2010年8月27日(金)
私が静さんとの面会に向かっていた頃
芹沢さんも警察署に向かっていた
あすみさんの母親である
井川かすみさんと話をするためだった
芹沢さんも取調室を使わせてもらえることになり
私と同じように一時間だけ使用の許可を取っていた
芹沢大和
長野巡査長
安田巡査部長の言葉通り
かすみさんは頻繁にトキ子さんのことを気にしていて
井川かすみ
井川かすみ
既に亡くなっているはずのトキ子さんのことを
まだ生きているかのように話続けていた
警察官B
警察官B
井川かすみ
警察官B
取調室の扉が開き
ゆっくりと中に入ったかすみさんが
芹沢さんの姿に驚き声を上げる
井川かすみ
現場で話した時とは別人のように
かすみさんは落ち着いた様子で
芹沢さんの言葉にも素直に従い
席に座って淡々と話を始めた
話はかなり昔まで遡り
かすみさんの幼い頃の話になった
かすみさんの家庭環境はかなり複雑で
かすみさんが幼い頃に両親が離婚
数年間は母親と二人で暮らしていたが
母親が再婚し新しい父親と三人で暮らすことになった
新しい父親はとても優しい人で
幸せな毎日を過ごしていた矢先
実の母親が交通事故で他界し
血の繋がらない父親との二人暮らしとなってしまう
その後その父親も再婚し
父親と新しい母親との間に子供ができた途端
優しかった父親の態度が豹変した
母親からほぼ毎日のように浴びせられる嫌みや暴言の数々
父親にその事を相談しても
かすみさんを無視するように話をそらし
遂には家を出ていくように言われてしまった
血の繋がらない父親と血の繋がらない母親
そして全く血の繋がらない弟から逃げるように
かすみさんは親戚の家へ
そこから怒濤のたらい回しに遭い
酷い時にはわずか三日で追い出され
行き着いた先は児童養護施設だった
この時かすみさんはまだ中学生だった
芹沢大和
井川かすみ
井川かすみ
淡々と話すかすみさんの姿に芹沢さんは驚いていた
現場での取り乱していた姿が嘘のように
落ち着いた様子で話を続けていた
芹沢大和
井川かすみ
芹沢大和
井川かすみ
井川かすみ
家にまだトキ子さんがいると思い込んでいるのか
娘にあそこまで酷いことをしておいて
家に帰れるはずはないのだが
素直に話す気になったのは
そうすれば一日でも早く家に帰れると思ってのことだったようだ
十三歳で児童養護施設に入所したかすみさんは
そこから高校にも通い
高校を卒業と同時に看護学校に入学し養護施設を退所
看護学校の寮に入所し
寮と学校を往復する日々を過ごした
国家試験にストレートで合格し
見事、看護師になったかすみさんは
たまたま怪我で病院に運ばれてきた悟志さんと出会う
大した怪我ではなかったためわずか数日の入院だったが
悟志さんからのアプローチに答える形で交際がスタート
小さい頃から丈夫で
大きな病気もせずに育ったかすみさんをトキ子さんも気に入り
二十五歳で結婚することになった