トーマ
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
トーマ
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
トーマ
進次郎
進次郎
アルラ
アルラ
ぼくは
資産家である父と 母の間に生まれた
ひとりっ子だった
両親は
ぼくが言うことを なんでも叶えてくれた
新しいゲームが欲しいと言えば すぐ手に入ったし
今晩はおいしいレストランに 行きたいと言えば
必ずそこに連れていってもらえた
だが
ぼくには 金で動かせない
大きな障壁があることを 感じはじめていた
中学校に上がる頃
ぼくは 自慰行為を覚えた
その快楽が 頭に福音をもたらすようにも思えた
それと同時に 一種邪な願望が
頭をもたげた
「愛する人としたい」
ぼくは満ち足りた生活の中で それだけは金で買えないと
感じはじめていた
だが 臆病者のぼくは
一歩を踏み出すことが できなかった
たしか高校に入る少し前だったか 前々から少し気になっていた子に
恐る恐る声をかけた
「ぼくはきみのことが好きだよ」 と
けれど彼女はこう言った
「アルラくんとは友達でいたい」
それは 思春期のぼくを
完膚なきまでに うちのめすには
じゅうぶんな材料だった
ただ単に失恋したというより
薄々感じていた 「金だけではどうにもならないことがある」という障壁を
その子の返答は見事に 現実に打ちたてたのだった
それまで金という盾を もっていたぼくは
金では買えないものが あると知った
そして身を守る手段を 失っていた
「もうだめだ、死にたい」
ぼくはそんな思いを持って
前住んでいた 市内のマンションの
エレベーターで 最上階に向かった
最上階からは 階段室を抜け
屋上に出ることができる
屋上から飛び降りれば
ひと思いに死ぬことが できるだろう
ぼくは欄干を 手で握って
目を閉じ 身を乗り出した
その時
「危ない!」と 声が聞こえた
詩乃
アルラ
そこにいたのは 中学1年生の詩乃ちゃんだった
詩乃
アルラ
詩乃
詩乃
詩乃
アルラ
ぼくは自らの行為を 後悔するとともに
詩乃ちゃんに対して どうしてそこまでしてくれたのか
疑問に思った
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
そう言って ぼくに微笑みかける少女
アルラ
詩乃
詩乃
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
そう言って詩乃は
階下へ降りていった
ぼくは 再び
マンションに足を運んだ
そして 詩乃ちゃんのいる階で
彼女に会えないか 胸を躍らせて 待っていた
きっと彼女は ぼくを好いてくれるはず
そんな盲信を 抱いていた
詩乃
詩乃
ジャージ姿の彼女は ぼくに気づいた
アルラ
アルラ
詩乃
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
詩乃
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
詩乃
詩乃
アルラ
ぼくはえへん、と 咳払いをした
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
詩乃
詩乃
アルラ
アルラ
アルラ
アルラ
まるでベタなドラマの ワンシーンみたいに
ぼくは頭を下げ
彼女に右手を差し出した
詩乃
詩乃
詩乃ちゃんが 困惑している
でも今は 返事を聞かなくては
ぼくはぎゅっと目を瞑り
ぴしっと手を伸ばした
するとその手に
詩乃ちゃんの手が 優しく重なった
コメント
4件
主人公の過去が知れて良かったです✨ 続きが凄く気になります…!