彼方
実は、俺………
キーンコーン……
彼方
…あ、チャイム
真冬
え、えっと…
彼方
いいよ、戻りな
真冬
でも……
彼方
話ならいくらでも出来るでしょ、ほら学業優先だから
真冬
…わかり、ました…
真冬
……あ、じゃあ
真冬
放課後に、ライブハウス行きましょうか?
彼方
!
真冬
僕、今日はあいにく用事があって一緒に帰れないので、彼方さん迎えに行って、家で聞きますよ
彼方
…うん、ありがと
彼方
待ってるから
真冬
はい、じゃあまた!
彼方視点
放課後、ライブハウスの控え室で少し休んでいた
父さんがこの町にいるとわかってから、俺はオーナーに頼んで、ここに少し居候させてもらってる
オーナーも理解のある人だから、すぐに了承してくれた
彼方
…………
俺は無言で、前にもらった真冬からの手紙を眺める
彼方
(真冬……)
彼方
(…大丈夫、ちゃんと話せる)
彼方
(昔の、何もできなかった俺とは違うんだから)
オーナー
だから、急すぎるんですって!
彼方
っ、オーナー…?
突然聞こえたオーナーの大きな声におどろいて、俺は部屋を出た
オーナー
だから、どうして取り壊しになるんですか!?
これは決定事項です、もうあなたが何かを言っても変わらないんですよ
彼方
(取り、壊し……?)
オーナー
売り上げだって上がってきている、なのに…!
撤去まで時間はない、頼みますよ
オーナー
ちょっと!!
彼方
……オーナー?
オーナー
か、彼方………
彼方
その、取り壊すって…?
オーナー
…これ
そういって渡されたのは、とある書類
オーナー
元々ぼくは、本当のオーナーの代理みたいな立場だったんだけど
オーナー
その人がこの土地の権限を他の会社に渡しちゃって
オーナー
その人たちが、ここのライブハウスを取り壊しにしろって…
彼方
えっ………?
書類の文字を、隅から隅まで見渡す
すると、土地の権限をもらった会社の名前に見覚えがあった
彼方
(ここ、父さんの会社の傘下にある会社……?)
『彼方』
彼方
っ!!
突然脳内に流れてきた、父の呼ぶ声
彼方
(…真冬、真冬……っ!)
俺は無意識に、真冬に電話をかける
プルルル、プルルル……
真冬視点
真冬
はぁっ、はぁっ……
真冬
(手伝いが終わらなくて、つい時間がかかっちゃった…)
真冬
早く彼方さんに……
僕が校門に目をやると、そこにはとある人が立っていた
真冬
っ、あなた…文化祭のときの……!
部下
…やはりあなたが、あの時の女性でしたか
真冬
(やっぱり、バレてる…)
真冬
何の用ですか?僕、今急いで…
部下
社長…青波さんから、あなたへの伝言を預かっております
真冬
は…?
部下
"今後絶対に彼方さんに近づくな"
部下
"これを守らなければ、あなたも彼方さんもただでは済まさない"と
真冬
っ……!
青波視点
青波
はい、えぇ……
青波
…そう、少しいい方に風向きが回り出していましてね
青波
先ほども話した通り、次の出張には同行させますよ
青波
当面帰国はいたしませんので
青波
彼方は、退学させたいと思ってます
プルルル、プルルル……
彼方
っ……
彼方
真冬、真冬…
彼方
助けて……っ