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彩葉
昼休みになり、クラス中がザワザワと騒がしくなる。
財布を手に学食へ走る人、机の上にお弁当を広げる人、よほど眠いのかお昼休みなのに机に伏せて眠っている人。
そんな中、教室の中央付近に不穏な空気が広がっていた。
沢木綾香
苛立った様子の綾香が、仁王立ちして腕を組んだまま柴村さんを睨みつけていた。
小山田マミ
マミがわざとらしいように両腕を擦る。
渡部みやび
綾香とマミの横で涼しい表情のみやび。
また始まったんだ。
心の中でぽつりと呟く。
柴村さんは黙ったまま微動だにしない。
頭を垂れている彼女の顔は長い黒髪によって遮られ、どんな表情か見て撮ることはできない。
ここで柴村さんが泣いたり、『やめて』と懇願すれば3人は引いたかもしれない。
柴村さんは3人に罵声を浴びせられても、悪口を言われても、机を蹴られても、消しゴムを投げつけられても、全く反応しない。
自分の殻に閉じこもって、心が壊れないように必死で自分自身を守っているのかもしれない。
けれどそれが3人のいじめをさらにエスカレートさせていた。
沢木綾香
反応のない柴村さんにいらだった綾香が柴村さんの机を正面から右足で思いっきり蹴った。
柴村静子
今までなんの反応も示さなかった柴村さんが思わず声を漏らす。
机が柴村さんの腹部にめり込んでいる。
沢木綾香
クックと綾香が喉を鳴らして笑う。
それはまるで悪魔のような笑みだった。
綾香は腹部を押さえる柴村さんの前髪に手を伸ばして、ギュッと掴み上げて上に引っ張った。
柴村静子
髪を引っ張られて顔を上げた柴村さん。
その顔には苦痛の表情が張り付いていた。
小山田マミ
渡部みやび
小山田マミ
マミとみやびが目を合わせてケラケラと笑う。
何が楽しいのか全く分からない。
3人が柴村さんをいじめているのは明らかなのに、クラスメイトは見て見ぬフリを決め込む。
でもその様子が気になるのか、チラチラ柴村さん達に視線を送っている。
その視線は同情や哀れみだけではない。
この先どうなるのかワクワクしているようなそんな好奇の目で見ている気がした。
沢木綾香
綾香はそんな言葉を浴びせながら前髪を引っ張る手に力を込める。
柴村静子
柴村さんは首をすくめて必死に痛みを堪える。
顔がさらに苦痛に歪む。
その姿を見ていることなんて出来なかった。
キュッと手のひらを握りしめて椅子から立ち上がろうとした時、後ろから両肩を押さえられた。
日野田里美