イガラシ
(正直、これはあまり取りたくはない手段だ。下手をするとイシカワからの信頼を損ねてしまう恐れもある)

イガラシ
(だから、もう少し慎重に様子を見たほうがいいか)

ベストなのは全員が正直に答えて、3人ともが助かる道だ。
しかし、嘘をつくことにもある程度のメリットがあるのも困りものだ。
イガラシ
(避けるべきは、全員が嘘をついて全滅するパターンだ)

イガラシ
(ただ、全員でなければ、嘘をついたほうにメリットがあるのは事実)

イガラシ
(やっぱり、どこまで相手を信頼できるのか――が鍵になってくるわけだけど)

イガラシ
(ここにヤナギ先生が加わると、途端に状況が悪くなる)

革命軍
それでは、ヤナギ先生の罪は――。

革命軍
生徒と性的な関係になったことがある。

ヤナギ
――おいおい、こいつの言うことを信じるんですか?

特に女性陣は軽蔑の眼差しさえ、ヤナギ先生に向けているようだった。
ヤナギ
私が生徒と性的な関係を持つと思いますか?

ヤナギ
大体、考えてください。

ヤナギ
自慢ではないけど、私はそこまで容姿が整っているわけではない。

ヤナギ
しかも、生徒から見れば、かなり歳が離れたおじさんです。

ヤナギ
そんな相手と、教師と生徒というリスキーな関係を前提にして、そんな関係になれると思いますか?

フワ
た、確かに――。ヤナギ先生はあんまり女子生徒から評判良くないですね。

本人はぽつりと漏らしたつもりなのであろうが、ヤナギ先生の耳には届いていたらしい。
ヤナギ
な、なんというかそれは初耳ですけどね。

ヤナギ
まぁ、つまりはそういうことです。

革命軍
では、投票にも時間はかからないな。

ヤナギはふとイガラシのほうを見ると、小さく溜め息を漏らした。
ヤナギ
イガラシ先生、そんな目で見ないでくださいよ。そこまで私のことを信用できませんか?

イガラシ
いえ、そんなつもりはないですけど。

ヤナギ
正直に申し上げよう。私は君のようなタイプの教師は嫌いだ。

ヤナギ
ただ、だからと言って、死んでしまえとは思わない。

ヤナギ
私にだって人の心というものがあるし、人として大切なものは失ってはいないつもりだ。

ヤナギ
ですからイガラシ先生、ここは信じてください。

ヤナギのはっきりとした物言いは、逆に信憑性を高めるものだった。
そしてヤナギ先生の投票が終わり、次はイガラシの番。
イガラシ
――分かりました。

イガラシ
(両者の罪が真実だろうが捏造だろうが、それに対して正直に答えればいいだけ)

イガラシ
(社会的な死は避けられないかもしれないけど、命はあってなんぼのもの)

イガラシ
(なりふり構わずに、ここは俺も正直に答えるべきだ)

イガラシ
(いや、全員が助かるためには、俺も正直に答えないと)

革命軍
では――イガラシ先生の罪だな。

しかし、イガラシの決意を大きく揺らがせることになる一言が放たれる。
革命軍
イガラシ先生こそ【革命軍】の黒幕である。
