車の男に置いて行かれた事実を受け止めきれず
しばらく私はその場に立ち尽くした。
黒髪の柚
突然部屋の奥からのそりと現れた男が、黄ばんだ歯を剥き出しにしながら二チャリと笑う。
ボサボサのフケだらけの髪、でっぷりと太って脂ぎった肌
そして人見知り特有の、微妙に視線の合わないギョロリとした目がこちらを捉えた。
……コレが、本物……?
私が恋焦がれていた殺人鬼って、こんな男だったの……?
ポケットに入ったままになっていた、瑠奈から貰った防犯グッズを
私は無意識に握りしめていた。
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様はそこら辺に転がっていた小さいテーブルをいそいそと床に立て
同じく床に散乱し、他の荷物に紛れていた座布団を探し当て
ボフボフと埃を叩いて床に敷き、パッパッと表面を払った。
クビカリ様
クビカリ様
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
そう言ってクビカリ様は、ドタドタと冷蔵庫の方へと走っていった。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
再び足音を激しく鳴らしてテーブルの向こう側へと移動したクビカリ様は
少々くすんだコップに入ったオレンジジュースをテーブルに置き
こちらにズイッと寄せた。
クビカリ様
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
遠い目をしながら何やら独り言を呟くクビカリ様。
……やっぱり、この人に殺されるの嫌かも知れない……
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
一瞬不穏な目をしたクビカリ様は、一転して満面の笑みを浮かべ、私の肩を叩き
クビカリ様
そう言って、台所の魔窟を発掘する作業に取り掛かってしまった。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
そっと立ち上がり、スマホの電話画面を開きながら出口へと進む。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
いつの間にか背後に立っていたクビカリ様が、低いドスの聞いた声で呼びかける。
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
スマホを持つ方の手首を掴みながら
キスができそうなほどに顔を近づけてまくしたてる。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
興奮状態で瞳孔が開き、鼻息を荒く立てた状態でしばらく黙るクビカリ様。
そして……
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
満面の笑みが戻り、私の両手を掴んでシェイクハンドする。
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様はシェイクハンドを解き……
獲物を見る猛禽類のような目をしながら、私の事をギュッとハグした。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
いきなりクビカリ様の怒りが爆発し、私の髪を掴んで上に引き上げる。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
先ほどの猛禽類の目から、道端のゴミを見るような目つきへと変わった。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
片手で髪を掴まれたまま、もう片方の手で私は往復ビンタされ続けた。
クビカリ様
クビカリ様
黒髪の柚
黒髪の柚
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様の怒りはまだ収まらないようで
振るう暴力が、ビンタからお腹への膝蹴りへと変わる。
黒髪の柚
黒髪の柚
あまりの衝撃に耐えきれず、ほとんど何も入ってない胃から
胃液混じりの吐瀉物が口から噴き出てきた。
クビカリ様
クビカリ様
振り払われた私の体は、近くの家具に倒れ込む。
頭が硬いものに直撃して、目から火花が出るような錯覚を感じた。
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様
クビカリ様は乱暴な手つきで、意識の朦朧としている私の手足を紐で縛り
そのままドタドタと別の部屋へと小走りで向かっていった。
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
黒髪の柚
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