僕らが✘✘だった頃。

⚠️現実世界とは何の関係もございません。 ⚠️政治的意図・戦争賛美等はございません。 ⚠️かなりのブラックジョークがあります。 ⚠️特定の国や地域を軽んじる意図はありません。 ⚠️史実・旧国あり 物語としてお楽しみくださいませ。

狭い入口を前に、 ドイツが叫んだ。

ドイツの掛け声で、 なだれ込むように突入する。

片手に剣、片手にスマホを持った フランスが、辺りを照らす。

しかし、そこは真っ暗で 空漠な空間だった

ライトに照らされた床には 黒いシミが付着していた

その時だった。

辺りが薄ぼんやりと明るくなった

ガラガラガラ…

背後を振り返ったフランスが叫ぶ

背後の入り口が、 上から落ちてきた岩で埋まった

しかし、ロシアが足元を指さした

ズズズ…

四人の足が黒い影に沈んでいた。 それはまるで、底なし沼のようだった

ズズ、ズズ……

前方にでんぐり返りして逃げたロシア。 如意棒を操り、先に抜け出した中国。

ズ、ズ、ズ……

ロシアはドイツを、中国はフランスを 引っこ抜くと、四人は走り始める

ゾゾゾゾゾ…

かなり曲がりくねった迷宮を ドタドタドタと走り続ける

バンッ

後ろ歩きをしながら 自慢のカラシニコフ銃で 影を撃ち抜くロシア

ツン、ドスッ

同じく後ろ歩きして 如意棒で影を貫く中国

ズリ…ズリ…

底なし沼のような影は どんどん広がり、追い詰めてくる

モグ…モグ…

左右の壁には 多様な絵画が掛けられていた

バタバタバタ…！

再三の曲がり角を進む

絵画だけではない。 壺、花瓶、像… 様々な展示品が沈黙している。

ゾリ…ゾリ…ゾリ…

それらを全て、かの大きな影は 飲み込みながら広がっていった

ドタバタドタバタ… 右、左、右、左… 迷路を走る、走る、走る

今にも泣きそうなフランス。 目を血走らせて走るドイツ。 割と余裕そうなロシア。 発言が生々しい中国。

多分、ロシアと中国は 二人を面白がっている。

ドイツとフランスは右を、 中国とロシアは左を選択した

右に曲がった後 走りながら横を見たドイツ。

ゾモモモモ…

ふと後ろを見たドイツは、 声にならない声を上げた

そこにはただ、トンネルのように 『無』がポッカリと口を開けていた

ゾッ…ゾッ…

そして、 二人を今にも飲み込もうとしている

二人はだんだん疲弊してきた。 足が上がらなくなってくる。

その時だった。

影が突如として形を変え

ぬっ、

二人に手を伸ばした

ドガッ、

ドイツはフランスに思いっきり 体当たりをした

転がったフランスは すぐさま立ち上がり 影の魔の手から間一髪逃れる

駆けながら振り返ったフランスは

モッ…モッ…

影に下半身を 飲み込まれたドイツを見た

ドイツの腕を引っ張るフランス

ｿﾞﾜﾘ…！

彼を、影が上から飲み込まんとした

その時だった。

ズサッッッッ！

上から飛び降りながら、サーベルで 影を串刺しにするヴィシーフランス

バンッッッ！

怯んだ影にワルサーで連射し ドイツを抱え上げるナチス・ドイツ

立ち上がったドイツと ヴィシーに手を引かれたフランス、 そして旧国二人は駆け出した

タッタッタッタッ… 四人の足音が響きわたった。

しばらく進むと、曲がり角が現れる

ドイツとフランスは 前方から現れた姿に声を上げた。

分かれ道で分かれた後、 一方のロシアと中国は

軽快な足取りで進んでいた

ゾリ…ゾリ…

背後には変わらず 周囲を飲み込みながら迫る 影の姿がある

トットットットッ…

暗がりに二人の足音が木霊する

少し前を走るロシアは、急停止した

そう、二人の目の前には

奈落に通づる 大きな落とし穴があったのだ

グワン…グワン…

二人は谷底の縁で 迫りくる影を呆然と見あげた

その時だった

ロシアと中国の前に立ちはだかるように 二つの人影が現れる

ドババババッッッ

ソビエトのモシン・ナガンが 火を吹いた

ザンッ

清の環首刀がギラリと煌めく

……！

たじろいだように影が退く

旧国二人はそれぞれの子を担ぎ上げると

奈落の先──対岸に向かって

飛んだ

思わず悲鳴を上げる現国

しかし、

ソビエトと清は ひらりと奈落を越えた

地面に降ろされると ロシアも中国もへたり込んだ

ズズズ…

再び追ってくる影を見て 四人はまた駆け出した

ドタドタドタドタ…！

曲がり角が見えてきて、 四人は方向を転換した

そういえば、と清がソビエトに目をやった

大清帝国とソビエトは面識がない

蛙の子は蛙。 子が冷静ならば親も動じないらしい

すると、前方から四つの人影が現れた

鬼ごっこの果てには巨大な扉。

その前で現国四人は再会を喜ぶ。

それはどうやら旧国も同じようで。

……再会を喜んでいるわけでは ないかもしれない。

大清帝国が指さした先には

ゴウン…ゴウン…

二手に分かれていた影が合体して

のそり…

更に巨体になった姿だった

太い腕、大きな手、そして赤く光る瞳… 影はまるでお伽噺の怪物のようである

しかし。

ガゴッ

扉を押し開けようとした ドイツが悲鳴を上げる

ギ、ギ、ギ…

四人で押すと、扉は僅かに開き始める

ギギギ…！

旧国二人の両手が扉に添えられた

ナチスとソビエトは影に踊りかかる

赤い二人組に影が気を取られている間 六人は扉を力一杯押した

その後ろでソビエトとナチスが 奇妙な連携を見せていた

バンッッッ！

ドカンッ！バンッ！

パーンッ!!

それを耳にしたドイツは 顔を赤らめた

ドーンッッ！

しかし、ナチスもソビエトも だんだんと押され始めた

ゾゾゾゾゾ…！

額に汗をにじませる二人に ヴィシーは叫んだ

その時だった。

中国から例のブツを受け取ったロシアは

迷わずピンを引き抜いた

一同は転がり逃げて、耳をふさぐ

ドカーーーンッ！

旧国の言葉を背に受けて 現国は扉の向こうへ飛び込んだ