扉を開けた先には、荒げた息を整える、敦君の姿があった。
太宰
おや敦君、こんな夜遅くまで済まないね、翠ちゃんについて何か見つかったかい?

敦
は、はい…

敦
これを…

太宰
これは、?

敦
その中に、翠ちゃんについての情報が"全て"入っていました、でも、それ以外は何も無くて…

太宰
コレだけで充分だよ、有り難う敦君

敦
はい、でもその…

太宰
ん?なんだい?

敦
………兎に角、、箱の中…見てみてください、

太宰
っ…!

箱の中には敦君が云ったとおり、翠ちゃんについての事が、全て詰まっていた。
幼少期の彼女の写真や、彼女が作ったであろう花の折り紙、母宛に送ったのか、「ママへ」と書かれた手紙まで入っていた。
太宰
……、

写真を見ると、まだ幼い翠ちゃんが写っていた。然し写真に写る彼女の表情は、笑顔が一切なかった。
唯一あったのは、彼女が家族三人で一緒に撮った写真だった。
敦
その…多分、翠ちゃんの御両親は…

太宰
嗚呼、判ってるよ

太宰
普通なら彼女の情報は捨ててあった筈だ、それでも尚、手紙や彼女が作った折り紙まで…こんな細かな物までも大切に箱に入ってる……、

太宰
もしかしたら翠ちゃんの御両親は、

未だに何処かで、
彼女を想っていたのかもしれないね
敦
………、

太宰
……、

太宰
そう云えば国木田君は?

敦
あ、国木田さんなら「俺の手帳に書かれた就寝時間を超えている、一刻も早く部屋に戻らなくては」と云って、大急ぎで部屋に戻ってました、

敦
多分もう寝てると思いますよ

太宰
国木田君は相変わらずだね、

敦
はい、そうですね

敦
そう云えば、もう翠ちゃんは寝てるんですか?

太宰
あー…翠ちゃんはね…

敦
……ん?

敦
えぇーっ!?ポートマフィアの人達とお泊り会ィ!?

太宰
敦君声が大きい…

敦
あっ、済みません…

敦
そ、それで…翠ちゃんは大丈夫なんですか?

太宰
安全だと思うよ、鏡花ちゃんを向かわせたからね、

敦
えっ!?鏡花ちゃんを!??

太宰
あ〜つ〜し〜くーん…

敦
すっ…済みません…

太宰
まぁ…鏡花ちゃんが居るなら大丈夫さ、何かあったとしても、翠ちゃんも異能力者だからね、

敦
そうですね、

敦
ぐぅ〜〜

太宰
空腹なのかい?敦君、

敦
はい…朝ご飯しか食べてなかったので…

太宰
………、

太宰
敦君、

敦
はい?

太宰
云っておくけど、私の部屋には何もないよ、

敦
誰も食べさせてくださいなんて云ってないじゃないですか!!

太宰
なんかそう云う雰囲気出してたから…

敦
そうだとしてもいいですよ、今日はもう遅いですし、寝ます

太宰
その方がいいよ、

太宰
向こうでは今頃、仲良く寝ているのかな…?

敦
鏡花ちゃんも居ないから、部屋は一人かぁ…

太宰
……、敦君

敦
はい…?

太宰
男と一緒に寝る趣味はないよ

敦
僕もないですよ!それに誰も寝かせてくださいなんて云ってないじゃないですか!!

太宰
敦君がそれっぽい事云った、

敦
云ってません!!

敦
はぁ…それじゃあ今度こそ僕は寝ますね、おやすみなさい太宰さん、

太宰
おやすみ敦君、

そう云って敦君は自分の部屋に戻り、私は自分の部屋の扉を閉めた。