みな
蒼也
みな
蒼也
みな
みな
蒼也
蒼也
蒼也
みな
蒼也
突然のことだった 朝起きると目の前に立っている、赤いワンピースの女性。 彼女が誰なのかは知っている 彼女の名前は みな、だ しかし、こんなこと・・
バチンッ
蒼也
みな
蒼也
みな
蒼也
みな
みなは小首を傾げて疑問符を浮かべた 彼女自身はなんの違和感もないらしい
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
蒼也
バイト先にて 接客をしながら、ずっと考え事をしている
みなのことについてだ 俺は少し前から、読書を始めた 心理学や自己啓発、実用本などを読み漁るなか、とある本にて推奨された、思考テクニックがあったのだ。
自分以外の存在を自分の中につくりそのキャラクターと議論することで、より教養を深める、というものだった
その時に、創ったのが みな だった 最初は、あらゆる疑問を議論するだけだったのだけれど、最近は雑談もするようになり、楽しいという気持ちが強くなった。 そんな妄想の産物である彼女がなぜ・・
ナカノ
蒼也
考え事の中、気づかずに客とぶつかる 女子高生がよろめき、激しい音ともにコーラが床に散乱していた、あわててナカノが掃除用具を持ち込んで、手早く掃除を済ませた 女子高生はこちらを睨むなり、何も言わずに、ドリンクを入れ直し、友人グループの席に戻った 口々に女子たちが、大丈夫ー?などとにやけながら話し込んでいた その後も一日中、こんな調子でナカノにも店長にも散々、文句をいわれた
しかし、自分を責めることもなく それどころか、えらく晴れやかな気持ちでいる。 喜んでいたのだ 彼女の登場に、大きな変化を感じる 彼女の存在がずっと停滞していた時間を動かしてくれるような気がした
蒼也
蒼也
意気揚々と帰ってきたが 部屋を見渡しても誰もいなかった
蒼也
みな
蒼也
みな
みなはそう言いながら、腹を抱えて笑っていた 驚きに体を跳ねさせながらも、口元が緩む
彼女の容姿は、南夢乃という人気女優をモデルにしている 知らない女優だったが、ふとニュースで見かけて、頭の中の会話相手として登場させた、赤いワンピースは舞台挨拶時の格好だったと思う。
みな
蒼也
みな
背の低いミナは覗き込むようにして話しかけてくる。
蒼也
みな
みな
蒼也
みな
みな
蒼也
みな
蒼也
蒼也
みな
蒼也
みな
みな
蒼也
みな
蒼也
みな
蒼也
こうして、突然、始まったミナとの雑談は数時間続いた。 俺は取り留めなく、早口になって、話を続ける それでもミナは程よい相槌を繰り返しながらただただ聴いてくれた 嬉しかった
蒼也
みな
蒼也
蒼也
みな
そうして電気を消して、ベット備え付けのミニライトを点けた。 ミナは無防備にも俺のベットに寝転んでいた。 妄想で作り出した相手に、"そういうこと"はしないようにと思っている。
蒼也
そうして布団に潜った、せめてミナに背を向ける形で。 小さな寝息が後ろから聞こえてくる
なんだか気持ちが落ち着かないようだった 先ほどの会話の昂りが過ぎ去って、途端に不安な気持ちが湧いてきた ちょっと喋りすぎたかなと思った よくわからない
蒼也
妙な気持ちを抑えて、数時間経ったころ、 少しずつ、意識は薄れていった
蒼也
ヤマウチ店長
遅刻した 昨日と同じく、みなが起こしてくれたのだが、完全に寝不足だった 意識がぼんやりとして、眠たい
ヤマウチ店長
蒼也
研修、ホール、ピーク、事務所 バラバラの単語を一つの意味として繋げることもままならない
事務所に入ると、ホールの制服に着替えた20歳前半ぐらいの女性が一人立っていた 名札には吉川と書いてある
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
蒼也
忙しなく着替えて、吉川さんを連れてホールに出た、まだ店内は混雑こそしてないが、少しずつ、お客さんが増えている
ヤマウチ店長
ヤマウチ店長
蒼也
ヤマウチ店長
ヤマウチ店長
その一言で、自分の胸元を見る 名札がついていなかった
蒼也
蒼也
ヤマウチ店長
この日は昨日以上に散々で 休憩時に眠っても、疲れは取れず 昨日のこともあって、店長の当たりが強かった 研修の吉川さんも僕のミスに始終振り回されていて。それら全てが、自分を惨めな思いで満たしていく。
蒼也
全てはちょっとしたことだった、少し寝れなかっただけ、それだけなのに、1日の全てが崩れた、仕事終わりの休憩所でうなだれていると、赤いワンピースを思い浮かべた
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
蒼也
蒼也
ヨシカワ
早口になって、うろうろしなが、話す この日1日の一つ一つのことを思い返しては心を惨めな気持ちで満たしていく
気分は激しく落ち込んでいく
疲れた
蒼也
部屋にみなの姿はなかった、でも驚きもなければ、落胆もしなかった いないだろう、と思っていた、俺は彼女の存在を望んでいないから 彼女の存在を否定しているから 彼女の存在に怒っているから 必然的に彼女は現れないのだ なぜなら彼女は俺の・・
蒼也
蒼也
蒼也
力の抜けた体をベットに投げて、仰向けになった、そうだ、この気持ちだった ずっとずっと逃げてきたこの気持ち どこにも居場所がなくて、誰とも繋がらなくて、自分を傷つけたくなる、この気持ち 少し、気分がいいと思えば、忘れた頃にやってくるのだ。 全て昔から変わってない
蒼也
蒼也
みな
みなは、気づけば部屋の入り口付近で、立っていた、浮かない表情で、細くて白いしなやかな指と指を絡めてもじもじとしている 俺は上体を起こして、ベットに座る形になった
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
みなはただ、黙ってこちらを見ていた、次の言葉を永遠に待つように
蒼也
蒼也
蒼也
蒼也
脈絡もなく ただ頭に浮かぶ情景をみなに吐き捨てた
蒼也
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
そう言うとみなの姿は消えていた、そう忘れちゃいけない 俺はずっと1人だ 1人で喋って、俯いて 虚しくなって
救われることなんてない 俺はあのバカ親父と同じく、お母さんを追い詰めたバカ息子なんだから
蒼也
蒼也
蒼也
ムシャクシャして、手元にある枕やら、目覚まし時計やら、投げつけたくなったが そんなことをする気概もすぐにうしなった いや、自分にはそんな事をする資格もないと、そう思った 全身を駆けずり回る嫌悪感を抱えながら、寝ることもできず、いつまでも続く夜から逃げるように、ただ目を瞑り続けていた
蒼也
目を覚ました、いつの間にか寝ていたらしい、やけに長い夢を見たような気がする
昨日の憂鬱を引きずったままの重たい体を起こした
そして、部屋を見渡すと、地面に座り込んでいる後ろ姿が見えた
蒼也
みな
みな
みな
蒼也
蒼也
返事をするとみなは立ち上がってこっちに向き直った。 とても悲しそうな表情をしていた
みな
みな
蒼也
蒼也
みな
みな
蒼也
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
蒼也
みな
みな
みな
みな
蒼也
みな
そういって彼女は俺の手に手を重ねた 確かに重なっているのだが、一切、感触のようなものはなかった その、小さな手を、すぐに跳ね除けた
蒼也
蒼也
みな
みな
蒼也
みなは腕を前に伸ばすと、倒れかかるようにして、両手を俺の首の後ろに回した そうして、いつの間にか、抱きつくような形になっていた。 何の感触もなかった
みな
蒼也
みな
みな
蒼也
蒼也
蒼也
蒼也
みな
みな
みな
みな
みな
蒼也
声が耳元で聞こえ、すこしこそばゆい気がした
みな
みな
蒼也
みな
みな
みな
みなはより強く、深く、腕に力を込めて、抱きしめた 必死に自分を"証明"するように 俺の体はみなの抱擁に動かされることはない 触れられることはない でも、何故だか、不思議と あったかい気がした
蒼也
蒼也
蒼也
その日の夜は穏やかで優しくて温かかったのに 全てを壊す荒々しさがあった その不思議な夜に呑まれながら、俺は心臓の鼓動を感じていた 俺はずっと、ずっと 現実世界とは違う、心の世界で生きてきた 心で感じることだけが、俺の存在全てで それはあまりにも脆くて、蛛の糸よりも細い頼りないものだった みなはその脆い脆い心を担ってくれる存在なんだと思った。 彼女は俺以上に脆い 脆くて儚い でも、彼女がそれを担ってくれている以上 俺は俺自身を生きようと思った 俺を命懸けで守った母親のために生きるように 俺は彼女の存在を証明するために 救われなければいけない 幸せにならなければいけない
あの日以降、俺は連絡も入れずバイトに行く事をやめた そうして2週間が立つ。 複雑な気持ちはあるが驚くほど力が抜けた きっと、こんな男のことは1ヶ月もすれば忘れられている その程度の場所だ 俺の居場所はあの場所にはなかった
みな
蒼也
蒼也
みな
みな
蒼也
みな
蒼也
みな
みな
みな
蒼也
蒼也
みな
みな
蒼也
蒼也
はっきりとは否めないところだった あの日、少なくとも俺は、俺の存在を殺そうとした 心を殺し、存在を殺し みなに救われてなければ、俺はこの肉体を殺していてもおかしくはなかった
みな
蒼也
みな
蒼也
蒼也
みな
あれから、2週間以上が過ぎている 俺の心境の変化と、バイト先のこと 大きく変わったことはあるが 変化はみなの中にも生まれた
みなは俺のことをいつのまにか呼び捨てで呼ぶようになり 当たり前な質問も毎日のようにしてくる、行動の自由さも目立ってきて なんというか "実物の人間"であるかのように見えた
この前は突然「散歩に行ってくる」と言って外に出た。 帰ってくるなり、どこに行ったのかと聞けば「公園で鳩に餌をあげてるおじさんを見てた」と答えた
蒼也
蒼也
ピンポーン
蒼也
みな
蒼也
発言に容赦がない
うちのインターホンは今まで、ほとんどなったことがない うちにインターホンがついてたことすら、忘れてたぐらいだ 部屋を出て、玄関先へ向かった
ガチャ
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ただ動揺した ここ2週間は部屋に閉じこもりきりで、外の世界の一切をシャットアウトしていた 突然、その殻をこじ開けて、外の空気が入り込んできたのだ その空気は、今の俺にとって汚染されているも同然だった しかもなんで、彼女が・・
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
みな
蒼也
ヨシカワ
いきなり、後ろから話しかけてきたみなに、思わず振り返ってしまう 吉川さんは怪訝そうな顔を浮かべて、俺の後ろを覗き込むようにした 彼女にみなの姿が見えるはずはない
ヨシカワ
蒼也
みな
みなは、耳元で囁くように言った 今すぐ、追い返したいところだったが とりあえず、みなの言うことに従うことにした
蒼也
蒼也
蒼也
ヨシカワ
蒼也
蒼也
吉川さんは、すこし考えた後に 「はい・・では・・」と答え家に入った みなの意図はもはや分からないが、俺も彼女に聞きたいことは色々とあった
彼女を家にあげて、話したことはそう多くはない まずは、現在のバイトの状態について聞き出した 最初の3日間あたりは、えらく慌てていたけれど、すぐにシフトも組み直して、安定しているらしかった 複雑な気持ちが、すこし癒された
そして、もうひとつ気になったことは 彼女がわざわざ、ここまでやってきた理由だった 尋ねると彼女は、元カレの話を始めた
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
蒼也
蒼也
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
その辺りで吉川さんは少し涙ぐんでるように見えた。 あまり、ここで感傷的になられても、俺にはそれを受け止める力はない ここらで帰ってもらうことにした
ヨシカワ
ヨシカワ
ヨシカワ
蒼也
玄関先 みなは後ろで黙って待機している
みな
みなはずっとこちらを見ていた なんとなく、彼女の思惑は分かってきた
蒼也
ヨシカワ
蒼也
蒼也
蒼也
みなの言わんとしてることは 「友達を作ろう」ということだ 悪くないと思った どちらかというと吉川さんは苦手なタイプだったのだが 先程の少し涙ぐんでいた時に彼女に不思議と惹かれる瞬間があった それは恋心でもなく、親しみでもない、得体の知れぬ感覚だった。
ヨシカワ
しかし吉川さんは、思い悩むようにして、俯いた。
蒼也
ヨシカワ
そういって吉川さんは、スマホを取り出して、しばらく操作した後、画面をこちらに向けた、画面にはトークアプリのRINEのQRコードだ
蒼也
そういえば、そんなものあったな、と思いながら、あまり開いたことのない、RINEを開いた
蒼也
蒼也
ヨシカワ
蒼也
ヨシカワ
こうして、バイトや学校以外で初めて "トモダチ"ができた 吉川さんは、帰って行き、部屋に戻るとみなはえらく、満足そうだった
みな
みなはそう言って祝福した
蒼也
蒼也
みな
みなはそう言ってニッっと笑った どうなるもこうなるも・・
ピンッー
蒼也
みな
蒼也
蒼也
蒼也
みな
蒼也
蒼也
みな
みな
みな
みな
蒼也
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恐れ入ります、連載にするつもりだったのですが、単発になってしまったので、続きはプロフィールなどからお願いします
続き待ってます