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魔法使いは何を唱う?

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魔法使いは何を唱う?

19 - かつての光

♥

150

2023年03月08日

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〜彼方 side〜

数日前

まふまふの家のリビングから、 魔法空間へと行く

そのままの足で、 魔法界の中心部へ行った

ノア

おや、カナタ?

建物へ入って少し進むと、 偶然ノアさんに会った

彼方

ノアさん、ちょっといいですか

ノア

……ちょっと待っていてくれるかい? すぐに仕事を片付けてくるよ。いつもの部屋で待っていてくれ

彼方

分かりました

俺の表情で察したのか、真剣な顔で そう言って、踵を返して奥へ 進んでいったノアさん

いつもの部屋……よくお茶をする 応接室で待っていると、ノアさんの 部下の人がお茶を持ってきてくれた

彼方

……

ずず、と一口飲んで、 一度頭の中を整理する

天月の正体について

多分……いや、確定であいつは 闇使いだと思う

眼色と、魔法に混じった 黒い物がその証拠

……俺だって最初は、見間違いじゃ ないかと思ったし、友達を 疑いたくなんてなかった

だけど、闇生物が現れた公園に あいつがいたことと、俺達3人で いる時、まふまふの家の前に 闇生物が現れたこと

後者は特に、ただの偶然とは 思えなかった

彼方

(もし天月が、俺らと同じ普通の使いだったら……)

公園にいた時、あいつのあの 性格なら、その日の時点でこちらに 話しかけてきたと思う

あんな風に、隠れるように 逃げることもしなかった

俺らが魔法を使ってるのは見てた だろうし、わざわざ数日後に、あんな 回りくどい言い方をする意味もないし

ここまでの話は、 既にノアさんに話している

ただ天月は、まふまふにとって 親友でありライバル。さらに使いの 仲間にもなった

そんな人が闇使い……敵だって 知ったら、心の負担はきっと重いし、 2年前みたいになりかねない

だから、まふまふには話さない ようにと、ノアさんには口封じを させてもらってる

ガチャッ

部屋のドアが開いて、 ノアさんが入ってきた

ノア

お待たせ、カナタ。それで用件は……“彼”のことだね?

彼方

はい

さっき天月が話していた、 あの耳飾りについて

彼方

あいつはいつも、赤い耳飾りをつけてるんです。それが……

耳飾りの効果について、 天月から聞いたことを話す

ノア

……なるほど。そういう魔法具の存在は知っているけど、彼に魔力を与えているのは私ではないよ。

ノア

第一、会ったこともないからね

彼方

やっぱり……

ノアさんは天月と会ったことがない

だから、あいつの話と矛盾してたんだ

ノア

……でも、赤い耳飾りか……

何かが引っかかったらしく、手を 顎に当てて、考え込み始めたノアさん

ノア

カナタ。その耳飾りに、鈴はついている?

鈴……?

たしかに、あいつからはよく 鈴の音が鳴っている

でも、なんで会ったことがない ノアさんが知ってるんだ?

彼方

はい。何か心当たりがあるんですか?

ノア

もしかしたら、の話だけどね……。

ノア

……その魔力の供給元が、分かるかもしれない

天月の魔力の、本当の供給元……?

ノア

確信は持てないけれどね。カナタ、ついてきてくれるかな

彼方

はい

ノアさんに連れてられて 来たのは、資料室

ノア

ここには、魔法界の歴史書や、現世使いについてなど、魔法に関してのさまざまな書物が保管されているんだ

彼方

魔法の……

ちょっとした図書館並みに広い 部屋の中を進んで、とある棚の前で ノアさんが止まる

ノア

ここにあるのは、属性ごとに年月の順でまとめられた、現世使いの名簿。カナタやマフユの名前も載っているよ

そう言いながら、棚から一冊の本を 取り出して、俺に渡してきた

表紙には、 『現世魔法使い名簿・光属性』 と、魔法界の言語で書かれている

ノア

それは光属性の現世使い名簿。どこかに彼の名前が載っているはずだ。

ノア

彼から、いつ使いになったのかは聞いているかい?

彼方

はい

前に、3年前に使いになったって 言っていたのを聞いた

ノア

じゃあ、普通ならそのページに名前が載っているはずだよ

彼方

(普通なら……?)

言い方が引っかかりつつも、 ノアさんの言う通りに、本を開いて 目当てのページまでめくっていく

今は2021年だから……あった。 2018年はこのページから……

一番上から、天月の本名である “天宮翔太”の字を探す

彼方

(天宮、天宮…………は、ない……?)

色んな国の言語が入り混じる中、 どれだけ探しても、該当するはずの ページに名前が見つからない

1年のうちで現世使いになる人の数は そこまで多くないし、属性ごとに 区分されてるなら、尚更見つからない のはおかしいのに……

ノア

……やはりいないかい?

彼方

え?

ノア

ちょっと貸してくれるかな

ノアさんに本を渡すと、さらに 昔のページへとめくり始めた

彼方

(……そういえば俺、天月の本名、ノアさんに教えたか?)

ノア

……あった。これで合ってるかい?

とあるページを開いたまま、 再び本を渡された

彼方

現世1871年……

今から、150年前も前に 該当するページを見せられる

彼方

…………は……?

そこにあったのは、 “天宮翔太”の4文字

ノア

やっぱり、2人が言っていたのは、彼の……天宮翔太のことだったんだね

彼方

ど、どういうことですか……?

混乱したまま、ノアさんに聞く

ノア

150年前は、私の父がここを統治するよりも前、私の祖父……グレン・オルコットが治めていた時代。

ノア

現世1871年は……たしか、メイジ時代にあたるかな。

ノア

翔太がつけているという耳飾りには、彼が魔力を分け与えていたんだ

グレン・オルコット……アデルさん よりも前の、魔法界の統治者……

じゃあ、明治時代についてあいつが 妙に詳しかったのは、学校とかで 学んだんじゃなくて、実際に自分の 目で見てきたからなのか?

でも、それじゃあおかしい

150年も前に使いになったなら、 何で天月はこの時代に生きてるんだ?

たしかに、現世使いは普通の人とは 違って魔力があるから、それが 生命力になって長生きする人は多い

だけどそれは、魔力量が多い 上位使いでも、精々十数年程度

150年なんて桁違いすぎるし、人に 分けてもらわなきゃいけないほど 魔力が少ないあいつが、なんで……?

ノア

……これは全て、昔祖父から聞いた話だけれど……聞いてくれるかな

さっきの応接室に戻って、 向かい合ってソファに座る

ノア

彼は、元は誰よりも才能のある魔法使いだった。

ノア

上位使いに相応しい逸材だったそうだよ。……ただ、一つだけ欠点があった

彼方

魔力……ですか?

ノア

あぁ。全くと言っていいほど魔力がなかった。魔法空間に来れたことすら不思議なほどだったらしい

それなのに、才能だけはあった……?

普通、魔力と才能は、個人差は あっても比例するものだし、流石に 矛盾しすぎている気がする

ノア

魔力と才能の不釣り合いで上手く戦えず悩んでいる彼を見て、祖父はとある物を与えた。例の赤い耳飾りだね。

ノア

魔力の器の代わりに、祖父が自ら魔力を込めて作った物で、定期的に補充もしていたらしい

耳飾りについての話は、本人からも 似たような話を聞いた

ノア

鈴の付いた赤い耳飾り。これは昔、とある家に生まれてきた子に、オルコットが贈るはずだったものでね。

ノア

だけど、色々あってその子供が失踪してしまったんだ

彼方

失踪……?

ノア

それで耳飾りは、片方はその子の母親に、もう片方はオルコットが預かることになった。それが、今も彼がつけているものだよ

何か、これはこれで 気にかかる話だな……

ノア

この話は置いておくとして。耳飾りを受け取った彼は、瞬く間に強くなって、魔法界の使いをも凌ぐ、史上最強の使いになった。

ノア

分かりやすく言うと……そうだね。現在の現世使いで最強とされるカナタが、属性相性関係無く、為す術なく瞬殺されるほど。

ノア

例え魔法界最強の力を持ってしても、彼には歯が立たないんじゃないかな

彼方

っ……!?

史上最強……魔法界使いでさえ 歯が立たないって、相当だぞ……?

ノア

魔力を得たことで、持ち前の才能をさらに開花させたんだろうね。

ノア

けど、同じ属性とはいえ、使っているのは人の魔力。さらに住む世界の違う者の魔力を制御するのは、彼にも難しいことのはずだった

制御が難しい……たしかにそうだ

今の俺にだって、同じ世界に 住むまふまふの魔力でも、 制御できるか分からない

けど……

彼方

はず……だった?

ノア

そう。……彼はほとんど苦戦することなく、たった数日で、いとも容易く制御できるようになったらしい

彼方

なっ……

才能があるなら、魔力の制御を 繊細にできるのは、凄いことでは あっても、おかしいことではない

同じ世界の住人同士なら、 ギリギリ成り立つと思う

でも、あくまで天月は現世の人間で、 グレンさんは魔法界の人だ

そこまでの才能が あったってことなのか……?

ノア

そして数年後。この魔法界で、最初の闇使い侵入事件が発生。同時に、当時の闇のトップも現れたんだ

100年以上前にも、 2年前と同じような事件が……

ノア

トップ討伐として駆り出されたのは、もちろん彼。相手に遅れを取ることなく、善戦だったらしい。

ノア

そして、無事倒すこともできた

彼方

それじゃあ、闇使い達は……

トップが倒されたなら、その時の 事件は、無事収束したのか?

ノア

あぁ。トップがいなくなることで、退いていくと思っていたらしいよ。……けれど、それは全くの見当違いだった。

ノア

つい最近の事件では、トップすら出現しなかっただろう? 彼らの目的が、未だにずっと分かっていないんだ

彼方

目的……

2年前は、魔法界のトップ…… ノアさんを狙っていたんだと 思ったけど、それは違う……?

それより、最初の事件で天月が 闇のトップを討っていたなら、 なんで討った本人が闇使いに……

ノア

トップが倒された直後、突然闇使いの標的が、一斉に翔太に向いたんだ。

ノア

史上最強といえど、強敵を倒した直後に多くの相手をするのは、辛かっただろうね。

ノア

……けど嫌なことに、闇使い達はそれが分かった上で戦っていた。

ノア

連戦が続いて疲弊していた他の使い達に、そこへ向かえる力はもう残っていない。結果、彼一人で大勢を相手することになる

彼方

っ……!

ふと、2年前に見た光景を思い出す

もし、あの時いた闇使い達が、 一斉に自分の方へ来たら……

彼方

(っ……考えただけでも、ゾッとする……)

ノア

ただ、闇使い達の狙いは、トップの仇討ち……彼を倒すことではなかった

彼方

仇討ちじゃない……?

じゃあ、闇使い達は 何の為にあいつを……

ノア

……これは、祖父の憶測だけどね。

ノア

自分達が最強と思っていたトップを破ったということは、彼はその上を行く存在。

ノア

その力を敵にすると、自分達に未来がないことは誰にでも分かる

彼方

まさか……

闇使い達の狙いは、 天月を倒すことじゃなくて……

ノア

そう。……闇使い達は、彼を味方につけようとしたんだと思うよ

自分達が敵わない相手なら、 敵にしたくないと思うのは 普通かもしれない

それに闇使いの、闇で心を飲み込む 力なら、たとえ相手が最強だと しても、不可能じゃないんだ

彼方

(でも、だからって、そんなのっ……)

ノア

最初はもちろん、彼も必死に抗ったそうだよ。耳飾りを渡された祖父の前だから、尚更だろうね。

ノア

……闇堕ちなんて、きっと彼が一番望んでいなかった

彼方

っ……

聞いているだけでも辛いのに、 それを実際に体験してきた天月は、 一体どれだけの思いをしたんだろう

そう考えると、余計胸が痛む

ノア

けど、とうとう彼に限界が訪れたんだ。

ノア

体力魔力共に削られ、闇の力も受けている。精神的にも限界だった彼は、その力で心を侵食されて──

彼方

──……そしてお前は、新しい闇のトップになった

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コメント

4

ユーザー

すげぇこんな事言ったらあれやけど社会の授業してるみたいw あまちゃんの耳飾りにそんな力が… atr…トップは怖いと思うけどあまちゃんを助けるためだ!頑張って!!

ユーザー

待って…めっちゃ読んでて 悲しくなったし苦しくなった…😭 あまちゃん…そんなことがあったんだ… 相当…苦しかっただろうな… 一斉に…ってそんなの酷すぎる… 必死に抗ったんだろうな… でも体力も魔力も削れて… 闇のトップになんて なりたくなかっただろうに… そらまふ!お願い!何とかして あまちゃんを救ってあげて…!! こんなの…悲しすぎるよおおお😭 毎度最高です! 続き楽しみにしています!

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