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現在時刻、十一時七分。
家に着いたぼくはまず、今立っている仮説をまとめることにした。
空腹を満たすため冷蔵庫を物色していたところ、キッチンにいた兄に
兄
と言われてしまったためだ。
ぼく
二階の自室に入り、戸を完全に閉め、適当に選んだA4ノートにペンを走らす。
ぼく
ぼくが第三者なことに変わりはないようだった
ぼく
書き終えたところで失笑する。
ぼく
分かっている限り、清掃員は三人もいるんだ。その全員が二ヶ月もの間、一度もオムツ交換台を下げてないとは言い難い。
現場が親子連れも遊ぶ公園の公衆トイレだということも、仮説①を否定していた。
ぼく
次のページをめくり、新しく書き入れる
なんだかご都合主義的なタイミングだけど、こっちの方がなまじ現実味がある。
というか現実なのだ。
AやBをはじめとした仮説はぼくの勝手な推測だが、あの状況だけは現実と言っていい。
ぼく
何故今さらそんな重大ヒントを! と思ったであろうが、しかしこれは多分、本件には関係のないことだ
そもそも"近くにいたから"くらいで犯人にされちゃあ、その若男もたまったもんじゃないだろう。
なんなら現状としては『実はぼく自身が真犯人だった!!』という一言だけで丸く解決できる程度の問題なのだ。
───しかしご存知、ぼくは犯人ではない
架空の人物であるAとBは確かに実在している。
ぼくは所詮第三者で、言わば推理小説の発見者役だ。
発見者役は、基本的にそのためだけに配役される役割で、それ以上のことを求めるのは筋違いというものだろう。
ぼく
閑話休題
ぼくはもう一度、ノートを見返す。
ページを何度もめくり、確認する。
ぱらり
ぱらり
ぱらり
ぱらり
ぱら───
兄
ぼく
振り替えると、戸の脇に、エプロン姿の兄が立っていた。
兄
ぼく
兄
そのままの姿勢で、後ろ歩きに兄は部屋を出ていった。
ドアを閉めていかなかったのが、若干ムカついた。
ぼく
椅子を立ち、大きく伸びた後、ぼくは戸に向かった
途端、ゆらあり。と、視界が歪む
次の瞬間には、ぼくは戸に体重を掛けていた
開きかけの戸が、徐々に弧を描き、すぐに開ききる。 ぼくはその場で倒れた
起立性低血圧 立ちくらみ───
───否、これはもっと酷い………
ぼく
止まらない冷や汗
動揺が思考を拒む
白黒反転する視界
働かない視力の中、ぼくが最後に見たものは───
十三時七分を指した壁掛け時計だった。
カコン
秒針が鳴る。
第三話 円環 / ピース