TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

陽子

私、戻りたい

陽子

でも、その前に……

陽子

やりたい事があるの

ザック先生

……なんだい?

陽子

……みんなと歌いたい

陽子

ラフィーネ先生の前でも歌って、褒めてもらいたいな

ザック先生

うん、いいね

ザック先生

歌の授業はまだ先だけど、園長先生に相談してみよう

蔵内先生

蔵内先生

あらあら、陽子にザック先生

ザック先生

あ、ちょうど良かった

ザック先生

園長、お話が……

 

 

蔵内先生

「ラフィーネ先生をすぐ呼びたい」、ねえ……

蔵内先生

ごめんなさいね、それはちょっと難しいわ

陽子

何でですか!?

陽子

私、そろそろ死んじゃうかもしれないのに!

陽子

時間がないんです!

蔵内先生

ラフィーネ先生も来たいのは山々だろうけれど

蔵内先生

先生、実は「ラファエル」っていうとても偉い天使さんなの

蔵内先生

自分が守ってる他の世界でのお仕事もあるし

蔵内先生

その忙しい合間を縫って、仏教の世界にも来てくれてるからねぇ

蔵内先生

呼んだらすぐ来てくれるって言うわけには……

陽子

そんな……

蔵内先生

……ん?

蔵内先生

そうだ、そうだったわ!

蔵内先生

陽子、やったわ!

蔵内先生

先生の前で歌えるかもしれない!

ザック先生

園長、どう言う事ですか?

蔵内先生

あのね、今日は確か……

蔵内先生

「寄宿舎」の方に来てくれてるはずなのよ

ザック先生

「キシュクシャ」?

ザック先生

……ああ、あそこですか!

陽子

……???

ザック先生

あ、ごめんね陽子

ザック先生

実は、ここ以外にも子供の魂を保護する施設があるんだ

ザック先生

そこに今日はラフィーネ先生いるんだって

陽子

本当?

陽子

みんなで行きたい!

蔵内先生

うーん、まあいいでしょう

蔵内先生

今日は「遠足の日」って事で!

蔵内先生

他の先生たちにも伝えておきますね

陽子

やったー!

 

 

蔵内先生

……と言う事で

蔵内先生

今日はバスで遠足ですよ

ロクじい

引率はわしと鬼塚先生じゃ

鬼塚先生

お昼ご飯も持って行ってるから安心してね

陽子

みんな、わがまま言ってごめんね

愛斗

陽子が喋ってる……

愛斗くん、気持ちはわかるけどあんま言わないであげて

気にしちゃうかもしれないから

……バスって事はさ

運転手の男鹿さんと一緒だろ?

あの人苦手、憂鬱

……僕もちょっと……

バスに乗ってやってきた時、ずっと黙ってて怖かったし

でも遠足かあ、それは嬉しいな!

 

ブロロロロ……

しばらく待っていると、エンジンの音を鳴らしながらバスが玄関から入ってきた。

男鹿さん

園長、お待たせしました

男鹿さん

ああ、それと……

男鹿さん

君たち、今日はよろしく

陽子

すみません、よろしくお願いします

よろしくお願いしまーす!

愛斗

よろしく!

……

どうも

男鹿さん

さあ、乗って

男鹿さん

すぐに出発するぞ

 

 

乗り込んだ後、バスが動き出したと思ったら

窓の外がすぐにモヤに覆われた。

前もそうだったけどさ

どうしてモヤの中を通っていかないといけないの?

ずっと景色が変わらないの、退屈なんだけど

鬼塚先生

それはね、みんなを守るためなんだ

鬼塚先生

園の敷地の外を通るから、意地悪な亡者がいたずらに来るかもしれないしね

ロクじい

その為に、このモヤが目眩しになっとるんじゃ

なるほどね

じゃあさじゃあさ、しりとりでもしようか

愛斗

えー?

愛斗

そんなモン、年上の桜と陽子が有利すぎるだろ!

いや、そんなことないでしょ

優くんだって、こっちで過ごしてる期間長いし……

……おい

嫌味か、それは?

あ……

ごめんね、そんなつもりじゃ

まあ、お前みたいな呑気なバカにそんなイシはないか

俺が「お局」なのは事実だもんな?

愛斗

……おい、優!

その時、ドルンという音と一緒にバスが停まった。

……み、みんな!

着いたみたいだよ!

 

 

男鹿さん

さあ着いた

男鹿さん

用事が済むまで入り口で待ってるからな

陽子

……ありがとうございました!

……

……

愛斗

どうすんだよこの空気……

ロクじい

おほん、では改めて……

ロクじい

みんな、「賽原寄宿舎」にようこそ

ロクじい

わしが館長の福禄寿じゃ

愛斗

……って、ロクじいここの職員なの!?

ロクじい

こちらが主な勤務先じゃが、保育園との兼任での

ロクじい

とは言っても常勤はわし一人で

ロクじい

天国にいる人間の大人が協力しながら、子供達の面倒を見ておる

ロクじい

日替わりで保育園の大人達もやってくるがな

寄宿舎職員

寄宿舎職員

あ、お疲れ様ですロクさん!

ロクじい

おお、今日もご苦労様

ロクじい

ラフィーネ先生はもう見えられてるかな?

寄宿舎職員

……それなんですが……

寄宿舎職員

急用で今日は来られないようです

え!?

陽子

そんな、それじゃあ

陽子

先生の前で歌えない……

ロクじい

今はどこに居られるかは分かるかの?

寄宿舎職員

天界でのお仕事、と言われていたので

寄宿舎職員

天界だと思います

なーんだ、無駄足

愛斗

お前、ちょっと……

愛斗

いい加減にしろよ!

愛斗

痛いこと突かれたからって八つ当たりすんなよ!

へえ、「八つ当たりすんな」ってお前が説教するのか

さすが俺とは違う「ユートーセー」だ事

陽子

ねえ、もうやめてよ!

 

 

陽子

なんで、私、みんなとちゃんとサヨナラしたかっただけなのに

陽子

こんなケンカになるなら

陽子

黙って帰ればよかった……!

男鹿さん

……話は聞いた

男鹿さん

陽子、みんな、乗れ!

男鹿さん

陽子

え!?

陽子

は、はい!

男鹿さん

行き先は天界だな?

男鹿さん

捕まってろ、飛ばすぞ!

鬼塚先生

男鹿さん、待ってください!

鬼塚先生

他宗教の世界に行く場合、事前申請が……

男鹿さん

そんなモン、後で俺が怒られればいいだけさ

ロクじい

ほっほっほ

ロクじい

珍しく熱いのお、男鹿さんよ

……子供、嫌いなんだろ?

どうしてそこまで出来るんだよ

 

ブロロロロ……

男鹿さん

俺が子供嫌いなんていつ、誰が話したんだ?

だって、サイノカワラで子供を虐めてるんだろ?

男鹿さん

それは……

男鹿さん

追々話すさ

男鹿さん

さあ、揺れるぞ

男鹿さん

黙ってないと口噛んじゃうからな

そう言うと、バスのスピードがぐんぐん上がって

上下左右に揺れ出した。

鬼塚先生

男鹿さん、ちょっと……

鬼塚先生

荷物もあるんです、この揺れなんとかできませんか……?

鬼塚先生

痛った!

男鹿さん

ほら、言わんこっちゃない

男鹿さん

手で抑えてろ

そうしてしばらくバスに揺られていると……

男鹿さん

……!

男鹿さん

今だ、外見てみろ

 

 

そこは、辺り一面が雲でできた

とても綺麗な場所だった。

男鹿さん

天界だ

男鹿さん

陽子、みんな

男鹿さん

大きな声で歌い続けろ!

男鹿さん

先生に届けるぞ!

陽子

……うん!

陽子

「カンガールー、カンガールー!」

「オーストラリアのお友達ー!」

「カンガールー、カンガールー!」

愛斗

「大きなポケット持ってるよー!」

バッカみたい

恥ずかしくないのか?

優くん、もうこれで最後かもしれないんだよ

……

仕方ねえな

 

「カンガールー、カンガールー!」

「大きな足ーでキック、キック、キック!」

陽子

(先生、どうか聞いていて)

陽子

(私たちに気づいて……!)
loading

この作品はいかがでしたか?

80

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚