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じいちゃんのタイムマシーン

119 - 第百十九話:明日夢への手紙

♥

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2022年09月08日

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2014年7月24日

あの事故から五日

私は医者も驚くほどの回復を見せ

少しずつではあるけれど

生まれたばかりの明日夢に会いに新生児室まで行ったり

ちゃんと自分でおっぱいをあげたり沐浴もして

本来ならできなかったはずのことを一通り体験することができた

丈ちゃんはほぼ毎日

平日は仕事が終わるとここに来て

休日も殆どの時間をここで過ごしていた

丈太郎

何か欲しいものある?

愛紗

欲しいもの?

丈太郎

ゼリーとかジュースとか

丈太郎

あれば買ってくるけど

愛紗

丈ちゃんの胸いっぱいの愛が欲しい

丈太郎

はいはい

ちょっとした冗談に笑顔で答えてくれる

丈太郎

ぎゅーってすればいい?

愛紗

ふふふ

愛紗

お願いします

本当に大切な人と

大切な人との間に生まれた宝物

私は今

世界で一番の最高に幸せな時間を過ごしている

そんなことを毎日のように思っていた

愛紗

あ、そうだ

丈太郎

ん?

愛紗

紙とペンが欲しい

丈太郎

紙とペン?

丈太郎

どんな?

愛紗

字が汚いから……

愛紗

ペンは擦ると消えるやつ

丈太郎

紙はどんなのがいいの?

愛紗

便箋みたいなの……

愛紗

売店にあるかな?

丈太郎

どうだろう?

丈太郎

封筒は?

愛紗

いる!

丈太郎

ふふふ

愛紗

何で笑うの?

丈太郎

字が汚いって……

丈太郎

自覚あったんだ?

愛紗

ひどーい!

丈太郎

はいはい

愛紗

もー!

丈太郎

買ってきますよ

丈ちゃんはそう言って

院内の売店まで買いに行ってくれた

どうしても書きたいことがあって

どうしても自分の言葉で残しておきたくて

まだ動けるうちに……

まだ意識のあるうちに……

書き記したいと思った

丈太郎

あったよ

丈太郎

あんまりかわいいのはなかったけど……

愛紗

これでいいよ

愛紗

ありがとう

丈太郎

手紙、書くの?

愛紗

うん

どうしても伝えたかった

いつか自分の口で

自分の言葉で伝えられたら……

そう思ったけど

私には不安に思うことがあった

明日夢がタイムマシーンを使って過去に飛んだのは

私が事故に遭って目を覚まさなかったから

意識のない中で明日夢を産んで

それからずっと眠り続けていたから……

最初は単純に

私と話をしてみたかったからだと言っていたけど

何度も会って話をするうちに

私のことを助けたいと思うようになった

私が事故に会う前日に飛んで

事故現場には行かないようにと言うつもりだったのだろう

でも実際に辿り着いたのは事故が起きる当日で

明日夢は何とか私を助けようとして

私を庇ってトラックと衝突……

その後、私は一時的に意識を失ったけど

こうして目覚めることができた

明日夢が助けてくれたお陰で

私の未来は大きく変わった

だけど……

私は再び意識を失う気がしてならなかった

過去を変えれば未来が変わる

明日夢に助けられて私の未来は変わったけれど

もしこのまま順調に回復して退院できていたとしたら

明日夢が過去に飛ぶ理由はなくなるはず

でも私の記憶の中の明日夢は

明日夢

大好きな母ちゃんに会うために……

明日夢

タイムマシーンで来たんだよ

事故に遭う前と変わらなかった

私は助かって目覚めたのに

それでも会いに来たってことは……

愛紗

できた……

愛紗

丈ちゃん

丈太郎

ん?

愛紗

これ渡して

丈太郎

もう書いたの?

愛紗

うん

愛紗

十八年後……

愛紗

明日夢が戻ってきたら……

明日夢

母ちゃんの字ってさぁ……

愛紗

やっぱ汚い?

明日夢

ちょっとね……

明日夢

でもホンのちょっとだよ?

愛紗

フォローになってないし!

明日夢

でも俺は好きだな

愛紗

褒めたつもり?

明日夢

本心だよ!

愛紗

本当かなぁ

明日夢

じゃあさ!

明日夢

いつか俺に手紙、書いてよ

明日夢

俺の宝物にするから

明日夢

絶対に大切にするよ

愛紗

へいへい

愛紗

気が向いたらね

あの頃は

まさか本当に手紙を書く日が来るなんて思っても見なかった

普通に言葉で伝えられると思っていたから

もしかしたら

このまま意識を失うことはないかもしれないけど

そうなったら二人で読めばいい

ちょっと恥ずかしいけど……

十八歳になった明日夢と二人で……

丈太郎

無事に戻れたのかな?

愛紗

きっと戻ってるよ

愛紗

大丈夫……

丈太郎

そうだね

明日夢が未来を変えてくれた

だからこうして思いを残すことができた

未来に戻った明日夢の無事を祈りながら

私はこれからも生きていく

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