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海
海
海
千春──彼女の名前を口にしたのはいつぶりか
少なくとも 彼女が死んでからはいっさい口にしていない
高層ビルの屋上
今から俺はここから飛び降りる
そして 千春のもとへ行くんだ
海
そんな思いを夜風に乗せ
目を瞑り 前に体重をかけた──
目が眩むような真っ白な光
背中には冷たい感触
目を開けずにはいられなかった
海
澄んだ青空 眉を潜める女性
俺は…死んだ、のか…?
海
海
海
海
これは…生きているパターンだ
でも ここはどこだ?
死んでないとしたら そりゃあ 生きているんだろう
女性がおどおどしながら話しかけてきた
海
海
海
女性は一呼吸置き こう言った
かい……?
確かに女性は俺の名前を言った
海
海
海
海
待てよ
この女性の顔
…似てる
似てるぞ
海
おっと危ない
(一応)初対面の人に呼び捨ては、な
明らかに動揺している
千春
か細い声で女性は言った
それは 涙混じりの声だった
海
久しぶりにみた彼女の顔
今 確かに千春はここにいる
だが………
海
海
海
海
千春
本当ににつかぬことだ
千春さんは 俺の想う千春でいいのか?
人違いだったらとんだ無礼者だ
千春
千春
千春
海
海
海
…はっ
いや まだわからないじゃないか!
でも 千春さんは笑っていた
千春
千春
海
千春
千春
海
海
海さんが死んで 千春さんが生きている世界
千春が死んで 俺が生きている世界
俺の想う千春と 千春さんの想う海さんは きっと───