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”夢幻(むげん)の魔女”
そう呼ばれる人物がいた。
絶望の淵にいる人の前に
突然ふらりと現れ、
対価を支払えば
あらゆる願いを叶えてくれる。
・
根も葉もない噂話だという者も多いが、
実際会ったという者も
少なからず存在する。
そして、
会ったことがある者は
口を揃えてこう言う。
『魔女の微笑みを信じるな』
と……。
・
・
クラウスが住んでいた辺境の村トールタウは小さな村で、
ここに住んでいる人はみんな顔見知りでした。
何も無いつまらない村だと言って、
大人になると出て行く人も多くいましたが、
みんなで仲良く細々と生活をしていました。
そう、
彼の父親が、
ソレを勝手に持ち出すまでは……。
・
・
ソレは、
古い本、
のように見えました。
薄汚れた細い布で
グルグル巻きにされていましたが、
長い間放置されていたせいでしょうか
触れただけでその布は
ボロボロと朽ち果てて
解け落ちて、
真っ黒な表紙が露わになったのです。
・
・
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
・
・
・
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
村人
・
きっかけは些細なこと。
まるでほころびがほどけるように、
人は人を安易に殺めてしまいます。
子供の頭の鉈でかち割り、
女性の腹を包丁で切り裂き、
男の足を斧で断ち切り、
口煩い老婆の首を絞めて、
ボケた老爺を井戸に沈めて、
這いずって逃げる者には火を付けて、
犯人が逃げ込んだ建物にも火を付けて、
気がつけば、
村のあちらこちらに死体が転がり、
火の手が上がっていました。
しかし、
彼らはそんなこと気にする素振りも見せず、
暴言や奇声を発しながら、
視界に入った人に凶器を振り下ろし続けました。
・
ああ、
なんと、
滑稽で
愉快な光景でしょう。
・
もう、
誰も
最初の目的など
覚えているはずもなく、
狂った人々は
殺戮の限りを尽くすだけ。
そして、
殺すべき相手がいなくなれば、
己の首を切り落とすだけ、
楽しそうに
笑いながら。
泣きながら。
・
・
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
ゆっくりと炎が押し寄せる家の中、
父親が倒れているのを見つけました。
ヨアン・ツェルネ(父)
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
父親はすでに両足を失っていました。
クラウス・ツェルネ
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
クラウス・ツェルネ
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
ヨアン・ツェルネ(父)
───バキバキッ!
ヨアン・ツェルネ(父)
クラウス・ツェルネ
押し飛ばされた瞬間、
屋根が崩れ落ちてきました。
クラウス・ツェルネ
目の前には燃え盛る瓦礫しか
見えません。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
燃え盛る家から何とか抜け出し、
クラウスが目にしたのは、
変わり果てた村の姿でした。
・
・
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
目と鼻の先にある
ヘイミ叔母さんの家に向かわなければいけません。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
道端の転がる死体は、
誰も彼も見たことのある顔ばかり。
でも、
母親と妹の姿はありません。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村人
村人
クラウス・ツェルネ
村人
手をばたつかせながら
這い寄ってくるその男の頭には、
斧が突き刺さっていました。
クラウス・ツェルネ
走って
飛び込んだのは
ヘイミ叔母さんの家。
でも、
クラウス・ツェルネ
廊下の壁も床も
血で真っ赤に染まり、
そこには
何かの肉塊が
転がっていました。
クラウス・ツェルネ
逃げ出そうと
振り返ると
村人
クラウス・ツェルネ
バタンッ!
扉を閉じて、
目の前の廊下を駆け抜けます。
柔らかい肉塊を踏んで、
背筋がゾワリとしました。
そして、
その奥の部屋で、
ヘイミ叔母さんと
母親のルイーゼを見つけましたが、
その異常な光景を
クラウスは理解できませんでした。
二人の体が
天井からぶら下がっていたのです。
パックリと切り裂かれた首からは
もう血は零れ落ちてきません。
虚ろな瞳は
ここではないどこかを見つめていました。
クラウス・ツェルネ
もう、
叫ぶ気力もありませんでした。
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
物陰に隠れていた妹が飛び出してきて
クラウスに抱き着きます。
感動の瞬間です。
この地獄のような状況で、
妹は奇跡的に無傷でした。
今のところは。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
その質問に
クラウスは答えられませんでした。
クラウス・ツェルネ
バンッ!!
ヘルゲ
ヘルゲ
扉をぶち破って現れたのは、
ヘルゲという
ヘイミ叔母さんの息子でした。
クラウス・ツェルネ
ヘルゲ
ヘルゲ
ヘルゲ
ヘルゲ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
ヘルゲ
奇声を上げて
包丁を振り回すヘルゲ。
逃げ惑う幼い兄妹。
ヘルゲ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
不運にも転んでしまったテレーゼ。
ヘルゲの凶器が容赦なく襲い掛かります。
ザクッ!
テレーゼ・ツェルネ(妹)
ヘルゲ
ヘルゲ
テレーゼに馬乗りになるヘルゲ。
クラウス・ツェルネ
クラウスは近くにあった物を掴み、
思い切り振り抜きました。
ヘルゲ
それは実に呆気なく、
ヘルゲの腹部を切り裂きました。
ヘルゲ
溢れ出す血。
泣き叫ぶヘルゲ。
その間に妹を助け出そうとして、
その足が掴まれてしまいました。
テレーゼ・ツェルネ(妹)
ヘルゲ
ヘルゲ
ヘルゲ
魔女
ヘルゲ
突然現れた艶やかな女性が
ヘルゲの頭に触れた瞬間、
パンッ
と風船のように綺麗に爆ぜてしまいました。
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
細く長い指で妹を指差し、
女性はニヤリと笑みを浮かべました。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
テレーゼ・ツェルネ(妹)
テレーゼ・ツェルネ(妹)
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
女性と
目が合いました。
魔女
しゃがみ込み、
頬杖をつく女性。
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女は表情を明るくして頷きました。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女が立ち上がり、
指をパチンッと鳴らすと、
妹は半透明の球体に包まれ
ふわりと浮き上がりました。
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
魔女
また魔女がパチンッと
指を鳴らすと
魔女の影から一匹の真っ黒な犬が姿を現しました。
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
困惑するクラウスに犬は近付き、
その顔をペロペロと愛嬌よく舐めます。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
言いながらもクラウスは
どこか嬉しそうな顔をしました。
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
魔女
魔女
魔女
魔女
クラウス・ツェルネ
クラウスは小さく頷いて、
部屋を出て行きました。
・
・
クラウス・ツェルネ
村の外は相変わらず
凄惨な景色が広がっています。
クラウス・ツェルネ
辺りに漂うのは
人の焼ける臭い。
クラウス・ツェルネ
胃の中身を吐き出しても、
ちっとも楽になりませんでした。
黒い犬がやってきて、
袖を引っ張ります。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
見上げれば、
夜がゆっくりと空を覆い始めていました。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
遠くから人の笑い声が聞こえます。
悲鳴も聞こえたような気がしました。
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
出来るだけ道端に転がっている死体を見ないように、
クラウスは歩みを進めます。
・
黒い犬に導かれ、
辿り着いたのは
墓地でした。
クラウス・ツェルネ
”わんっ”
犬が小さく吠えます。
クラウス・ツェルネ
犬の側まで行くと、
そこには
地下へと続く階段がありました。
クラウス・ツェルネ
その階段を犬が足取り軽やかに降りていくので、
クラウスもその後に続きます。
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
下から人の声が聞こえてきました。
クラウス・ツェルネ
クラウスが慌てて階段を降りきると、
そこには小さな部屋があり、
黒い犬が男性の足に噛み付いていました。
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長はそう吐き捨てるようにして言うと、
手にした鉈を振り下ろし、
犬の頭を切り落としました。
クラウス・ツェルネ
頭部を失った犬は、
その形を留めることが出来ず
消えて無くなってしまいました。
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
その言葉を言い切る前に
村長はクラウスの頬を思い切り殴り飛ばしました。
クラウス・ツェルネ
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
村長は目を閉じて、
それから大きく一度深呼吸をしました。
村長
目を開け、ゆっくりと言葉を発しました。
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
それは
いつかどこかで
聞いたことのある
御伽噺と似た内容でした。
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
クラウス・ツェルネ
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
そう言うと村長は
クラウスをもう一度殴りつけ、
馬乗りになり、
首を絞めました。
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
クラウス・ツェルネ
村長
村長
村長
村長
村長
村長
村長
・
・