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恋を、感情を、教えてください〜第4幕幼少期〜

第32話 - Ep.32 おいしいものとお年玉(中編)

2025年08月06日

#ドラマ

#コメディ

#澪彩文庫本💜🖌

#きな文学団

#澪彩@参加型💜🖌

音舞澪彩

12月31日、日曜日

Ep.32 おいしいものとお年玉(中編)

グツグツと鍋の煮える音がリビングに響く

四宮祐希

もうたべていいっすかー！？

祐希が鍋を指差しながら言う

古寺祖母

まだ出来上がっていないよ

古寺将風

いつできるの？

古寺優雅

多分あと5分くらいだな

四宮アスカ

えー！！

アスカは箸を両手に一本ずつ握って訴えるように叫ぶ

四宮アスカ

待ちきれないよー！！

四宮祐希

おなじくっすー！！

古寺祖母

祐希は子どもだからまだしも、アスカは大人なんだからこのくらい待ちな

四宮アスカ

えー！！

四宮アスカ

やだやだ待てない～！！！

アスカは握っている箸でテーブルをコンコンと叩く

古寺優雅

アスカ、大人げないぞ

古寺祖母

行儀も悪いよ

古寺祖父

ははは、アスカはいくつになっても子どもだなあ

祖父は腹を抑えながら笑うが、そんな頭をベシっと叩かれる

古寺祖母

笑い事じゃないよ

古寺祖母

30歳も過ぎたってのにみっともない

四宮祐希

ママみっともないらしいっすよー

古寺凛空

子どもに言われてる……

すると、ゴトゴトと鍋が揺れ出す

古寺祖母

お、ちょうど出来上がったみたいだね

古寺祖母

取り分けようか

祖母は鍋の中身を子どもたちに取り分けていく

四宮祐希

えー！やさいあるっすー！

四宮祐希

たべたくないっす

祐希はよそわれたお椀を押し返す

四宮アスカ

私も食べたくないー！！

古寺祖母

もう、野菜くらい食べなさいな

古寺祖母

将風や桜、凛空を見なさいな

古寺祖父

おお、文句の一つも言わずに食べとるのか

古寺祖父

偉いのう……

古寺凛空

当たり前じゃん！

古寺凛空

オレもう小3だよ！

古寺将風

ぼくもねんちょーさん

四宮桜

わ、わたしも3さいだもん……

古寺祖父

そうかそうか！

古寺祖父

みんな偉いのう！

四宮祐希

うー…

四宮祐希

おれもほめられたいっす！

四宮祐希

やさいたべるっす！

古寺優雅

お、頑張れ

祐希はお椀に入っていた白菜を箸で掴み、口へと運ぶ

四宮アスカ

私も褒められたい！！

古寺祖母

あんたは大人なんだからそのくらい見返り無しで食べな

四宮アスカ

えぇー……

古寺祖父

わかるぞーアスカよ

古寺祖父

大人も褒められたいよなー

古寺優雅

アスカの子供っぽさは父さん譲りだったか…

古寺祖母

困った大人達だね

食事を終えた将風達

汁の残った鍋を放置し、こたつに集まる

古寺祖父

はっはっはっは！！

祖父はお笑い番組を見て爆笑する

古寺祖母

ちょっと、子供たちの前でそんなみっともない笑い方するんじゃないよ

古寺祖母

それとも番組を変えるかい？

祖母はそう言って番組を紅白に変える

古寺祖父

えぇ～、知らない曲なんて聞いたって楽しくないよぉ～…

古寺祖母

ふん、それはあんたの気持ちだろう？

古寺祖母

せっかく孫達がいるんだ

古寺祖母

孫達が見たいものを見せてやりな

古寺祖父

うーん、でも大晦日に子供たちの好きそうな番組なんてないよなぁ……

祖父は番組表を見るが、お笑い番組や紅白歌合戦の他には、ニュースなどのつまらないような番組しかなかった

古寺祖父

みんな、見たいものはあるかい？

祖父が声を掛けると、子供たちは番組表を見るが…

古寺凛空

うーん、面白そうなのない！

四宮祐希

テレビよりゲームやりたいっす！

四宮桜

わ、わたしはおえかきしたい……

古寺将風

ぼくは…ねむい…

四宮アスカ

じゃあ、桜はお絵描きしよっか

四宮桜

うん……

アスカと桜は色鉛筆と自由帳を取り出し、絵を描き始める

古寺優雅

将風は寝るか？

古寺将風

ううん、まだおきる……

古寺優雅

そうか

古寺祖母

ゲームねぇ……

古寺祖母

こんな時間からゲームは目に悪いからねぇ…

古寺祖父

それならなぞなぞをやろう！

古寺祖父

じーじが問題を出してやろう！

祖父は本棚からなぞなぞの本を取り出した

古寺凛空

なぞなぞ！？

四宮祐希

おれもやるっすー！！

古寺将風

ぼくもやってみたい……

古寺祖母

桜はどうする？

祖母は絵を描いている桜に声を掛けたが、桜は祖母と目を合わせることなく答える

四宮桜

わ、わたしはおえかきする……

古寺祖母

そうかい

古寺祖父

それじゃあ第1問目！

古寺祖父

『パンはパンでも食べられないパンはなーんだ？』

古寺凛空

えー！カンタンすぎー！！

四宮祐希

わかったっすー！

四宮祐希

くさったパンっすー！！

古寺将風

ぼくはパンダだとおもう……

古寺祖父

みんなわかったかい？

古寺凛空

もちろんだよ！！

古寺凛空

答えは『フライパン』！

古寺祖父

正解！

古寺祖父

フライ”パン”は道具だから食べられないね

四宮祐希

えー！！

四宮祐希

くさったパンもたべられないっすー！！

古寺将風

パンダもたべれない……

古寺祖父

腐ったパンは、お腹は壊すけど食べれなくはないからねぇ…

古寺祖父

パンダも、お肉はあるから、怪獣とかが食べちゃうかもね

四宮祐希

それはうそっすー！！

古寺祖父

嘘じゃないよぉ

古寺優雅

まあ、実際に食べる人や動物がいるかは置いといて、理論上食べることは可能だな

古寺祖父

それじゃあ第2問に移ろうか

古寺祖父

『口に入れると広がったり膨らんだりして、最後は小さくなるものは？』

古寺凛空

えーなんだろ…

四宮祐希

わかったっす！

四宮祐希

ペロペロキャンディっすー！

古寺優雅

ペロペロキャンディは膨らまないだろ

四宮祐希

えぇー！！

四宮祐希

ちがうっすかー！？

四宮アスカ

も～

四宮アスカ

祐希はおバカだなあ～

四宮アスカ

答えはチューイングキャンディだ！！

アスカはドヤ顔で答える

古寺祖父

アスカ、ドヤ顔で言っておるところ悪いが、不正解だぞ

四宮アスカ

えぇぇ～！？！？

古寺祖母

チューイングキャンディも、膨らみはしないね

古寺凛空

うーん、広がったり膨らむもの……

古寺優雅

加えて、最後に小さくなるものだ

古寺将風

……ふうせん？

四宮祐希

でもふうせんはたべられないっすよー！！

古寺将風

うーん……

将風達が頭を悩ませて考えていると、お絵描きをしていた桜が呟く

四宮桜

がむ……

古寺祖父

……お！

古寺祖父

桜ちゃん正解じゃ！

四宮桜

ほ、ほんと……？

四宮アスカ

桜すごーい！！

アスカは桜の頭を撫でる

四宮桜

え、えへへ……

古寺凛空

えー！！

古寺凛空

なんでなんで～！？

古寺祖父

ガムってのは、膨らませることができるだろう？

四宮祐希

えー！！

四宮祐希

ガムってふくらむんすか―！？

古寺祖母

おや？

古寺祖母

祐希は『フーセンガム』って知らないかい？

古寺祖母

よく買ってやってたと思ったんだけど…

四宮祐希

あ！それはしってるっす！

四宮祐希

でもあじがなくなっちゃったらゴックンしてるっす！

四宮アスカ

えぇぇぇ！？！？

四宮アスカ

いつもガムは｢味がなくなったら捨ててね｣って言ってるじゃん！！

四宮祐希

？？？

四宮祐希

でもママ、いつもおれがピーマンをすてようとすると、｢たべものはすてたらダメ｣ってゆってるす

四宮アスカ

うーん、ガムは違うんだけど……

古寺優雅

消化しないから食べ物のようで食べ物じゃない……が

古寺優雅

子供に説明するのは難しいな

アスカ達がどう説明しようか考えていると、祖母が祐希に話しかける

古寺祖母

祐希

四宮祐希

ばーばどーしたっすか？

古寺祖母

ガムっていうのはね、危ない食べ物なんだ

四宮祐希

ええー！？そうなんすかー！？

古寺祖母

そう、口の中で噛むのは平気なんだけどねぇ

古寺祖母

間違って飲み込んでしまうと、ガムが祐希のお腹の中を攻撃して、お腹が痛くなったりしてしまうんだよ

四宮祐希

ええええ！！！

四宮祐希

ど、どうしようっす……

四宮祐希

おれずっとガムごっくんしてたっす！！

四宮祐希

ママ！！おれおなかいたくなっちゃうっす！！

四宮アスカ

う、うーん……

古寺将風

ばーば、ゆうきくんおなかいたくなっちゃう？

古寺祖母

そうだねぇ

四宮祐希

いやだっすー！！

四宮祐希

おなかいたいのいやっすー！！

祐希が叫んでいると、祖母が祐希の頭をポンッと抑える

古寺祖母

全く、そんなに騒がしくしたら近所迷惑だろう？

四宮祐希

でも……ばーば……

若干泣きそうな祐希の頭を撫でながら、祖母が言う

古寺祖母

ちょっと、祐希のお腹を調べてもいいかい？

四宮アスカ

調べるって、どうやって……

アスカに向かってしーっと指を口に当てて見せた祖母

古寺優雅

黙って見てろ…ってことだな

祖母は祐希のお腹に手を当て、独り言かのように呟く

古寺祖母

ふむ…あぁ…なるほどねぇ……

四宮祐希

ばーば……

古寺将風

ゆうきくんはだいじょうぶなの…？

古寺祖母

ああ、そうだね

古寺祖母

あと3回くらいガムを飲み込んでたら危なかったけど…

古寺祖母

今はギリギリセーフってところだね

古寺祖母

これから気をつけたら大丈夫だよ

古寺将風

そうなんだ…

四宮祐希

よ、よ……

四宮祐希

よかったっすーーー！！！！

祐希は祖母に抱きついた

古寺祖母

ふん、たかが腹痛くらいで大げさな子だね

祖母はそう言いながらも、しっかりと脅しに引っかかる祐希の純粋さに笑みを浮かべていた

古寺祖父

お、そろそろ年が明けるな

古寺優雅

じゃあ、さっきの鍋を温め直してそばを茹でるか

古寺祖母

ああ、そうしてくれるかい？

古寺優雅

わかった

古寺凛空

オレも手伝う！

古寺優雅

ありがとう、熱いから気を付けろよ

こうして、将風達は年越しそばを食べながら残り僅かな年末を過ごした

恋を、感情を、教えてください〜第4幕幼少期〜

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