奈々
私がいつか死ぬときは、ずっと手を握っててね
悠太
どうしたんだよ、急に
奈々
ふと、急に怖くなったの
奈々
ね?
約束して
約束して
悠太
わかったよ
悠太
いつか奈々がおばあちゃんになって、もし先に死ぬとしたら
悠太
大丈夫、って言って手を握ってるよ
怖がりで泣き虫な彼女が、急にこんなことを言い出したことを思い出す
彼女が何かにおびえる度に 俺は「大丈夫」となだめた
奈々
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通話
00:00
悠太
もしもし、奈々?
男性
事故が……事故に遭われて、この方があなたと話したいと
悠太
え?
何?
事故?
何?
事故?
奈々
ゆ、た?
わたし……
わたし……
悠太
奈々!
大丈夫か!?
事故って
大丈夫か!?
事故って
奈々
だいじょ、ぶ
奈々
ゆ、た
悠太
しっかりしろ!
悠太
奈々!
奈々
わた、し、
だいじょ、ぶから
だいじょ、ぶから
奈々
ゆ……た
悠太
すぐ行く!
どこにいるんだ!
どこにいるんだ!
奈々
こな、で
奈々
いい、から
ゆ、た
こえ、ききた……くて
ゆ、た
こえ、ききた……くて
悠太
しっかり!
行くから、すぐ行く!
行くから、すぐ行く!
奈々
ありが……
だいじょ、ぶ
だいじょ、ぶ
奈々
だいじょ、ぶ
悠太
奈々!
奈々!
奈々!
男性
落ち着いてください
今から搬送先の病院を言います
今から搬送先の病院を言います
最期に「大丈夫」って言ってやれなかった
手も握れなかった
約束、守れなくてごめん
怖がりで泣き虫な君が
苦しい息の向こうで
必死に「大丈夫」と
あの時彼女は潰れた車の下で
半身を挟まれて
虫の息だったと聞いた
最期に俺と話がしたいと 懇願したという
約束
せめて守りたかった
怖がりな君を
泣き虫な君を
励ますことで 俺は強い気になってたんだ
自分を強いと思って まっすぐ立っていられたんだ
君を守るふりをして君に守られていたこと、気づきたくなかった
「大丈夫」と言った君の言葉
忘れないよ
絶対に
ずっと
約束だ