これはあるお話
翔の父
げほっ、げほっ…
翔
お父さん、無理をしないでください
翔の母
そうよ、あなた
翔の父
げほっげほっ。
翔の父
いつも迷惑かけてごめんな…げほっ…
翔の母
いいのよ
翔
いいんだよ
翔の父
あー、もう薬が切れているようだ
翔の母
あらっ。じゃあ、翔、隣町になっちゃうけど薬買ってきてくれる?
翔
あぁ、いいよ
翔の父
いつもすまんな…今日は隣町まで…げほっ…
翔
(父は今重い病気で苦しんでいる。少しでも父の役に立ちたい。だから父のためならなんだってする)
翔の母
じゃあ、気おつけて行ってきてね。
翔の父
隣町は初めてだろ。ひとつ注意して置くことがある。げほっ…
翔の母
あーあ、あなた、無理しないで。私が説明するから。
翔の父
ごめんな…
翔の母
この町から隣町に入る時、お地蔵様があるのよ。
翔
うんうん。
翔の母
お地蔵様を目印に行くのよ。
翔
うん、分かった。それだけ?
翔の母
いいえ、ここからなの。
翔の父
そうさ…ここから…
翔
な、何?
翔の母
行きはいいの。薬を買った、その後。
翔
あと…?
翔の母
隣町からこの町に来る時もお地蔵様を頼りにするの。その後なのよ。ここからなの。
翔
だ、だからなんだよ。勿体ぶらないで教えてくれよ…。
翔の母
目印のお地蔵様を超えた後、翔の知っている人の声が交互に聞こえてくる。でも、絶対に振り返ってはだめ。
翔の母
振り返ったら…翔は…
翔の母
うぅ…
翔の父
お前、落ち着け。翔ならだいじょう…ゴホッゴホッ…
翔
ま、まぁ分かったよ。後ろを振り返らなければいいんだな。了解。
翔の母
あー、そうそう、もし振り返ってしまった時のために、これを渡しておくわ…
翔
これ…は…?
翔の母
これは呪われないための十字架のネックレス。あなたを守ってくださるわ。
翔の母
でも、これにできるだけ頼らずに自分で頑張るのよ。本当に聞くかわからないのだから。
翔
分かりました。お母さん、お父さん、行ってくる。
翔の母
はい、気おつけてね
翔の父
気おつけろな…ゴホッ