を見るのは初めてじゃない…けど、こんなにじっくりと見るのは初めてだ

真っ白な肌に真っ白な瞳、真っ白な髪の毛

全て白く、透き通っていた

私は魔道士科だからズボンだけど、他の科はスカート だからそこからスラッと伸びた綺麗な少し黒めのタイツを纏った足が見えていた

サーシャ

ほわ……

ミケイラ

っ…離し…て…!!

グラハ

!まっ…!

掴まれた腕を振り払う反動で彼女は階段を踏み外した

サーシャ

!!

慌てて見惚れていた自分を引き戻して彼女の下に身体を滑り込ませて受け止めた

サーシャ

っ…大丈夫…ですか…?!

ミケイラ

っ…〜〜…

グラハ

お…おい…

サーシャ

な…何してる…んです…かグラハさん…!

グラハ

っ…

グラハ

そ…そもそも…

グラハ

お前がこの俺に一々歯向かうのが悪いんだろ!

グラハ

俺は魔道士科のトップで…お前の婚約者なんだ

グラハ

俺は…全てを手に入れる男だ、地位も名声も…

グラハ

その為には俺は…お前を…

サーシャ

!…っ…

本当に…なんでここの人は皆…彼女の事を…

受け止められたまま私は呆然と彼女の横顔を見つめていた

徐々に顔が暗くなってくる彼女はボソッと呟いた

サーシャ

…人を…物みたいに…

ミケイラ

……?

サーシャ

…っ…

サーシャ

お父さん……私…

グラハ

もういいだろ

グラハ

ミケイラをこちらに…

サーシャ

…嫌…です…

グラハ

は?

私を抱きしめる力が少し強くなって彼女は顔を上げた

サーシャ

私と決闘!!してください!!!

ミケイラ

……はぁ?!!

決闘はしない、いつも怖がっていると噂の彼女が突然決闘をすると言い出したのだから私は驚きを隠せなかった

グラハ

……

ミケイラ

アンタ…っ…

ミケイラ

決闘はしない主義じゃないの?!

グラハ

いいだろう

グラハ

お前が負けたら…

グラハ

魔道士科から出ていけ

ミケイラ

なっ…

グラハ

お前みたいな腰抜けに軍人を名乗る資格は無い

サーシャ

…っ…わ…分かりました…

サーシャ

…でも…その代わり…

サーシャ

私が勝ったら…

サーシャ

み…ミケイラさんに乱暴したこと、謝ってください!!

グラハ

ふん、上等だ

ミケイラ

っ…やめなさい…よ!!

ミケイラ

アンタに勝てっこない!!

ビーーッと音が鳴り空には文字が浮かび上がった

「DUEL」 「サーシャ・ジルベールVS グラハ・ヴォルワー」

生徒

はぁ?!サーシャ?!!

生徒

おいおいおい、しかもグラハかよ!!

生徒

これはグラハが勝つに賭けるぜ

生徒

それは俺もだっての!

対称的な2人の決闘を学園中が注目した

皆タブレットやスクリーンに釘付けだ

決闘ホールに俺の娘と、今現在のトップが向かい合っている

2人は腕に装着している時計型生徒手帳(これで連絡等が全て可能 現代のスマホ)を突き出している

サーシャ

サーシャ・ジルベール

サーシャ

グラハ・ヴォルワーに決闘を申し込みます

グラハ

グラハ・ヴォルワー、決闘を受ける

グランツ

決闘を承認する

グランツ

立会人はグランツ・ジルベール

グランツ

勝利条件は相手を戦闘不能にする事

グランツ

フィールドを展開

決闘ホールいっぱいに防御壁を張った

グランツ

両者、決闘の宣誓を

サーシャ

決闘は他者には関与されず

グラハ

該当者だけの闘いであり

「軍人として、誇り高き闘いをする事を誓います(誓う)」

グランツ

DUEL

グランツ

approve

彼は魔剣を抜いて魔力を剣に込めると赤く光った 彼の魔力で輝く魔剣

グラハ

田舎で大人しくしていろ!!田舎者!!

サーシャ

ぐ…

こちらも魔剣を抜いて振りかざした剣を受け止める

グラハ

魔力もまともに制御出来ない出来損ないが…!

魔力を込められた魔剣をグッと押し付けられ身体が吹き飛ばされ壁に叩きつけられた

サーシャ

ぐはっ……!!

背中に痛みを感じ身体が強ばる

怖い、痛い、辛い なんで決闘申し込んだんだろう こんな、勝てない相手に 魔力もまともに、制御できない、落ちこぼれなのに

グラハ

…ムカつくんだよ…

グラハ

弱い癖に…、落ちこぼれの癖に…!

グラハ

自分は間違ってないって顔しやがって!!

グランツ

………

防戦一方のサーシャ 泣きそうな、でも、やらなきゃ、そんな感情が彼女を動かしていた

サーシャ

…っ…

グラハ

お前なんかに分からない!!

グラハ

アイツはな…

グラハ

俺達は…

グラハ

親の呪縛から抜け出せないんだよ!!

サーシャ

親の…呪縛…

上流階級には、彼らには彼らの事情があって、それは私達には分かるはずもない、幼い頃から親の呪縛に縛られ、守られている彼らの、気持ちは

サーシャ

………

「貴女の魔法は皆を護る、神からの贈り物」

サーシャ

誰の言葉だったっけ、幼い頃、夢で誰かに言われた気がする、とても大切な、大切な言葉

「いつも私達は貴女の傍に、貴女に神のご加護が、ありますように」

サーシャ

神の…ご加護……

そうだ、護らなきゃ、彼女を 親に縛られている彼女を そして目の前の、彼を

サーシャ

…主よ

グランツ

!!

剣を受け流す事しかしてなかった彼女が突然ボソボソと唱え始めた

サーシャ

我に、彼に勝つ勇気と

グランツ

あれは…

ずっと昔、神に祈りを捧げたあの戦場の日のような

その口上を何故彼女は知っているのか、自分も唱えた神への祈りを

サーシャ

力を

サーシャ

与えたまえ

ガシャッと首輪が外れ彼女の剣が赤く光り始めた

グラハ

!!

警戒したグラハは後ろに下がり彼女の様子を伺った

サーシャ

術式、展開!!

剣を振りかざした先に魔法陣が出現しそのままグラハへと向かった

グラハ

なんっ…だそれは!!

剣で受け止めた彼は仰け反りながらも力で耐えていたその瞬間

カキンッ

グラハ

っは…!!!

剣が真っ二つに折れグラハの胴体を剣が通った

生徒

嘘…だろ…

生徒

グラハが…?

生徒

負けた…?

空を見上げると勝者の名前が金色で表示される

「サーシャ・ジルベール」

ミケイラ

……サーシャ…ジルベール…

私を籠から連れ出そうと怖がりながら、涙目になりながら、必死に、戦う彼女

彼女が私の中で大きい存在になるのに、時間はそう掛からなかった

サーシャ

はぁ…はぁ…

スっと流れる汗を拭わず肩で息をし、目の前で倒れている彼を見つめていると、腕につけてる生徒手帳が震えた

サーシャ

生徒手帳を見るとポイントが加算されていた point 154 No.1

そして上着の腕に金色の腕章が浮かび上がった

新しいトップの誕生と共に、婚約者が入れ替わった瞬間だった

サーシャ

……勝った…

グランツ

サーシャ…

サーシャ

お父さん…私…っ…!

父に勝った報告をしようと一歩踏み出した瞬間、視界が歪み途端に意識が途切れた

グランツ

!サーシャ!!!

バタンッ

キャラ紹介

サーシャ

サーシャ・ジルベール
17歳 ︎︎ ♀(この世界では18歳で成人)
177cm
魔道士科2年

人が少なく、子供があまりいない田舎(アルティア)出身
義父(グランツ)に言われ帝国の首都(ウェルバルク)にやってきた
幼い頃から村ではこき使われてきた為(建物の修繕や道の改善等)体力と力はある
そしてアルデンス学園 魔道士科へと入学した

膨大な魔力を持ち合わせているが器(身体と心)が完成しきっていないから魔力制御装置の首輪を常にしていないと周りだけではなく本人の命も危ない

秘めたる力は義父譲りか、それとも…?

ミケイラ

ミケイラ・アルデンヌ
17歳 ︎︎ ♀
158cm
経営学科 2年

軍人や一般人が使える魔道具を開発するアルデンヌグループのグループリーダーの父を持つ
魔力があまり無く、勉強や所作、魔力以外を全て完璧にしている
母は幼い頃に病気で亡くしている

籠の中に閉じ込めようとする父を嫌っている
容姿は母親譲り

気が強く、言葉も強い為あまり人が寄り付かないが、ただ素直じゃないだけである

グランツ

グランツ・ジルベール
49歳 ♂
188cm

弟(トーマ)夫婦が亡くなってからサーシャを引き取った

第二次魔法大戦での影の指導者
優秀な軍人として退役した後、軍人育成の為にアルデンス学園の教官を勤めている

ドレイク

ドレイク・アルデンヌ
50歳♂
183cm

第二次魔法大戦の英雄
全て力で捩じ伏せる
普段から命を狙われる身である為隙が無い
娘にも危害が及ぶ可能性が高いから魔道士科のトップの傍に置こうとしている
言葉足らずという言葉が似合う男

チチ

チチ
サーシャが幼い頃から一緒にいる魔獣
謎多き猫

グラハ

グラハ・ヴォルワー
17歳♂
190cm

アルデンヌグループの上位成績名家のヴォルワー家の長男
魔力、魔力操作共に成績トップ
口調は荒いが素直が故である
ミケイラとは幼い頃からパーティー等で面識がある
密かに思いを寄せている

ロン

ロン・ヴォルワー
16歳♂
189cm

ヴォルワー家の次男
兄に次いで魔力、魔力操作に優れている
無口で何を考えているかよく分からない
兄を慕い、尊敬している
サーシャに興味を示している
ミケイラには興味無く、婚約者にも興味が無い

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