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あーもんど
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2人が付き合い始めてからも
学校では特に何かが変わった訳ではなかった
学年では
『岩泉、彼女できたらしいよ』
と少し話題になったくらい
けれどそれも数日経てばいつもの話になった
ふたりは普通のカップルだった
一緒に帰ったり
時々〇〇の家に岩泉が来たり
図書室で勉強したり
くだらない話をしたり
それだけだった
母親からの連絡は
あれから来ていない
きっと今度は上手くやっているのだろう
そう思うことにした
そして夏休み
外では朝からセミが鳴いていた
〇〇
岩泉一
〇〇
ふたりは近所のコンビニへ向かっていた
目的はアイス
店内の冷房に少し救われながら
それぞれ好きな物を選ぶ
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
店を出る
袋からアイスを取り出し
ふたりは歩きながら食べる
岩泉一
〇〇
岩泉一
ふふっと〇〇は笑う
セミの声と
溶けていくアイス
なんでもない夏だった
その時
〇〇
〇〇が足を止めた
道路脇の掲示板に
1枚のポスターが貼られていた
ーー夏祭り
〇〇
〇〇はじっと見る
岩泉一
岩泉も立ち止まる
岩泉一
〇〇
岩泉はスマホを取りだした
部活の予定を確認している
岩泉一
〇〇
岩泉一
少し考えている
岩泉一
岩泉一
〇〇が顔をあげる
岩泉一
一瞬迷ってから、〇〇は頷いた
〇〇
岩泉一
〇〇
〇〇はもう一度ポスターを見る
夏祭り
母親と行ったことはない
小さい頃1度だけ誘ったことがある
『お祭り行かない?』
そう聞いたら
『そんなむさ苦しいところ行きたくないわよ』
と笑われた
だからこういう場所に誰かと行くのは初めてだった
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
そういうと、岩泉は黙った
岩泉一
耳が少し赤くなっている
〇〇はそれを見て少し笑った
今週末
ふたりで夏祭りに行く約束をした
夏祭りの日
〇〇はいつもより可愛い服を選んだ
母の部屋を探せば
もしかしたら浴衣があるかもしれない
そう思ったけれど
見つかったのは派手なワンピースばかりだった
結局
自分の部屋にあるワンピースを選んだ
鏡の前で
いつもより少しだけ丁寧に髪を整える
メイクもほんの少し
〇〇
誰に聞く訳でもなく呟いた
集合時間は6時15分
祭りの近くにある神社で待ち合わせだった
スマホで時々前髪を確認しながら
〇〇は岩泉を待った
祭りは7時まで
一緒にいられる時間は
ほんの少ししかない
それでも楽しみだった
6時15分
来ない
きっと部活が少し長引いてるんだ
そう思ってもう少し待つ
6時半
まだ来ない
遠くから、花火の音がした
祭りの最後を飾る花火らしい
空に大きな光が広がる
〇〇
〇〇は神社のベンチに腰を下ろした
周りでは楽しそうに祭りから帰る人が増えていく
6時45分
もう、ほとんど終わりだ
〇〇
部活が忙しいんだ
きっとそうだ
何度も自分に言い聞かせる
その時だった
岩泉一
聞きなれた声
顔をあげる
岩泉くんが、汗だくになりながら走ってくる
岩泉一
息を切らしている
岩泉一
〇〇
〇〇
〇〇は立ち上がる
話を聞くと
部活中に2年生同士が揉め事を起こしたらしい
それを止めるのに時間がかかった
及川からも
『岩ちゃん、行きなよ』
と言われたらしい
それでも、そんな状況で
自分だけ抜ける訳にも行かなかった
〇〇
〇〇は笑った
〇〇
岩泉一
〇〇
少しだけ間を置いて
岩泉一
といった
〇〇
2人は祭りの方へ戻る
幸い
いくつかの屋台はまだやっていた
焼きそば
じゃがバター
りんご飴
花火を一緒に見ることは出来なかった
待っている間は少しだけ寂しかった
でも、悲しくはなかった
岩泉くんは来てくれた
それだけで〇〇は嬉しかった
帰り道
隣を歩く岩泉を見る
汗はまだ少し残っている
〇〇
何となく、手を伸ばしたくなった
手を繋ぎたい
もう少し近くにいたい
そんな気持ちが胸の中に浮かんで
〇〇は慌てて前を向いた
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
〇〇は誤魔化すように笑った
家の前に着く
岩泉一
岩泉がもう一度言う
〇〇
〇〇は笑う
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
帰ろうとした岩泉を
〇〇が呼び止めた
〇〇
岩泉一
〇〇はぎゅっと自分の手を握った
少し迷ってから
〇〇
と呼ぶ
岩泉が振り返る
〇〇
〇〇
その言葉の意味を
2人ともわかっていた
岩泉は少し黙った
岩泉一
〇〇は小さく頷いた
〇〇
玄関の扉が開く
ふたりで家の中に入った
その夜
お互いが求めあった
名前を呼び
確かめるように
翌朝
カーテンの隙間から
夏の光が差し込んでいた
〇〇はゆっくりと目を開ける
隣を見る
はじめくんが眠っていた
〇〇はしばらく何も言わず
その寝顔を見つめていた
昨日までとは、何かが少し違っている気がする
嫌ではなかった
むしろ少しだけ嬉しかった
ふと、母親のことを思い出す
男の人と一緒にいる時だけ
母親は安心したような顔をしていた
離れられなくなって
何度傷ついても誰かを求めて
その気持ちが
少しだけわかった気がした
これが
お母さんが手放せないもの
人の温もり
誰かに必要とされているような感覚
ひとりじゃないとわかる安心感
〇〇は隣にいるはじめくんを見る
〇〇
小さく呟く
でも、母親とは違う
そう思っていた
この時はまだ
〇〇は服を着てデスクに向かった
机の上には、いつものノートとペン
今日は、なんだか書けそうな気がした
昂った感情がまだ胸の奥に残っている
このまま書いてみよう
そう思って、ペンを走らせた
しばらくすると
岩泉一
後ろから声がした
振り返る
はじめくんがベッドの上で
モゾモゾ動いていた
まだ眠そうだった
その様子を見て〇〇はふっと笑う
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉は上半身を起こす
目を擦りながら、〇〇を見る
岩泉一
〇〇
〇〇
〇〇
岩泉一
まだ寝ぼけているのか
ぼーっとしたまま〇〇を見ている
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇
〇〇
〇〇少し考えてから
〇〇
〇〇
適当に聞いてみる
少しだけ考えていた
岩泉一
〇〇
〇〇は吹き出した
〇〇
岩泉一
笑いながら
〇〇はまたノートに目を移す
〇〇
岩泉一
〇〇
〇〇
〇〇はペンを頬に当てる
〇〇
考え込む
その隣で、はじめくんも何か考えているようだった
いや
もしかしたら何も考えていないかもしれない
しばらくして
岩泉一
岩泉一
〇〇の手が止まった
〇〇
何となく
少しいいなと思った
〇〇はノートの端に
小さくその言葉を書き留めた
ーーおかえり。
〇〇
後ろを振り返る
〇〇
返事がない
見るとはじめくんは目を閉じていた
〇〇
意外と朝に弱いタイプなんだ
〇〇は小さく笑った
そしてもう一度ペンを握る
朝の静かな部屋で
〇〇は続きを書き始めた