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学生生活でほとんどの生徒が盛り上がる体育祭がいよいよスタートした。

保護者が自分の子供の晴れ姿を見に来ている。

生徒たちは各係の活動で忙しそうにしていた。

この学校には、屋台が来てポテトやチョコバナナ、かき氷が販売されている。

個人競技は徒競走、障害走、借り人競争の順に行われる。

団体競技は綱引き、竹取物語、台風の目の順番に行われる。

その後に、応援合戦、全員参加のムカデ競争、選抜式のリレーが行われる。

それと同時進行で係の仕事があるため、体育祭は忙しいのだ。

…ちなみに私とあいつは一緒のチームだ。

成瀬春樹

先輩は徒競走ですよね!

咲野藍

そうだけど

成瀬春樹

先輩喧嘩してるから運動神経いいので、絶対1位ですよ!!

なに勘違いしてんだこいつ。

私は走りたいから徒競走を選んだわけではなく、速く終わらせたいから徒競走を選んだのだ。

小日向芽依

せめて最下位はやめろよー

姫沢咲良

そうよ

咲野藍

うるせ

成瀬春樹

私は「喧嘩ができる」というわけで、「運動神経がいい」というわけではないのだ。

だから、体力テストも最低ランクである。

係の人

よーいドン!

ピストルの音と同時に体を動かす。

土を蹴り、全速力で走る。

白線の、自分のラインに沿って走る。

気づいたときには最下位だった。

どうせ最下位のやつが努力しても無理だ。

成瀬春樹

先輩頑張ってくださーい!

成瀬春樹

僕の大好きなせんぱーーーーーい!!

何を言ってんだあいつは。あんな大声で。

周りの人たちが不審がっている。

馬鹿かあいつは。

笑みが溢れる。

あいつに応援されたら体が別人のように動いた。

雷鳴のように走り、前のやつの背中が見えた。

咲野藍

努力は、実るかもしれないな…

ゴールに着いた体は、鼓動が早くなっていた。

成瀬春樹

先輩、5位です!

小日向芽依

最下位は免れたじゃん、すご

姫沢咲良

良かったわね

咲野藍

ちょっと、休憩…

なれない運動量に体が追いつけていない。

成瀬春樹

でも、先輩喧嘩できるのに…

小日向芽依

小日向芽依

あー!

小日向芽依

こいつ、喧嘩できるけど運動神経はよくないんだよ

成瀬春樹

それ、本当なんですか?

姫沢咲良

本当よ、私らも初めて聞いたときはにわかには信じられなかったけど

姫沢咲良

私たちの中で唯一運動できるのは芽依だけよ

咲野藍

まじ死ぬ

はー、はー、はーーー。

成瀬春樹

先輩可愛かったですよ!

咲野藍

う、る、せーー

成瀬春樹

頑張りましたね!先輩!

私は最下位を免れたことが意外にも嬉しかった。

次は障害走である。

芽依と咲良が出る競技である。

小日向芽依

咲良行くぞ―

姫沢咲良

はいはい

成瀬春樹

お二人共がんばってくださいね―!

咲野藍

体育祭なんてくそくらえ

体育祭なんて糞だ。

陽キャの祭りだ。

あちこちで陽キャが騒いでいる。

だから嫌いなんだ。

係の人

よーいドン!

障害走は、障害物が置いてありそれをかいくぐってゴールする競技だ。

小日向芽依

ほっ!よっ!

芽依は持ち前の運動神経で、1位でゴールした。

咲良は予想通り最下位だった。

姫沢咲良

体育祭なんてくそくらえ

この性格でなぜ学校のマドンナ的なものなのかが分からない。

…次は借り人競争だ。

成瀬春樹

先輩!頑張ってきますから僕の勇姿見てくださいね!

咲野藍

断る

成瀬春樹

もしお題が「大切な人」だったら先輩連れていきますから!

咲野藍

まじでやめろ

この陽キャの祭りで目立つのは嫌だ。

まぁ全員捻ればいいが、揉め事はあまり起こしたくない。

放送係

さぁいよいよ!毎年盛り上がる借り人競争です!!

放送係

スタートしました!

一斉に男子がスタートした。

あいつがお題をめくる。

小日向芽依

お前のこと持ってったりしてな

咲野藍

黙れ

成瀬春樹

…!

お題をめくると、あいつは顔が明るくなった。

咲野藍

(嫌な予感しかしない)

あいつがこっちに来る。

嘘だ。絶対私じゃない。

成瀬春樹

先輩、ちょっと我慢してくださいね

成瀬春樹

よっと

そう言うとあいつは私を軽々持ち上げ、走った。

放送係

おっと!?

放送係

ここで成瀬春樹選手!校内1位ヤンキーの咲野藍を持ち上げた―!!

放送のやつが話題にしたのはやっぱり私だった。

こうなるから嫌なんだ。

ほんとに死ね

成瀬春樹

先輩、スピードちょっと速くなりますね

咲野藍

お前後でボコボコにする

成瀬春樹

はは、こわ〜い

「こわい」とか言いながら笑っていやがる

こいつはほんとに不思議なやつだ。

普通私に「ボコボコにしてやる」とか言われたら一般人は腰を抜かすのだが。

私の心臓は、意思に反して早くなっていた。

放送係

ここで春樹選手なななんと!?1位でゴールだぁぁぁ!

成瀬春樹

先輩、1位ですよー!!

咲野藍

いいから速くおろせ!!

成瀬春樹

分かりましたから、暴れないでください!!

走っているときも感じたが、こいつは運動神経がいいんだなと思う。

放送係

ここで1位でゴールした春樹選手に聞いてみましょう!

放送係

春樹選手お題は何だったんでしょうか!?

全員の視線が今度はこいつに集まる。

咲野藍

(余計なこと言うなよ…)

成瀬春樹

秘密です!

放送係

何という回答だぁぁぁぁ!

「余計なこと言うな」ってそういうことじゃねぇよ!!!

成瀬春樹

走ってるときの先輩の顔可愛かったです!!

咲野藍

うるさい、とっととあんたは1位のところ行きなさい

成瀬春樹

は〜い!

私は自分の足で、自分のテントに戻った。

帰る途中で、まだ心臓がドキドキしていた。

咲野藍

くそ…!

壁を拳で叩く。

咲野藍

なんでこんなにドキドキしてんの…

どうやらあいつと一緒にいるせいで、体も壊れたようだ。

その後無事に団体戦も終わり、昼になった。

成瀬春樹

先輩屋台でいろんなもの買ってきましたよ〜!

成瀬春樹

チョコバナナ、りんご飴、フルーツ飴!

成瀬春樹

残念ながら、クレープはなかったんですけど…

成瀬春樹

どれがいいですか?

咲野藍

なんでお前私の好物が甘いものってわかってんの?

咲野藍

怖いんだけど…

たしかこいつに私の好物の話は1回もしたことがないはず。

怖すぎだろ…

成瀬春樹

そんなことより!!どれがいいですか!?

咲野藍

……チョコバナナ

成瀬春樹

ふふ、はーい!どうぞー!

咲野藍

お前…!自分で食うわ!!

成瀬春樹

え〜…!折角先輩に「あーん」したかったのに〜!

咲野藍

死ね

成瀬春樹

じゃあ、ちょっとだけあーんしてもいいですか?

咲野藍

ちょっとだけもくそもないだろ

藤岡知子

ふふ、藍ちゃんも春樹くんのお陰で変わったわね

藤岡知子は過去の藍と現在の藍を比べていた。

放送係

これから選抜リレーを行います、選手の人はスタート地点に並んでください。

お昼の時間が終わりアナウンスが入った。

次はリレーである。

リレーは運動神経がいい人や、体力テストの結果がいい人で選ばれる。

成瀬春樹

じゃ、先輩行ってきますね!

咲野藍

あんた、リレーの選手なの?

初めて知った。

成瀬春樹

そうですよ!しかもアンカー!

咲野藍

1番アンカーにしちゃだめなやつだろ

小声で言ったのであいつには聞こえなかった。

成瀬春樹

行ってきまーす!応援してくださいね!

咲野藍

誰がするか

スタート位置に並んでいる。

最後に並んでいるのでアンカーというのは嘘ではなさそうだ。

私があいつを見るとあいつは笑顔で手を振ってきた。

前の私なら気味悪がってただろうが、何故か今はそんな悪い気持ちはしなかった。

放送係

さぁさぁ!いよいよ体育祭も大詰め!!

放送係

これから行われるのはえり優れた者たちがガチで戦う

放送係

選抜リレー――――!!

放送係の声でさらに盛り上がる。

生徒は係活動を忘れて、保護者は日々の疲れを忘れてあちこから歓声が聞こえた。

放送係

スタートしましたーー!

リレーがスタートした。

といっても、あいつはアンカーなのでそれ以外は興味がなかった。

放送係

バトンがアンカー!期待の新星成瀬春樹選手に渡りましたー!!

バトンがアンカーに渡った。

さすが運動神経がいい人は違うなと思った。

フォームや、力の使い方が根本から私とは違うのだ。

これなら1位だな。

目を逸らそうかと思った次の瞬間―

成瀬春樹

はぁ。はぁっ。

放送係

おっと!?春樹選手がその場に倒れ込みました!!

放送係

一体どういうことなのでしょうか!?

咲野藍

…!あいつ…

馬鹿か私は。

私を抱えて走るなんてそんなの足にくるに決まってるんだ

つまりあいつは…借り人の頃から足がきつかったんだ

なんで気づかなかった!?

あいつもあいつで馬鹿だ

辛いならつらいって言えよ!!!!!!

放送係

春樹選手は棄権でしょうか!?

成瀬春樹

はぁ。はぁー。

咲野藍

棄権?

そんなのさせねーよ。

させるわけねーだろ!!

咲野藍

成瀬春樹!!

成瀬春樹

せん…ぱい?

私はお前に応援された時、体が別人のように動いた。

今度は私がする番だ。

咲野藍

お前そこで終わるわけねぇよな!

咲野藍

私のことが好きで好きでたまらなくて、振られても粘着してくるようなやつが

咲野藍

すぐ諦めるわけねぇよな!!

成瀬春樹

せんぱい…

咲野藍

諦めたら

咲野藍

後で殺すからな!!!

成瀬春樹

ははは。じゃあ、殺されるのは嫌だから頑張ろうかなー

私は腹の底から声を出した。

何してんだ私は。目立ちたくないって願ってたはずなのに。

今じゃ全員の視線が私に向いている。

これも全てあいつのせいだ。

放送係

成瀬春樹選手1位でゴールしました!!

咲野藍

よかった…

そんな言葉がつい口に出ていた。

成瀬春樹

せんぱ〜い!!

成瀬春樹

応援ありがとうございます!大好きな先輩からあんなことされたら僕泣きそうです!!

咲野藍

抱きつくな!!

抱きつく必要はないだろ。

咲野藍

お前辛かったら速く言えよ

咲野藍

……こっちが心配すんだからよ

成瀬春樹

え…?

成瀬春樹

先輩今のもう一回言ってください!!

咲野藍

は?何が?

成瀬春樹

だーかーら!「こっちが心配する」ってやつ!!

咲野藍

そんなこと言ってない

咲野藍

耳腐ってんじゃねーの?

成瀬春樹

あと先輩初めて名前呼んでくれましたね!

咲野藍

呼んでねーよ、死ね

成瀬春樹

えぇ〜!呼びましたよ〜!

この年の体育祭は何故か例年より楽しかった。

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