翼
そういえば来週、明梨ちゃんの誕生日だ
優利
来週…ってことは明梨さん、閏年に生まれたんですね
美羽
うーん…前から思ってたんだけどさ、
美羽
お互いさん付けとかやめて呼び捨てにしない?
明梨
そうだね!私達出会って大分経ってるのになんかよそよそしいし!
優利
じゃ、じゃあ…翼、明梨、美羽…
翼
うんうん、なんか馴染んできた!
美羽
じゃあ明梨、誕生日パーティー準備しておくから楽しみにしててね!
明梨
ありがとう、美羽!
そうやって、準備して、あっという間に一週間が経った。
この先に大きな悲劇が待っているとも知らずに。
優利
明梨、誕生日おめでとう
美羽
これ、プレゼント!
美羽
青い折り紙で蝶をつくったんだ!
翼
今は高価なものをあげられないけど、大人になったらもっとすごいプレゼントあげるからね!
明梨
ありがとう
明梨
この蝶、大切にするね!
美羽
あれ…作ったケーキ、どこに置いたっけ…?
優利
確か、さっき美羽、冷蔵庫に入れてたよ
美羽
ありがとう!
翼
それじゃあ、ケーキ切り分けるね!
翼
痛ッ…シュッ
優利
翼、大丈夫?指切っちゃったみたいだね
明梨
ヤバい…誰か…!
明梨
誰か私を止めて…!!
美羽
…!明梨の殺人病が発症してる!
焦っている間に明梨の瞳は真っ赤に染まり、泣きながら包丁を手に持った。
明梨
ザクッ…グサッ…
優利
…どうしよう…!
僕らはどうにもできなかった。
翼
…
状況を理解した頃には、もう翼は息をしてなかった。
明梨
うわぁ"ぁ"ぁ"あッ
明梨
翼ぁ!翼ぁあッ!!
美羽
明梨…
明梨
私が翼を殺したんだッ…!
私は…翼の…皆の幸せを奪ってばっか…ッ!
私は…翼の…皆の幸せを奪ってばっか…ッ!
優利
……。
僕は明梨に何も言葉をかけることができなかった。
明梨
ごめん…ごめんね…ッ
明梨は冷たくなった翼の体に抱きつき、声を荒げて泣いた。
そんな彼女の手には、おびただしい量の赤い蝶と、一匹の青い蝶が群がっていた。
彼女はそれから毎日泣いた。
そして、2ヶ月経ち、翼の誕生日である4月29日になった。
明梨
ごめんね…翼…
明梨
今から私は地獄に行かなきゃいけない…
明梨は翼が生前使っていた部屋に貰った青い蝶を置き、腹を切って死んだ。
明梨
翼…私、翼が大好きだったよ…
明梨
来世私が純粋な子になれたら、好きって伝えても、いい、かな…バタッ
こうして施設には、僕と美羽の二人だけが残された。
僕と美羽はずっとそれぞれの部屋で過ごしほとんど顔を合わせなくなった。