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校内の用具室までやってきた。
この高校にも、一応用務員という要因はいて、この用具室は、その用務員が仕事のために使うものを保管している場所だった。
本人がいれば事情を話したのであるが、状況が状況であり、ほとんどの人が校内には残っていなかった。
教師や用務員なども例外ではない。
ひなた
日向が探していたものは、簡単に見つかった。
実は以前、聞いたことがあった。
この学校の冷房設備は、業務用のKHP空調機である。
だから、オールシーズンあるはずだった。
すなわち、そこに燃料を供給するための燃料タンクが。
ひなた
日向はかねてより、この用具室の外の壁に看板が設置されていたことを知っていた。
なぜなら、そこが日向の避難所だったから。
比較的平穏な昼食時などは、そこで食事を摂ることがほとんどだった。
教室にいれば瑠奈達に見つかってしまうかもしれないし、かと言ってトイレでの昼食も駄目だ。
面白がった瑠奈達に、何度個室の壁越しに汚水をかけられたか分からない。
だから、この部屋の外が避難所だった。
そして、それゆえに日向は恐ろしいことを思いついた。
危険物貯蔵所
油種 灯油
数量980リットル
ひなた
ひなた
タンクは縦長のドラム缶のような形であり、そのまま冷暖房施設に繋がっているようだったが、しかし下部には蛇口がついており、小出しに出せるようになっている。
ひなた
近くにあったポリタンクに灯油を移すと、日向はニヤリと笑みを浮かべる。
火種となるライターは、すでに喫煙者である用務員室から拝借してある。
日向はポリタンク2本に灯油を移すと、それを両手に持って廊下に出た。
ひなた
ひなた
廊下に灯油をぶちまける。
比較的、灯油は安全だと思われているが、当然ながら火をつければ当たり前のように火がつく。
むしろ、ガソリンを用いてしまうと、あまりの高火力に、炎が出る前に爆発を起こしてしまうため、灯油くらいがちょうどいい。
そう……放火には。
かつて、某アニメーション会社に逆恨みで放火をした事件があった。
あの事件では、犯人も炎にまかれて重症を負っていたが、なんとも間抜けな犯人だと思った方もいることだろう。
あれはおそらく、犯人でも予期できぬ火力が出てしまったのだと思われる。
近年、セルフサービスなどで身近になったガソリンではあるが、しかし素人が扱うには危険な物質である。
静電気ひとつで大爆発を起こせるポテンシャルがあるのだから。
ひなた
廊下一杯に灯油を撒くと、小さく溜め息を漏らす。
この廊下は北と南にそれぞれ階段があるのだが、そのどちら側にも火が出るように灯油をまいてやった。
これに火をつけたらどうなるか。
念のために、家庭科室までぶちまけた灯油のラインをもって行き、その先にたっぷりと灯油を染み込ませた布の山を築いてきた。
ひなた
日向はそう呟くと火を放った。
学校の周りには人だかりができていた。
緊急的に避難してきた生徒や、野次馬、近所の人達など、ちょっとした見せ物のようになってしまっている。
翔太
ポツリと呟いた言葉は、しかし日向には届かないだろう。
だって、日向は鈍感だから。
ずっと一緒にいた幼馴染の気持ちさえ、気づけないのだから。
そういうところが、もしかすると瑠奈達の癪に障ったのかもしれない。
野次馬A
野次馬A
野次馬が指を指すと、1階の廊下に炎が一斉に上がる。
翔太
野次馬B
野次馬B
また別のところから声が上がり、そちらに視線をやってみると、日向らしき人物が2階の廊下を歩いているのが見えた。
翔太
翔太の言葉に反応するかのように、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
るな
みさこ
るな
避難してした生徒達に混じって、さも当然とばかりに手を叩いて喜ぶ瑠奈。
翔太
みさこ
みさこ
翔太
るな
みさこ
るな
るな
翔太
るな
野次馬A
火の回りが早いのか、それとも日向が火をつけて回っているのか。
不明だが、火の手は収まる様子がない。
翔太
翔太
翔太
遠くからは、誰かが呼んだであろう消防車のサイレンが聞こえるのであった。