七星
なん……だと?
それを表に出さぬようにするのが精一杯で、とにもかくにも目の前で起きた事実に困惑するばかり。
十一月二十九日
どうした?
十一月二十九日
あんたが出した絵本のナンバー……確認させてくれよ。
七星
(この場面で【ノンオープン】は、攻めるつもりならば分からなくはない。しかし、宣言する数字は【0】か【3】に絞られる)
七星
(この場面において、それ以外のナンバーを宣言するのは、非効率的かつリスキーだ)
七星
(しかも、私はあえてセオリーから外して【1】を選んだんだ。それをピンポイントで当てにくるなんて――ありえない)
七星
――見事だ。
水玉模様の表紙が引っくり返ると、そこに浮かんだ数字は――【1】だった。
七星
随分と大胆な仕掛け方をしてくれるじゃないか。
十一月二十九日
あー、それよく言われるわ。
十一月二十九日
でもよ、攻めるべきところはとことん攻めたほうがいい。
十一月二十九日
女を落とす時だってそうだろ?
十一月二十九日
駄目だったら次に行けばいいだけの話なんだから。
七星
つまり、一か八かで攻めたと?
十一月二十九日
ん、まぁ……結果的にはそうなるかな。
七星
(この男、本気で言っているのか? 当てずっぽうでどうにかなるゲームじゃないだろ?)
十一月二十九日
とりあえず、これで俺のリードだな。
十一月二十九日
案外、ちょろいかもな。
七星
(当てずっぽうであれ、なんであれ、ポイントをリードされたのは間違いない)
七星
(それにしても、妙なタイミングで仕掛けてきたな)
七星
(私もセオリーを外したが、それは十一月二十九日の【ノンオープン】を回避したいという考えがあったからだ)
七星
(だが、十一月二十九日の【ノンオープン】は、どうも根拠というものが見えてこない)
七星
(あの場面で仕掛けるのならば、セオリー通りに出てくる可能性が高い【0】か【3】に絞って宣言するはず)
七星
(いや、もちろん【1】や【2】が出てくる可能性だってゼロではない。どのナンバーが出てきても不思議ではなかった)
七星
(ならば、なぜこのタイミングで【ノンオープン】を仕掛けてきたんだ?)
七星
(単純に当てずっぽうでも当たる確率は4分の1だ。外したら負けてしまう【ノンオープン】を、その4分の1のために行使するだろうか?)
十一月二十九日
さて、次の勝負に移るわけだが、今度はどっちが先攻をやる?
七星
ゲームの流れから考えると、そちらが先攻をやるべきではないか?
七星
その方が公平だ。
七星
(この男、先攻と後攻をまるで気にしていないみたいだが、ゲームを理解しているのか?)
七星
(最初に【3】を通してしまえば、次のターンで【7】に王手がかかるんだぞ)
十一月二十九日
じゃあ、俺が先攻になろう。
十一月二十九日
それにしても……。
七星
――な、なんだ?
十一月二十九日
いやいや、随分と大人びているって話だけど、そのストールはダサいわ。
十一月二十九日
服と同化してるみたいに見えるから、外したほうがいい。
淡い赤色のジャケットに、緑のストールを身につけてはいたが――。
七星
そうか?
七星
独特のファッションセンスをしているな。
七星
私は変だとは思わないが。
十一月二十九日
あー、よく言われる。
十一月二十九日
だから、俺は基本的にスーツしか着ないんだよな。
十一月二十九日
こう、なんかしっくり来るというか。
七星
今は互いのファッションを品評する時ではない。
七星
次の勝負に移ろう。
十一月二十九日
はいはい、余計なこと言って悪かったよ。一応、忠告のつもりだったんだけどな。
余計な話が入り込んだが、七星の言葉で中断され、ゲームへと戻る。
七星
(この男、当てずっぽうでも【ノンオープン】を仕掛けてくる傾向にあるのならば――私も)
十一月二十九日
セット。
七星
(ここで仕掛ける!)
七星
【ノンオープン】だ!