テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
森は、いつも通り静かだった
風の音も鳥の気配も
全部当たり前にそこにある
変わらない景色
変わらない空気
その中をただ歩いてる
理由なんてない いつもそうしているから
それだけ
──でも
その日は少しだけ違った
微かな音
何かが転がる音
鈍い衝撃
足を止め目線を向ける
斜面の下 木の根元に
白い影
白いものが目に入る
シン
近づき見下ろす
長い髪が地面に広がっている
シン
不自然なくらい白い
その中で一際目立つ赤
怪我なのかもしれない
ただそれよりも
静かに眠ったような表情に目が止まる
呼吸は、ある……
生きてる…
それを確認して
何故か…安心した
理由は、分からない
ただそう感じた
しゃがみこみ
手を伸ばす
触る前に
少しだけ迷ってしまう
壊れそうだと思った
でもそっと触れる
冷たい
でもちゃんと温度があった
シン
その瞬間
不思議な感覚が走る
あぁ…
言葉にならない理解
だがはっきりした確信
この存在は
どこか欠けている
何かが足りないんだ
そのままでもいいと感じた
いや
そのままがいいと
自然に腕を差し込み持ち上げる
驚くほど軽い
抵抗は、無い
当たり前のように腕の中に
少女の顔を見る
やっぱり静かだ
壊れているようにも
眠っているようにも見える
見つけた
そう思った
探していた訳じゃない
ただずっと待っていた気がした
理由は、分からない
それでも納得している自分がいた
シン
シン
シンは、立ち上がり
来た道を戻る
これは、きっと
理由になる
自分がここにいるための
生きているための
全てを肯定できる
何かに
そして
その確信に疑いは、なかった
シン
シン
その声は、優しくて
それと同時に
逃げ場のない檻のようでもあった
ゆっくりと、瞼が開く
視界に入るのは、一度見た天井
ユイ
シン
シン
ユイ
シン
指先が震える
思い出していく
逃げたのに戻ってきてしまったこと
捕まった訳じゃない自分から選んだこと
そしてあの森でしてしまったこと
指先を口に触れる
何か残ってる気がした
でもすぐに何かで上書きされたような
ユイ
シン
ユイ
シン
ユイ
シン
ユイ
忘れた訳じゃない
優しくしてくれた彼を食べている現実を
罪悪感
嫌悪感
それは、ずっとユイの中で
渦巻いている
否定したい
消えてしまいたい
そんな気持ちが
シン
シン
シン
シン
ユイ
シン
シン
ユイ
この人は、全てを受け入れてくれる
なぜ?
シン
ユイ
シン
虚木(ウツロギ)