この作品はいかがでしたか?
0
この作品はいかがでしたか?
0
母
私
母
私
母
私
私
母
私の家系は母子家庭だ
父は私が幼い時に死んでしまった
それも私の目の前で死んでしまった
当時の私は言葉では表せないくらいショックだったのを覚えてる
もちろん今でも忘れたことは無い
あの出来事は忘れるはずもない
嫌いだった父さんが大好きになった瞬間でもあったから
私がまだ5歳くらいの時の話
その時から私は元気な子って言われてた
それだけでなくとても優しい子とも言われてたりしてた
別に優しくしてるつもりはなくてただその子と遊びたかったから
それが動機で色んな人と仲良くして輪を広げていた
とても幸せ溢れるそんな幼年期だったが
一つだけ気に食わないことがあった
それはお父さんから自分に対して愛情が注がれていない事だった
他の子の送り迎えを見てると意外とお父さんが迎えに来る家庭が多く見られた
けども私を迎えに来るのはいつもお母さん
別にお母さんが嫌だという話ではなく
たまにはお父さんにお迎えに来て欲しい
子供ながらのわがままだった
それを帰り道お母さんに話してみても
帰ってくる返事はいつも同じ言葉
【お父さんは忙しいから】
そんなの知ってる…
お父さんが忙しいのは知ってるけど
でも私に構ってくれないなんてそんなのは嫌だった
私が起きる時にはお父さんは既にお仕事に行っていて
帰ってきてもすぐにご飯を食べてお風呂に入って寝てしまう
直ぐに寝ないこともあるけどその時は大体お仕事をしてる
私の記憶にはお父さんから話しかけてきたり構ってくれたことは無かった
お母さんの話を聞いても何故かお父さんは私の話題を出そうとはしない
それほどまでに私はお父さんにとって邪険にされてる
そんな状態が当たり前になっていた
だからお母さんとばかり仲良くなっていき
お父さんは孤立していってしまった
そんなある日のこと
珍しく平日にお父さんが休みを貰った
代わりにお母さんはお出かけをしに行ってしまい
家には私とお父さんの2人だけ
でもお父さんは朝早く起きるわけでもなくすやすやと寝ていた
話をしてこなかった私はお父さんと話すのにどこか躊躇いを感じて
なかなか話しかけることはできない
そんなふうに戸惑っていると家のインターホンが鳴る
お父さんはまだ寝てるから出れるわけもないので代わりに私が出た
その時の光景は今でも覚えてる
郵便配達員の服装をした男の人がいて
お母さんかお父さんの届けものかと思って元気よく扉を開けた
すると配達員のお兄さんは少し驚いた顔をした後に何故かニヤッと笑い
突然私の首をつかみに来た
たった6歳の私が大人の男の人に勝てる訳もなく
じたばたしても振り解けない
すぐそこにお父さんがいるのに助けも呼べない
幼いながらに私は自分の死を悟り思いふけていた
意識がかすれていく中遠くでお父さんの声が聞こえた
今まで聞いたことないくらいの怒号を放って配達員の胸ぐらをつかみ殴り掛かる
そして直ぐに私を抱き抱えて安全な場所にと運んでくれた
意識がようやくはっきりしてきた時
後ろから配達員のお兄さんが刃物を持ってお父さん背中を刺そうとしてるのが見えた
慌てて私は【お父さん後ろ!!】と叫ぶが
それも虚しくお父さんは背中を刺されてしまい抱き抱えていた私を離してしまう
けれどもお父さんは刺されたにもかかわらず私の前に立ち私を守ってくれた
私が警察に通報する時間をお父さんは稼いでくれた
警察に通報をしてお父さんの様子を見に行く
するとそこには横たわるお父さんとトドメを刺そうとする配達員の姿が映る
その瞬間私はお父さんが殺されるのを嫌い初めて心の底からの叫びを上げた
それに驚いた配達員のお兄さんは慌てて逃げ出して家から消え去った
その声を聞き近隣住民が駆けつけてくれて私の身は安全が確保されたがお父さんは
既に致死量の血を流しており死ぬ以外の選択肢がなかった
私は何度もお父さんに声をかけた
【死んじゃやだよ】【まだ遊んでないよ】
たくさんの声をかけた
けれども父さんはそれらに答えるわけでもなく
ただ自分の胸の内をさらけ出してくれた
【〇〇には本当に悪いと思ってる】
【いつも父さんが仕事を優先するが故にどこか寂しさを感じてたんだよな】
【父さんは〇〇の喜ぶ顔がみたくてお金を沢山稼いで】
【それで欲しい物をたくさん買ってあげようと思ったんだけどな】
【そんな目に見える物じゃなくてお金じゃ買えないもの】
【父さんとの遊ぶ時間が欲しかったよな】
【母さんが父さんの事を話そうとしないのは父さんが止めてたからなんだ】
【その理由のいちばんは今日お昼から家族3人で〇〇の誕生日を盛大に祝いたくて】
【だから父さんがいちばん〇〇の事を好きだって事は口止めしてたんだ】
【ちょっとしたドッキリをしたかったんだけどな】
【〇〇………】
【母さんは〇〇の事大好きだけどな】
【父さんは母さんが大事な人と同じくらい〇〇も大事な人なんだ】
【最期まで父さんらしいことをできなくてごめんな…】
一方的に言葉をあびせられ私はただそれを聞いて泣くしか無かった
最後の言葉は私にだけ聞こえた
【父さんの子供でいてくれてありがとう】
私
母
私
母
母
母
私
母
私
私
母
母
母
私
母
私
母
母
母
母
私
去りゆく際フワッと暖かな風が吹く
その風はあの時私を抱えて守ってくれた父さんの温もりにも感じた
チラッと父さんのお墓を見る
そこには誰もいないはずなのに人の気配を感じた
少し冷たいような雰囲気のあるあの感じはきっと父さんだろう
少し気難しくて自分に正直になれない父さんだけど
そんな父さんが私は大好きだ
コメント
1件
自分で書いといて実は涙腺やられかけてたのは内緒