テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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【第五章】その背に手を伸ばして

第7話 - 4話「その音は背表紙」

101

2022年03月10日

#ドラマ

#ミステリー

#ワイテルズ

ミッドナイト@

ばしっ、と乾いた音が響く。

栞

…っ

母

あんたそんなんでいいと思ってるの！？

ピアノを、間違えたから。

母

あんた、

母

この前のコンクール上位入選だったでしょう？

母

入賞じゃなきゃ全国にはいけないのよ分かってるんでしょ！？

栞

……っ！

また乾いた音が鳴る。

栞

ごめんなさいっ

栞

ごめんなさｯｯ…！

母

謝っても仕方ないわよ！

栞

うっ……！

いつも、そう。

自分から努力しなきゃいけないものが嫌いだったから、

だからピアノも長くは続かなかった。

いつも逃げてばかりだ。

努力することから、

いつも、

いつも。

シャークん

おーい聞いてるか〜

えっ？

シャークん

大丈夫かよ‪w

栞

あ…

シャークん

まぁいいや

シャークん

俺はシャークん

シャークん

WTの、シャークん

栞

……栞です

シャークん

よろしくな‪w

栞

…っ

ギザ歯で声と身長が低い、男性。

やっぱり、どっから見てもワイテルズなのに…

栞

……あ

栞

あの、

シャークん

ん？

栞

なんで、ワイテルズって名乗らないんですか？

シャークん

…？

シャークん

…(´・ω・)ﾅﾆｿﾚ

栞

(ワイテルズを…知らない？)

栞

(そんな事が……？)

シャークん

俺達が違う組織に見えるか？

栞

……！はい

シャークん

それは多分…

シャークん

お前が"過去の俺達"を知ってるからだな

栞

……過去？

シャークん

ああ

栞

えっ…未来人？

シャークん

‪w‪w‪w

シャークん

そういう事だな笑

栞

えっ……

シャークん

詳しく説明するわ‪w

シャークん

まず、

シャークん

俺達"WT"を作ったのは創造神様

シャークん

"ミッドナイト"だ

栞

…ミッドナイト

シャークん

そして創造神様が憑依した人間が"真夜中"だ

栞

…真夜中……

栞

真夜中！？

シャークん

気づいたな？

栞

はい、担任の旦那さんです

シャークん

ということはだ

シャークん

創造神様とWTは未来にいる

シャークん

そして、それらに干渉できるのは

シャークん

"救済"を必要とする人間…

シャークん

つまりお前のような人間だな

シャークん

と、創造神様に憑依された人間

シャークん

真夜中だけ

栞

な、なんか難しいですね…

シャークん

ああ、ムズいな

栞

じゃあ、見た目がワイテルズと同じなのはどうしてですか？

シャークん

それは創造神様の前世がワイテリスn……

栞

…………？

シャークん

と、とにかく俺達はワイテルズじゃねぇんだ

シャークん

わかったな？

栞

ﾊ､ﾊｲﾜｶﾘﾏｼﾀ

シャークん

よろしい

シャークん

じゃあ早速救済を始めるぞ！

栞

……

シャークん

じゃあ、お前に質問をする

栞

…？は、はい

シャークん

…

「クラスでいじめはあるか？」

栞

……っ！！？

栞

なん…で……それを…？

───うちのクラスには、

───酷い虐めがある。

彼女の名前は「涙」。

「涙」と書いて、「ティア」。

明らかにキラキラネーム。

だからそのせいで…………

A子

お嬢様ぁぁ‪w‪w

B香

キラキラ！‪w

C美

ティアラちゃーん‪w‪w‪w

涙

やめてよ…そんなに言わなくていいじゃん……

いつもいじめられていた。

栞

(いじめる人バカだなー)

そしてしっかりとヘッドホンを付けて向き合わない私。

教室の後ろから音が鳴る。

ティアの身体を蹴る鈍い音。

うっ、とくぐもった呻き声。

クラスメイトの笑い声。

私も、必要に応じてくすっと笑う。

だって、

そうしないと面倒だからね。

栞

(はぁ…面倒臭い)

栞

(無能ってヤダな)

栞

(私は普通でいないとな)

私って、ほんとに、

ほんとに"普通"…？

栞

…………

シャークん

…いじめ、あんだな？

栞

……っ

栞

…だって。

栞

だって、みんないじめてるし、

栞

私もあの子の名前変だと思うしなんか陰気臭いし！

栞

関わりたく、ない、から

栞

…だ、から

栞

そんな話を今…しないでくださいよ

シャークん

…

シャークん

……。

栞

…え

シャークんさんが、ふっと表情を和らげた。

シャークん

お前、関わりたくない奴の情報をよくそんなに喋れるな‪w

栞

…あ…

シャークん

気にしてるんだろ？‪w

栞

…ぅ、いや

涙

栞

…っ

シャークん

な？

栞

……はい

シャークん

じゃあ、お前は恐れを乗り越えて話しかけるべきだ

シャークん

そいつの背に、手を伸ばすべきだ

栞

…………！

栞

で、でもっ

シャークん

頼む

栞

……

いつになく真剣なシャークんさん。

気が付くと頷いていた。

シャークん

よし！決まり！

栞

…(でも、怖い)

栞

(もし、ティアに話しかけて、私が虐められたら)

栞

(私は…)

シャークん

じゃあ、今日は本そのものについての話をするぞ

栞

"本そのもの"…？

シャークん

ああ

シャークん

本ってのはな

シャークん

色んな物語があるよな

栞

…はい

シャークん

たまに、俺はその物語ひとつひとつが

シャークん

1人の人間に見えてくるんだ

栞

……人間？

シャークん

ああ

シャークん

逆に、1人の人間の、人生も

シャークん

1冊の物語に見えてくる

栞

…はあ

シャークん

ひとりひとり持ってる物語があんだよ

シャークん

それをな、

シャークん

お前もティアも持ってる

栞

…私も……あの子も…？

シャークん

だから

シャークん

お前に、手伝ってほしい

栞

な、何……を？

シャークん

ティアの物語を"読んで"やってほしい

栞

……！

シャークん

キラキラネームで上塗りされた人間性を、

シャークん

人生という名の物語を、

シャークん

ティアという本を

シャークん

読んでやってくれないか

栞

…………

本。

物語。

ティア。

──その背表紙に、手を伸ばす。

栞

…私が、ティアに触れる

栞

人間性に、その物語に

シャークん

そういう事だ

きっぱりと彼は胸を反らす。

シャークん

じゃ、俺はもういくわ‪w

栞

え、でも

シャークん

でもは無し

栞

しかしっ

シャークん

しかしも無し

栞

but…

シャークん

英語はわかんねぇよ！！

実は……

私も、人間を音楽に例えようとした事がある。

悲しい音楽、楽しい音楽、暗い音楽、変拍子の音楽。

それを、人間に重ねて生きていた事が。

本だって、音楽と同じなのかも知れないな。

ただ……

ティアの物語を読むって、

物理的にどうするんだろ…

……To be continued

【第五章】その背に手を伸ばして

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最後の物理的にで吹いたw

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