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愛菜

おばあちゃんが…

愛菜

死んだ?

智子

仕方ないわよ

智子

歳だったもの

智子

いつかはこうなると

智子

覚悟してた

愛菜

…そんな

智子

愛菜

智子

おばあちゃんの遺言に

智子

お葬式はここでって

智子

指定もあった

智子

もう長くはないと

智子

自分で分かっていたのよ

愛菜

…い

愛菜

いやだ!いやだいやだいやだ!

愛菜

おばあちゃんは…

愛菜

わたしの唯一の支えだったのに

愛菜

そんな…そんな…

智子

大丈夫

智子

寂しく思うことはないわ

愛菜

触らないでっ!

愛菜

母さんなんか知らない!

智子

愛菜!

おばあちゃんは 小さいときからずっとわたしの傍にいた

仕事が忙しいお母さんのかわりに わたしの面倒を全部見てくれた

けれど2年前お母さんが退職して わたしはおばあちゃんから 引き離された

おばあちゃんは優しかった わたしを大切にしてくれた

すべてのものと すべての命を大切にするよう おばあちゃんから教わった

けれど突然おばあちゃんは死んだ

まだ信じられない

おばあちゃんはわたしの 生きる意味そのものだった

愛菜

おばあちゃん…

愛菜

せめて最期

愛菜

最期に立ち会ってくるべきかな…

間宮

それでは

間宮

まいりましょう

智子

愛菜

間宮

亡くなられたキミエさんは

間宮

生涯をかけてあらゆる生命を尊み

間宮

すべてのものに感謝をされてきました

間宮

実は

間宮

われわれの「ちっちゃなご葬儀」も

間宮

キミエさんの尽力によるものでした

間宮

あらゆる命の可能性を拡張する

間宮

そんな努力の成果が

間宮

次世代のテクノロジーを切り開く鍵となるでしょう

間宮

なんともキミエさんらしい

間宮

出立と言えるかもしれません

間宮

では…

間宮

「風葬」に移らせていただきます

葬儀屋さんがそう言うと おばあちゃんの棺が閉じられた

棺はエレベーターに乗せられ 天井のさらに上へと昇っていった

棺が登りきると 葬儀屋はわたしとお母さんに一礼した

間宮

ではささやかながら

間宮

こちらがわれわれからの

間宮

「香典」でございます

智子

すみません…

愛菜

香典?

愛菜

なんで?

愛菜

わたしたちのほかに誰もいないのに

智子

愛菜

智子

これはね

智子

おばあちゃんの財産なのよ

愛菜

どういうこと

智子

おばあちゃんが愛菜にと

智子

遺言に書いてあったわ

智子

風葬金のうち100万円を

智子

愛菜に、って

愛菜

お母さん

智子

どうしたの?

愛菜

遺産なんていらない

愛菜

いらないからわたし

愛菜

お母さんと縁を切ります

智子

なんでそんなこと言うの

愛菜

白を切らないでください

愛菜

お母さんはあの葬儀屋に

愛菜

おばあちゃんを売った!

愛菜

そういうことですよね

智子

違う!

智子

あれはおばあちゃんが

智子

そうしてって

智子

はっきり言ってたのよ

愛菜

嘘をつくな!

愛菜

この100万円は要りません

愛菜

この家も要りません

愛菜

明日朝この家を出ます

愛菜

ありがとうございました

智子

ちょっと!?

智子

愛菜!

智子

待ちなさい!

愛菜

うっ……う……

愛菜

ひどいよ……

愛菜

こんなの……

お母さんのことは 前から信用していない

みんな隠していたけれど わたしは知っていた

お母さんはほかの男と不倫して お父さんと離婚した

おばあちゃんも言わなかったけれど 薄々そうだと感づいていた

金と男 それにしか目がないあの母親と

一緒に暮らす理由はもうない

風葬金というのは嘘で 財産を不当に自分のものにしたがったのだと

わたしは思っていた

愛菜

…?

愛菜

これは

愛菜

わたしの机の上に…

愛菜

手紙?

愛菜

愛菜

この字は

愛菜

おばあちゃんの……

親愛なる愛菜へ 愛菜がこれを読む頃には わたしは既に死んでいるでしょう

でもわたしは満足しているよ わたしが一生かけて作ったものが ようやく出来上がったから

風葬という葬儀 お金を払って葬儀するのではなく 命と引替えにお金をお渡しする葬儀 身体を風に任せて溶かすこの方法は

きっと生命のすべてをあたたかく 包み込むお葬式として

これからの命の円環を つき動かしていくでしょう

わたしのしたかったことを 愛菜が受け継いでくれたら

とは思いますが 愛菜は愛菜のしたいことを たくさんするんだよ

愛菜

おばあちゃん…

愛菜

じゃああのお金は

愛菜

おばあちゃんが本当に…

愛菜

風葬…

愛菜

そうか

智子さんへ わたしは風葬で死ぬことにしました わたしの残した金で

せいぜい残りの人生を 過ごしてください

わたしを死なせた自分の愚かさを 金を使うたびに認めるといい

智子

……!!

智子

ああああああー!!!!

智子

愛菜!愛菜!愛菜っ!!!

智子

いますぐ…取り返さなきゃ!!

間宮

愛菜さん

間宮

ほんとうにこれでいいんですね

愛菜

ええ

間宮

生体ですので

間宮

引換金は3億5千万円

間宮

「風化」に必要な時間は

間宮

約14時間

間宮

風葬の内容は詳しくお伝えできませんが

間宮

いいんですね?

愛菜

覚悟の上です

愛菜

一思いに死んで

愛菜

あの女を苦しめたいんです

愛菜

そのためなら

愛菜

なんだってします

間宮

わかりました

間宮

生体の風葬ははじめてですが…

間宮

やってみましょう

そして私を入れた棺は閉じられた ゆっくりとどこかに移動していく

思い残すことは無い

もしかしたら おばあちゃんのところに 行けるかもしれない

……

棺の外から声がする

智子

………い……な…………

智子

愛菜……!

間宮

め…ないでくだ………

間宮

もうすで………ぷろ………すははじまって………

智子

あいな……あいな……………!

あの女だ

だがもう終わり

さよなら

哀れな人間たち

棺が開く

愛菜

ここは…どこ?

愛菜

14時間後に死ぬって

愛菜

毒ガスでも流れるのだろうか

にゃー

愛菜

あれ?

愛菜

こんなところに

愛菜

猫が…

愛菜

10匹くらいいる

愛菜

いや

愛菜

20匹くらいかな?

にゃー!

愛菜

はっ

愛菜

みんな一斉にこっち見てる

愛菜

1匹近づいてきた!

ふにゃぁ!

愛菜

ぐっ!

愛菜

いたっ…

愛菜

足を噛んだ…?

愛菜

うっ!

愛菜

別の猫が…

愛菜

ひっ!

愛菜

親指が…

愛菜

ない?

愛菜

わたしの指が…骨だけに

愛菜

いやーっ!

にゃー!

愛菜

あっ……

愛菜

風葬……

愛菜

まさか……

にゃー!!

にゃー!!

にゃー!!

智子

人喰い猫!?

間宮

それが

間宮

キミエさんの発明だったのです

間宮

企業秘密ですが

間宮

死肉を摂食した猫は

間宮

だんだん人間に近づくのです

間宮

その結果

間宮

より賢い動物ができる

間宮

生体実験ははじめてですが

間宮

驚異的な成果が得られると

間宮

キミエさんは見立てていました

智子

でも…そうしたら愛菜は

間宮

助かりません

間宮

それに決して解放してはならないのです

間宮

でも大丈夫です

間宮

キミエさんの計算ですが

間宮

意識がとだえるまでに約14時間かかる

間宮

彼女がこれまで歩んできた17年間と比べたら

間宮

苦しみはそのうちのたった14時間なのですから

間宮

さあ

間宮

この3億5千万円は

間宮

あなたへ宛てられたものです

間宮

どうかお受け取りください…

愛菜

い……た………い…………

愛菜

だ………れ……………

愛菜

た……………す………………け…………………

うううううううううううう!!

ぎぃやあああう!!

ふおおおっ!いいいいい!!!!

あああああああああ!!!!!!!

愛菜

……………た……………

愛菜

…………………た…………………

愛菜

………………

Fin. 最後までお読みくださり ありがとうございました

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー
ユーザー

昨日、家で飼っていた合鴨が急逝しました。突然のことで実感が湧かないのですが、墓前で手を合わせ「よく生きたね」と声をかけると、愈々「もう居ない」という寂しさが押し寄せてきました。 そのあとなぜかこの物語を書く気が湧き上がり一気に書きました。 これまで書いてきた物語では登場人物がけっこう惨いことになってますが、これからも「命がある」ことにたいする畏敬の念を忘れずに邁進していきたい、と思います。

ユーザー

対象を賢くする人体実験、確かに命の環として組み込まれるとも取れる…(ミスリードは恐らく知らないで生きて行く選択をした孫娘のためのもの?)

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