じいちゃんのタイムマシーン

2013年7月

籍を入れた私達は新居への引っ越し作業に追われていた

あれからトントン拍子に話が進み

根岸さん宅にて契約書を正式に交わし

根岸さんの奥様とも顔を合わせ

引っ越しの日程もあっと言う間に決まった

当日は息子の裕太さんも手伝ってくれて

引っ越しの作業は思ったよりも早く進んだ

裕太さんは元々、大手の引っ越し業者でアルバイトをしていた

そこから社員になって営業所の所長を任せられるまでになり

後に独立して自分の会社を立ち上げた

社員数は少ないが

丁寧な仕事ぶりが評価され業績も安定しているらしい

裕太さんと数名の従業員さんの迅速丁寧な作業のお陰で

引っ越し作業は無事に終了した

居間には既にソファやテーブルなどが置かれていて

それをそのまま使わせてもらえることになり

タンスやベッドもお手頃な物を揃えることができた

今日から始まる新生活

丈ちゃんの職場からもわりと近く

車で通勤ができるから全く問題はない

近くには幼稚園や保育園

小学校や中学校、高校もあって

凄く子育てに向いていると思った

必要な物を揃えるため丈ちゃんの車でホームセンターへ

ショッピングモールにも立ち寄り

これからの生活に最低限必要なものを購入した

この日は二人とも疲れてしまって

夕飯をどうしようか考えていた時

インターホンが鳴り響く

扉を開けるとそこにいたのはお隣の奥様の琴音さんだった

琴音さんから風呂敷に包まれたあるものを手渡された

そっと風呂敷を開くと

中には肉じゃがと野菜のおかずが二品も入っている

嬉しくて涙が出そうになり

素直な気持ちを伝えたら

琴音さんは優しく微笑んでくれた

根岸さんや琴音さんとならきっと

ご近所トラブルもなく安心して生活ができる

明日夢の言っていた通り

とても優しくて素敵な人達だと思った

琴音さんを見送った後

直ぐ居間に戻ってお皿を並べた

まだ越してきたばかりなのに

ここまでしてもらえるなんて思ってもみなかった

本当に嬉しくてたまらない

正直この新生活には不安もあった

ずっと実家にいて一人暮らしの経験もなかったし

新しい土地でうまくやっていけるか？とずっと思っていた

でも心優しい根岸さん夫妻や裕太さん達のお陰で

そんな不安も薄れていくような気がした

このままずっと幸せに暮らしたい

明日夢が生まれてからもずっと……

でも……

不意に明日夢の言葉が浮かぶ

今こんなに幸せなのに

事故に遭うなんて信じられない

でもそれは現実にこれから起こる

だから明日夢は私に会いに来た

丈ちゃんは何も知らない

話すべきなのか

そもそも話してもいいことなのかもわからなくて

凄くモヤモヤした気持ちになっていった