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#ギャンブル
りんご
904
19
朽華 歌仙
78
コメント
1件
うわっ、今回の試練の仕組み、めちゃくちゃ巧妙でしたね……。単なる歌唱力勝負じゃなくて「二桁の差の小ささ=調和」っていう判定基準、伏線の貼り方が本当に巧い。歌音が95点で落ちた理由が、一気に腑に落ちました。あと、安曇が最後に「助けて」と手を伸ばしたシーン、切なすぎます……。システムの“美”の定義も、この世界観の倒錯した倫理観を象徴しててゾッとしました。次は“勝利”がテーマなんですね。どうなるんだろう。
菜々美たちの頭上で、2つの黄色いバルーンが揺れていた。
どちらかの紐が、間もなく首へ巻きつく。
そう思うだけで、喉が閉じた。
新倉穂乃花
生島菜々美
口ではそう答えたが、自信はない。
菜々美は歌が苦手だった。
対する生徒ナンバー38・若林安曇は、無言でマイクを握っている。
第5試練で、最多の13票を集めた少女。
誰よりも嫌われていると見なされた安曇は、もう誰とも目を合わせようとしなかった。
若林安曇
生島菜々美
若林安曇
菜々美は何も返せなかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
校歌の前奏が流れた。
安曇は細く息を吸い、歌い始める。
派手さはないが、音程は安定していた。
感情を押し殺した声が、黄色い部屋へ淡々と広がる。
歌い終えても、表情は変わらない。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
パネルで、2つの数字が別々に回転する。
左側が止まった。
8。
続いて、右側に2。
2つの数字が中央へ滑る。
82点。
若林安曇
生島菜々美
普通の採点なら、ほぼ負けたも同然だった。
だが、菜々美の頭には、これまでの結果が残っている。
95点と88点――
歌音は死に、摩智は生き残った。
62点と65点――
心路は死に、穂乃花は生き残った。
生島菜々美
生島菜々美
88は同じ数字。
65は隣り合う数字。
対して、95は4つ離れ、62も4つ離れている。
そして、安曇の82は――
生島菜々美
生島菜々美
安曇の歌声を思い返す。
音程は安定していた。
けれど、感情を押し殺し、何も感じていないように歌っていた。
生島菜々美
95点だった歌音も、訓練された美しい声で、恐怖を押し隠していた。
88点の摩智は、怒りも恐怖も隠さず声へ乗せていた。
生島菜々美
心臓が鳴った。
確証はない。
けれど、考えが正しければ、必要なのは高得点ではない――
2つの数字が近いこと。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
菜々美は、両手でマイクを握った。
新倉穂乃花
生島菜々美
生島菜々美
前奏が終わる。
最初の音から、わずかに外れた。
高音では声が裏返り、呼吸も乱れる。
それでも菜々美は、上手く聞かせようとして声を作らなかった。
恐怖も、帰りたいという願いも、震えたまま歌詞へ乗せる。
声はきれいではない。
けれど、今の菜々美から離れてはいなかった。
最後の歌詞まで、声を止めなかった。
歌い終えると、菜々美は肩で息をしながらマイクを下ろす。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生島菜々美
左側が止まる。
5。
生島菜々美
続いて、右側に4。
2つの数字が、わずかな隙間を挟んで並ぶ。
54点。
若林安曇
安曇は息を吐いた。
若林安曇
若林安曇
生島菜々美
数字の大きさなら、安曇の圧勝だ。
けれど――
8と2の差は6。
5と4の差は1。
生島菜々美
頭上で、バルーンが揺れた。
若林安曇
動いたのは、安曇のバルーンだった。
若林安曇
黄色い紐が降りてくる。
若林安曇
【SYSTEM】
若林安曇
輪が、安曇の首へ落ちた。
若林安曇
安曇は初めて、周囲へ手を伸ばした。
第5試練で、誰よりも嫌われていると見なされた少女。
他人から距離を置くようになった彼女が、最後に助けを求めている。
だが、誰も動けなかった。
紐が締まり、身体が持ち上がる。
若林安曇
掠れた声が途切れ、伸ばした手が垂れ下がった。
バルーンは安曇を吊り、他の5人が並ぶ隅へ移動した。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
新倉穂乃花
穂乃花が駆け寄り、菜々美を抱き締めた。
生島菜々美
安堵したはずなのに、涙は出なかった。
視線の先には、6つのバルーン。
その下に吊られた6人。
香流。
志穂。
麻冬。
歌音。
心路。
安曇。
名前を並べる。
けれど、何人かの顔は黄色い光へ溶け始めていた。
代わりに、数字が鮮明に残る。
85。
52。
81。
95。
62。
82。
少女たちの顔より、与えられた点数の方が強く記録されていく。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生き残った6人が、モニターを見た。
画面に、全対戦結果が表示される。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
数字が分解されていく。
85。
8と5。
差は3。
87。
8と7。
差は1。
【SYSTEM】
56。
5と6。
差は1。
52。
5と2。
差は3。
【SYSTEM】
92と81。
どちらも差は7。
【SYSTEM】
95。
差は4。
88。
差は0。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
62。
差は4。
65。
差は1。
【SYSTEM】
82。
差は6。
54。
差は1。
【SYSTEM】
生島菜々美
生島菜々美
生島菜々美
菜々美の考えは間違っていなかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
新倉穂乃花
【SYSTEM】
歌音の歌声が、菜々美の記憶に甦る。
誰よりも美しく歌った少女。
それでも、数字の配列が美しくないという理由で死んだ。
努力も――
夢も――
積み重ねた時間も――
最後には、95という2桁へ置き換えられた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生島菜々美
部屋の隅から、微かな歌声がした。
6人の声が重なる、世斐羅女子学院の校歌。
だが、吊られた少女たちの口は動いていない。
保存された声だけが繰り返される。
誰の声だったのか、もう判別できなかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
黄色い照明が消えていく。
6人を吊るしたバルーンも、暗闇へ溶けた。
残された校歌だけが流れ続ける。
やがて、正面の壁が左右へ開いた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
6人の端末に、同じ文字が表示された。
“WINNER”――
新倉穂乃花
生島菜々美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
“WINNER”が、1文字ずつ消えていく。
すべて消えると、画面に“0”が浮かんだ。
第5試練で死んだ3人。
誰からも選ばれなかったことを示す0票。
忘れかけた顔が、一瞬だけ脳裏をよぎる。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
暗い通路の先で、新たな扉が開いた。
向こうは見えない。
勝つためには、誰かを負けさせなければならない。
菜々美は穂乃花の手を握った。
穂乃花が握り返すまで、ほんのわずかな間があった。
第6試練終了――
生徒ナンバー01・浅井香流 脱落。 生徒ナンバー31・牧原志穂 脱落。 生徒ナンバー09・加藤麻冬 脱落。 生徒ナンバー26・根来歌音 脱落。 生徒ナンバー20・津田心路 脱落。 生徒ナンバー38・若林安曇 脱落。
残り8名。