テラーノベル
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朝。
すちがまだ寝てる。
規則正しい寝息。
(……やっと、ちゃんと寝れてる)
みことは、少し離れた場所から見てる。
触れたいけど触れない。
起こしたくないから。
でも、思う。
(あんな顔、学校じゃ絶対しない)
安心してる時の顔。
力が抜けてる。
それを見るたびに、胸がぎゅっとする。
うれしいのに、苦しい。
(俺がいなかったら、どうなってたんだろ)
考えたくない想像がよぎる。
あのとき、倒れた姿。
細い腕。
無理して笑う顔。
みことは拳をぎゅっと握る。
(間に合っただけだ)
救えた、じゃない。
ただ、まだここにいるだけ。
それでも。
(もう、戻したくない)
前の場所に。
前の顔に。
前の目に。
怖がって、遠慮して、消えそうだったあの感じに。
すちが寝返りをうつ。
びくっとして、みことは視線を逸らす。
起きたらどうしよう、と少し焦る。
でも起きない。
小さくつぶやく。
「……置いてかないから」
聞こえないくらいの声。
(依存とか、そういうのじゃなくて)
(義務でもなくて)
理由を探して、やめる。
そんなのいらない。
ただ。
一緒にいたい。
それだけだと、やっと認める。
でも同時に思う。
(俺が支えなきゃ、じゃない)
前は、そう思ってた。
守らなきゃ
助けなきゃ
背負わなきゃ
違うと気づく。
あいつは弱いだけじゃない。
何回も立ってきた。
折れそうでも、ゼロにはならなかった。
だから。
「隣にいる」
それが今の答え。
助ける人じゃなくて。
一緒にいる人。
すちが小さく眉を動かす。
夢でも見てるのかもしれない。
みことは、少し迷ってから。
布団の上から、そっと声だけ落とす。
「……ここにいるよ」
触れない。
でも、届く距離で。
そのとき。
すちの呼吸が少し深くなった気がした。
気のせいかもしれない。
でも、みことは少しだけ笑う。
(これが“必要”なら)
重くない形でいい。
縛らない形でいい。
「いないとダメ」じゃなくて
「いると落ち着く」
それくらいの存在でいい。
それが一番、長く続くって。
なんとなくわかってる。
窓の外が明るくなっていく。
今日も日常が来る。
問題も消えない。
過去も消えない。
でも。
隣にいる選択だけは、今日も変えない。
みことは静かにそう決めた。
コメント
2件
…((かんどうとこうふんでぎゃくにしこうていしちゅう